新型車比較・ライバル車対決
更新日:2019.09.05 / 掲載日:2019.09.05

最強ミニバン決定戦【Sクラス】<シエンタ vs フリード>

●文:川島茂夫

タウン&レジャーの万能選手はどっちだ!?

コンパクトで扱いやすく、タウンユースにぴったりなのがこのクラス。普段使いの万能性に着目しつつ、ライバル2車を比べてみよう。

icon TOYOTA シエンタ

●価格:177万6600~253万2600円 ●発表日(最新改良日):’15年7月9日(’18年9月11日)

扱いやすさを追求したミニマムなワゴン型

 デビューは’03年。「瞬間・楽ノリ・3列」というコピー通り、敷居の低いコンパクトファミリーミニバンとして誕生。’15年に2代目となり、’18年の改良では2列シート5人乗りの「ファンベース」を追加。FFは7人乗りだが、4WDは2列目が2人掛けの6人乗りだ。

icon HONDA フリード

●価格:188万~272万8200円 ●発表日(最新改良日):’16年9月16日(未改良)

実用的な3列目を備えたコンパクトミニバン

 「サイコーにちょうどいいHONDA!」として’08年に誕生。センタータンク+低床パッケージにステップワゴン譲りの3列目シートを備え、3列目の快適性にも配慮していた。’16年の2代目では2列シートの「フリード+」を追加。FFは6/7人、4WDは6人乗りだ。

扱いやすいサイズで3列シートを実現

 スライドドアなどミニバンの便利機能を用いてスモールクラスの多目的ワゴンとして開発されたのがシエンタである。2代目となる現行車の開発ではサードシートの居住性や積載性の改善が図られたが、成人の多人数乗車や大型レジャー用品の積載が難しいのは先代と変わっていない。もっとも、ステーションワゴン型のサードシートは「プラス2」が基本である。搭載パワートレーンは1.5LのNAとハイブリッドの2タイプ。1.5L車が基本排気量設定であり、ハイブリッド車(HV)は上級設定。HVはウィッシュの後継車と考えてもいいだろう。
 対してフリードは実質的前身モデルとなったモビリオ以来、スモール&コンパクトクラスの1BOX型として開発されている。本格1BOX車に比べると全高は低いのだが、リヤエンドまで高いルーフラインを活かし、高い座面高設定のシートにより実用的な3列シートを実現している。
 搭載パワートレーンはシエンタと同様に1.5Lのガソリン/ハイブリッドの2タイプ。ハイブリッドは電動系をパワーアシスト主体で使用するパラレル式を採用。また、ミッションはガソリン車がCVT、HVがDCTを用いる。
 パワートレーン展開を見ても分かるように両車ともに上級クラスに比べると走りの汎用性は劣る。タウンカー用途を主軸に多用途性の向上を図っているのが特徴であり、長距離レジャー主体のユーザーは注意が必要。場合によってはクラスやジャンルの変更も視野に入れておくべきだ。

【比較1】走行性能

パワー感ならシエンタHV、和み感ならフリードだ

 車重は1.4t級。フリードとフィットを1.5L車同士で比較するとフリードのほうが250kg以上重い。ちなみにトルクウエイトレシオの比較ではフィットの1.3L車と同等である。そこに4~6/7名の乗員や荷物の負担が加わるのだ。こういった事情はシエンタも同じで、動力性能の基本的な考え方は、タウンユース主体の1.3Lスモール2BOX車並み。ファミリー&レジャー用途の長距離走行には余裕がない。
 高速長距離走行を前提にすればNA仕様なら1.8Lは欲しいところ。ならば電動を加えてパワーアップを図ったHVを、となるのが心情だろう。事実、両車ともにHVは燃費向上とともに動力性能向上仕様として設定されている。
 同じ1.5Lのハイブリッドだが、加速性能ではシエンタが上回る。シエンタを1.8L級とするならフリードは1.6L級くらいの感覚だ。ただし、高速巡航時の余力感は遜色なく、ステップ変速ならではの巡航時の落ち着いたエンジン回転数はシエンタ以上にゆとりを感じさせる。
 しかし、電動モーターのパワーやアシスト特性の違いから、急加速時の瞬発力や加速の維持はシエンタが一枚上手である。また、前提とする乗車人数が少ないことを考え合わせても余裕で勝るわけだ。
 フットワークはともに低中速域の乗り心地重視型。ロール等の振られ感はフリードが大きめだが、操安性はシエンタと大差ない。ともにファミリーカーらしい味わいだが、フリードのほうがより和んだドライブが楽しめる。

icon シエンタ【勝利】

ガソリン車は109PS/13.9kg・m。HVはFFのみに設定され、お家芸のTHS-2を搭載し、74PS/11.3kg・m+モーター(61PS/17.2kg・m)。JC08燃費は15.4~28.8km/L。HVのWLTC燃費は22.8km/Lだ。

  • ●1.5L

  • ●1.5Lハイブリッド

  • ●THS-2

●寸法/車重(3列シート車)
・全長×全幅×全高(mm):4260×1695×1675【1695】 ・ホイールベース(mm):2750 ・最小回転半径(m):5.2 ・車重(kg):1320 ~ 1380【1380】 ※【 】は4WD

3列シートを収めながら非常にコンパクト。車重も1400kg未満だ。

icon フリード

ガソリン車は131PS/15.8kg・m。HVは110PS/13.7kg・m+モーター(29.5PS/16.3kg・m)。JC08燃費はガソリン車が17.6~19.0km/L、HVはFFが26.6~27.2km/L、4WDが25.2km/Lとなっている。

  • ●1.5L

  • ●1.5Lハイブリッド

  • ●i-DCD ※写真はフィットハイブリッド

●寸法/車重(3列シート車)
・全長×全幅×全高(mm):4265×1695×1710【1735】 ・ホイールベース(mm):2740 ・最小回転半径(m):5.2 ・車重(kg):1340 ~ 1430【1410~1490】 ※【 】は4WD

シエンタより全高が35mm高く、車重もやや重めの設定だ。

【比較2】室内空間

シエンタは乗用車的でフリードはより余裕がある

 フリードはフロントシート下に燃料タンクを置いた結果、セカンドシート以後の床面はリヤエンド近くまで低くフラットになっている。有効室内長でも勝っているのだが、さらに低い床面と高い座面高により効率的にレッグスペースを稼いでいる。また、サードシート格納はフリードは一般的な1BOX型と同様に側方への跳ね上げ式を用いるが、シエンタはセカンドシート下への格納で、サードシートサイズもフリードがひと回り以上大きい。
 フリードにしてもサードシートはセカンドシートを前方にセットしても必要十分程度だが、シエンタは膝前も頭上も狭く、シートサイズも不足気味。サードシート格納時の車内の雰囲気はシエンタのほうが乗用車的だが、使い勝手はフリードが勝る。

icon シエンタ

立体感を強調した曲線基調のインパネ。ステアリング外メーターとインパネシフトを採用。

フロントとセカンドシートの着座感は1BOX型ほど腰高な印象はなく、開放感も良好。サードシートはサイズは採ってあるものの、腰のないクッションで座り心地は劣る。

icon フリード【勝利】

基本レイアウトはシエンタと同様だが、こちらは水平基調のすっきりしたデザインだ。

サードシート以外はちょっと着座位置の高いワゴンといった居心地。着座姿勢も乗用車的。サードシートは寸法的な余裕がなく、開放感も含めてセカンドシートとのギャップ大。

【比較3】機能/装備

運転支援機能の充実度でフリードが優っている

 トヨタは安全機能の呼称をトヨタセーフティセンスで統一したものの、内容は車種によってまちまち。シエンタは対歩行者型の衝突回避自動制動や車線逸脱警報、踏み間違い防止機能などを装備するが、ACCとLKAの設定はない。フリードは「B」以外にACCと走行ライン制御式LKAを設定。ACCは作動速度30km/h以上の高速型だが、走行性能がタウンユース志向だとしても、高速長距離適性を高めるには十分な機能である。また、標識認識機能もシエンタには採用されない。
 最新仕様と比較するとフリードのホンダセンシングは機能と性能で劣るのだが、シエンタと比べればクラス違いの差がある。タウンユースだけならそれほどのハンデではないが、長距離用途では運転支援で大差がつく。

icon シエンタ

【ACC:×】【LKA:×】
車線逸脱警報こそあるがACC(前車追従クルーズコントロール)やLKA(車線維持アシスト)は設定されず。車両を真上から見下ろした画像のパノラミックビューモニターがオプションで用意される。

icon フリード【勝利】

【ACC:○】【LKA:○】
安全運転支援機能のホンダセンシングは、廉価グレードの「B」には設定されず、ベーシックな「G」にオプション設定(約15万円)、それ以外のグレードに標準装備となる。

まとめ

用途による選択が基本だが、支援機能の差は埋められない

 両車の選び分けの基本はサードシートの使用状況と使用頻度だ。たまに子供を乗せて近場に送る程度ならシエンタで十分。サードシートを格納しておくのが基準の使い方と換言してもいい。対してフリードはサードシートを格納していない状態が標準の使い方となる。多人数乗車のための選択だ。ただし、成人6名が乗車する場合でも余裕があるわけではないので、小児を含む多人数用途向けである。
 ただし、高速長距離走行頻度が高いと、そうした選び分けの基本から外れてしまう。走行性能ではシエンタのハイブリッド車が魅力的だが、運転支援機能の違いがその差を埋めてなお余りある。採用時は車格に対して贅沢だったホンダセンシングだが、今となっては長く使うに必須の次世代標準機能。多用途性の面からも、フリードにとってアドバンテージとなる。

おすすめグレード

  • シエンタ【G】
    ●202万680円(FF/7人)

  • フリード【ハイブリッドGホンダセンシング】
    ●249万6000円(FF/6人)/251万7600円(FF/7人)

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グーネットマガジン編集部

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