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更新日:2022.03.16 / 掲載日:2022.03.14
BMWの水素燃料電池車 2022年後半に少量生産を開始

BMWは現地時間の3月10日、水素燃料電池車「BMW iX5 Hydrogen」の寒冷地テストを行っている様子を公開した。また、同社は今年後半に同モデルの少量生産を開始すること、そして必要な水素ステーションの拡大にも着手することを明らかにした。
「BMW iX5 Hydrogen」今年後半に少量生産を開始、水素ステーション網も拡大へ

BMW iX5 Hydrogenは、BMW X5をベースに開発された水素燃料電池車。今回、スウェーデン北部にあるBMWグループのテストセンターで、冬季最終テストの一環としてテストプログラムが実施された。燃料電池システムや水素タンク、ピークパワー・バッテリー、車両制御ユニットの試験を行い、氷点下の環境下でもその性能が確認できたという。そして同社は今年後半にこのモデルの少量生産を開始し、水素ステーション網の拡大にも着手するとしている。
BMW AGの取締役会メンバーである開発担当のフランク・ウェーバー氏は、「極端な条件下での冬季テストは、BMW iX5 Hydrogenがマイナス20°Cの気温でもフル性能を発揮できることを明確に示しており、バッテリー電気駆動システムを搭載した車両に代わる有力な選択肢であると言えます」また、「燃料電池ドライブシステムを魅力的な持続可能モビリティ・ソリューションとして顧客に提供するためには、十分に広範な水素インフラストラクチャーが整備されている必要があります」と述べている。
BMWらしいダイナミクス、航続距離、日常的な使い勝手を両立した水素燃料電池自動車


極寒の環境下においても、同車は今回のテストで水素燃料電池駆動システムの信頼性を示した。極端な寒さの中でも駆動系はフル稼働を続け、水素タンクの補充はわずか3〜4分で完了するなど、従来の内燃機関と変わらない使い勝手をみせている。
BMW iX5 Hydrogenに搭載された駆動システムは、燃料電池テクノロジーと第5世代のBMW eDriveテクノロジーを採用した電気モーターを組み合わせたもの。使用する水素は、炭素繊維強化プラスチック製の700気圧のタンク2個に貯蔵される。燃料電池は水素を電力に変換して125kW/170psの出力を発生するが、電気モーターはさらにパワーバッテリーに蓄えられたエネルギーを加えることができる。このバッテリーは、エネルギー回収または燃料電池から充電され、最大275kW/374psのシステム出力が可能になるという。燃料電池から排出されるのは水蒸気のみで、廃熱は車内を暖めるのに利用される。
水素燃料電池車 iシリーズの新たな柱となるか

駆動系やエネルギー貯蔵、制御システムなどのすべてが、冬季試験の耐久性テストに合格。加えて、氷の路面や雪道においてすべての駆動系とシャシー系がテストされる。ステアリング、スプリング、ダンパー、シャシー制御システム、摩擦ブレーキとエネルギー回生による減速の相互作用などの項目で、BMW iX5 Hydrogenは同等のBEVよりも軽量であることが強みになっているという。
燃料電池とピークパワー・バッテリーの組み合わせというユニークなドライブ・システムを実現したiX5 Hydrogen。将来的にはBMW iシリーズのポートフォリオに、バッテリー電気自動車モデルと並び水素燃料電池車という新たな柱となる可能性が期待されている。