新型車比較・ライバル車対決
更新日:2019.09.20 / 掲載日:2019.09.20
MAZDA マツダ3ファストバック ガチンコライバルはこれだ!

走りとプレミアム感の2つを武器に華々しく登場したマツダ3。プレミアムコンパクトを検討しているユーザーにとっては見逃せない存在になるのは間違いなさそうだ。ここではライバルモデルについて考察してみたい。
マツダ3 ファストバック 価格帯:218万1000~362万1400円
マツダコネクト
先代では泣き所の一つであったマツダコネクトも、新型の登場に合わせて次世代型にアップデート。コマンダー操作などの入力インターフェイスが改善されたほか、ナビのルート案内もきめ細やかに向上している。
インテリア
ヒューマン・マシン・インターフェイスの考え方が盛り込まれたほか、シートやパネル/トリムの素材感も向上。特に本革仕様のLパッケージは上級プレミアムに引けをとらない上質空間を堪能できる。
川島 茂夫「プレミアムキャラも マツダ3の大きな武器 上級コンパクトがライバル」
川島 茂夫「プレミアムキャラも マツダ3の大きな武器 上級コンパクトがライバル」
ズバリ、ライバルとなるのは?
MERCEDES-BENZ Aクラス価格帯:328万~399万円
TOYOTA カローラ スポーツ価格帯:210万6000~268万9200円
キャラと走りと先進機能 3つの要素が求められる
ゴージャスという意味ではなく、プレミアムらしいゆとりの面で、マツダ3ファストバックのライバルとなるのは、カローラ スポーツとメルセデスベンツAクラスの2モデルが候補になってくる。ともに若々しくカジュアルな趣を特徴とするほか、走行性能や運転支援機能でもクラスをリードするモデル。多くの新世代機能が注がれたマツダ3と同世代のモデルである。
ただし、Aクラスはエントリーグレードでも328万円。OPの先進運転支援装備を装着すると約360万円が実質的なスタートプライスとなってしまう。カローラ(1.2Lターボ)が約210万円、マツダ3(1.5LNA)が約218万円なので、価格面で直接ライバルになるともいいにくい。プレミアムコンパクトの指針となる一車と考えてもらいたい。
カローラは「スポーツ」の名を冠しているが、基本的には実用型2BOX車。ユーティリティや多様なユーザーに対応すべくウェルバランスの設計を特徴にする。スポーティなキャラが与えられていても「カローラ」であることが第一義なのである。
一方、Aクラスはクーペ的なスペシャリティ志向が強い2BOX車。キャラはマツダ3と近いのだが、Aクラスには下回りを共用するBクラスも設定されているためか、居住性も良好なことも特徴だ。ちなみにベーシックグレードでも価格は高めだが、これは贅沢装備を奢っているため。装備を揃えて比較すると、実質的な価格差は15万円くらいだ。
パワートレーン展開はカローラがターボとハイブリッド、Aクラスがターボとディーゼルターボを設定している。マツダ3は先進性でハイブリッドとぶつかるスカイアクティブXが未発売だが、それでも1.5LNAと2LNA、1.8Lディーゼルターボと、2車に比べてバリエーションは豊富だ。
山本シンヤ内外装や走りは優等生 高く評価される実力車が ライバルになるのは当然」
山本シンヤ内外装や走りは優等生 高く評価される実力車が ライバルになるのは当然」
ズバリ、ライバルとなるのは?
Volkswagen ゴルフ価格帯:253万9000~569万9000円
TOYOTA カローラ スポーツ価格帯:210万6000~268万9200円
パワートレーンは不満だが 日本車離れした良さも多い
いよいよ日本の道を走り始めた次世代マツダのトップバッターであるマツダ3。筆者はすでに北米でガソリン車、欧州でスカイアクティブX車に試乗済みだが、やはり気になるのは「日本のリアルワールドでどうか?」と「ライバルとの違いは?」だろう。
今回は国内仕様の1.8Lディーゼルターボ車に乗り、都内と首都高速を中心にチェックしてみた。
すでに何度も見ているが、相変わらずファストバックのエクステリアはハッとさせられる。インテリアに乗っても同様の印象で、シンプルながら質の高いデザインやスイッチの触感を含め、プレミアムカテゴリーの領域に入っている。これだけでマツダ3を選ぶ理由になるだろう。ただ、あまりにデザイン優先なので手狭さが気になる人もいるかもしれない。
走りは速度域や走るステージを問わず、クルマの動きと人間の感覚にズレがないこと、滑らかな挙動、違和感がない走りを目指したが、フットワーク系はいくつか気になる部分はあるものの、マツダが目指す「理想の走り」に対してかなり忠実に再現されている。しかし、パワートレーン系は豊富にラインナップされるが、どれもフットワークとのバランスを考えると、エンジンもトランスミッションも力不足だ。特にディーゼルターボは巡航時はまだしも、ストップ&ゴーの多い街中では応答性や実用トルク、ターボラグが気になる。シャシー性能は優れているだけに、もう少し頑張って欲しいと感じる。
このようにいくつか気になる部分はあるものの、全体的には日本車離れした動的クオリティを備えている。そんなマツダ3のライバルになりうるのは、キャビン周りや動的なクオリティではVWゴルフ、安心感と軽快さを軸としたバランスの良いハンドリングを重視するならばカローラ スポーツが近い存在といえるだろう。
VSカローラ スポーツ

1.2L直4ターボ(116PS/18.9kg・m)と1.8L直4ハイブリッド(98PS/14.5kg・m【エンジン】53Kw/163N・m【モーター】)を設定。スポーティなターボ、エコプレミアムなハイブリッドという棲み分けになる。
安全&運転支援のトヨタセーフティセンスは最新型が標準装備。やや制御に癖を感じるマツダ3のシステムに比べると、幅広い状況下で便利さと効果を体感できる
基本的にシンプルな仕立てだが、後席軽視の感も強いマツダ3とは異なり、やはりカローラは後席にも使える設計が注がれる。限られたサイズの中で十分な余裕を生み出しているのはさすがだ。
川島 茂夫
派手な演出は控えめだがその実力は極めて高い
ベーシックなシャシー仕様でも、操安性と乗り心地のバランスの良さは際立っている。サイズやデザインに制限があるにもかかわらず、後席の居住性や積載性をしっかり確保するなど、バランスの良いボディ設計もお見事。マツダ3と比較して走行系で突出しているのは運転支援機能くらいだが、走りの質感も含めて良質な実用車に仕上げているのは、いかにもカローラらしい選択だ。マツダ3とは違ったプレミアムを感じさせてくれる。
山本シンヤ
スポーティながらも走りには快適性も考慮
どちらも世界戦略車だが、カローラ スポーツはオーリスから心機一転、マツダ3は深化の道を選んだ。デザインはどちらもスポーティだが、カローラ スポーツはカジュアル風味が強く、マツダ3はプレミアム感が強い。走りはどちらも基本性能にこだわりプラットフォームを刷新。どちらも良質の走りを構築しているが、目指す志向が異なる。快適性も重視するカローラ スポーツに対して、マツダ3はやや硬派な味付けだ。
VSゴルフ

RやGTEなどのスペシャリティモデルも存在するが、ベーシックゴルフのパワートレーンは、1.2L直4ターボ(105PS/17.8kg・m)と1.4L直4ターボ(140PS/25.5kg・m)の2本立て。
上位グレードのハイラインにはスポーツシートなどの設定もあるが、スポーティさで売るモデルでない。実用的なキャビンレイアウトはお手本にふさわしい完成度を持つ。
渋滞時追従支援システムTraffic Assistを筆頭に、運転支援機能の充実ぶりもゴルフの強み。実用車らしい実践的な内容が注がれている。
山本シンヤ
目指す方向は異なれど やはり外せない存在だ
このクラスの世界的ベンチマークであるVWゴルフと、挑戦者であるマツダ3。同じCセグメントのハッチバックながら目指す方向が全く異なる。VWゴルフは「究極の実用車」に対してマツダ3は「ハッチバックのスペシャリティ」。ただ、走りの面ではどちらも上位プレミアム顔負けの動的なクオリティを備えているので、比較する価値は大いにある。特にマツダ3の走りの滑らかさは、走るステージによってはVWゴルフを超える部分を感じるほどだ。
VSAクラス

ACCの加減速やLKAの走行ライン維持など運転支援機能も違和感がない。運転感覚からもプレミアムを実感できることもAクラスの魅力だ。
1.4L直4ターボ(136PS/20.4kg・m)と2L直4ディーゼルターボ(150PS・32.6kg・m)はガソリンターボは7速、ディーゼルターボは8速のATが組み合わされる。パワートレーンはマツダ3より上位設定だ。
現行Aクラスはネット連携が強化されたこともトピックス。大型ディスプレイが配置されるセンターメーターはカラー液晶化されるなど、カジュアルな中にも先駆的な設計も与えられいる。
ナビモニターはタッチパネル式の大型タイプを採用。 Hi, Mercedes(ハイ、メルセデス)と名付けた対話式音声認識機能が標準となるなど、インフォテイメント機能の充実も見所だ。
川島 茂夫
スペシャリティのみにあらず実用性も十分な性能を持つ
サイズを比較するとかなり近い両車だが、後席に乗り込むと寸法的な余裕も圧迫感もマツダ3のほうが一回り狭く感じられる。サイドウインドウデザインとルーフラインの影響によるものだが、Aクラスはマツダ3ほど割り切った設計ではないのだ。走行性能はベンツの中でもスポーティな走行特性。またセールスポイントの一つである運転支援機能は国産車/輸入車を含めた中でも出色の出来だ。高速長距離移動が多いユーザーには見逃せない特徴だ。
乗ってわかった マツダ3は買いか? 待ちか?

川島 茂夫
中途半端と決別したマツダ3 趣味に合えば買って問題なし
アクセラはウェルバランスを意識したこともあり、マツダが目指す理想のプレミアムコンパクトとしては煮え切れない部分もあったのだろう。マツダ3はマツダが目指す理想を前面に打ち出し、中途半端感が大きく切り離されている。スタイル&プロポーションと後席居住性の関係が最も分かりやすいが、実用的な2BOX車であることよりも、割り切りがもたらす個性を優先したわけだ。当然、ユーザータイプも絞られるが、嵌ってしまえば唯一無二である。スカイアクティブXの動向が少々気になるが、燃費/動力性能のコスパでディーゼルターボを上回るかは微妙なところ。取り敢えずラインナップが揃うまでは「待ち」が無難だが、現状ラインナップも決して悪い選択ではない。
山本シンヤ
スカイアクティブXは良いが現状のベストは1.5Lガソリン車だ
マツダ3は「指名買い」ができる一台だと思っている。情熱的なデザインにビビっと来た人は、それだけで「買い」だろう。VWゴルフとガチで戦えるフットワークも脱日本車的なクオリティで、乗った瞬間から「いいクルマだね」と感じるだけの魅力がある。ただ、豊富に用意されるパワートレーンには一長一短ありなので、現時点では「これがベスト」と言い切れないのが残念な所だ。個人的にはマツダ3の目指す走りに対してはスカイアクティブXがベストエンジンだと思うが、「価格差ほどの魅力があるか?」と言われると……。ちなみにコストパフォーマンスで言えば断然1.5Lが優秀。この価格でこのクオリティのモデルは他には存在しない。