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更新日:2021.06.04 / 掲載日:2021.06.04

EVでもメンテナンスは必要?【EVの疑問、解決します】

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス

 安全で快適なドライブには、クルマの日常点検と定期点検が欠かせません。これは、法律で定められたユーザーの義務でもあります。それは電気自動車でも同じこと。しかし、エンジン車と点検が異なるのではと疑問を持つ人もいるでしょう。そして、必要となる定期交換部品の違いも気になるところ……。今回は、電気自動車のメンテナンスについて解説していきます。

疑問:EVでもメンテナンスは必要?

答え:チェック項目は減るけど、メンテナンスは必要

EVに必要なメンテナンスとは?

 もっとも基本的な点検となる日常点検は、走行距離や運転時の状態から判断して行う15項目の点検で、1か月に一度程度行うのが一般的です。その内容は難しいものではなく、各部を目視などで行う基本的なものとなります。時間も5-10分程度と済ませることができます。ここで異変を発見すれば、ドライブ中のトラブル回避にも繋がるので、とても大切です。

 その15か所の点検項目は以下を参照ください。点検の具体的な方法については、車載のメンテナンスノートや一般社団法人:日本自動車整備振興会連合会のMy Car Hand Bookなどに記載されています。

ステップ1:エンジンルーム内の目視点検
1:ウィンドウ・ウォッシャー液の量
2:ブレーキ液の量
3:バッテリー液の量
4:冷却水(クーラント)の量
5:エンジンオイルの量

ステップ2:クルマのまわりの目視点検
6:タイヤの空気圧
7:タイヤの亀裂、損傷及び異常な摩耗
8:タイヤの溝の深さ
9:ランプ類の点灯、点滅及びレンズの汚れ、損傷

ステップ3:運転席での動作点検
10:ブレーキ・ペダルの踏みしろ及びブレーキの効き
11:パーキングブレーキ・レバーの引きしろ
12:ウインド・ウォッシャーの噴射状態
13:ワイパーのふき取り状態
14:エンジンのかかり具合及び異音
15:エンジンの低速及び加速の状態

 お分かりのように、これらはエンジン搭載車を基準とした点検項目であり、EVに特化した点検項目は含まれていません。今後、EV普及が進めば、点検項目の最適化が図られるでしょう。ただ現時点では、これらが日常点検の項目となっていますので、EVとの整合性を確認しながら、順番に見ていきます。

 まずステップ1のエンジンルームの点検ですが、EVで不要となるのは、5番のオイルの量のみ。エンジンレスなので、当然、エンジンオイルは使われていませんが、パワートレイン以外のブレーキやラジエーターなどの基本的な構造は共通です。そのため、ブレーキ液と冷却水(クーラント)のチェックを怠ってはいけません。エンジンがなくとも、水冷システムが組み込まれる理由は、安定したシステムの作動には温度管理が重要なため。また駆動用バッテリーの冷却も水冷式が主流です。つまり、冷却水は、EVにも重要なアイテムなのです。ただEV(ハイブリッド車)のエンジンルームの点検時に、特に注意しなくてはならないのが、高電圧ケーブルと高電圧部品の存在です。高電圧が流れている箇所なので、不要に触れると重度の火傷や感電の恐れがあるためです。オレンジ色のケーブルと高電圧を警告するステッカーのある部品には、十分に注意しましょう。

 続いてステップ2のタイヤとランプ類の点検は、すべてエンジン車と同様に行います。とくにEVは、同クラスのエンジン車よりも重量は上。適正な空気圧と良い状態のタイヤは、安全面はもちろんのこと。電費の向上にも貢献してくれます。

 最後となるステップ3の運手席での点検は、クルマの基本的な操作装置を中心とした動作確認なので、EVでも同様の確認が大切。例えば、11番のパーキングブレーキは、EVだと電動式なので、その作動確認を。そして、項目14のエンジン始動チェックは、省くのではなく、スタートボタンをONにし、正常な発進状態になるか、その際に異音の発生がないかを確認しましょう。これは項目15の走行チェックも同じです。

 定期点検についてもエンジン車同様、自家用車では法定12か月点検と2年毎の自動車継続検査、通称車検(※初回のみ3年)が義務づけられています。近年は、専用の診断機を使用し、車両の状態を把握することもできるので、整備士と専用設備の整った整備工場に点検を依頼するようにしたほうがベターでしょう。

エンジン車とEVの定期交換部品の違いをチェック

MX-30 EVモデル

MX-30には、EVモデルとマイルドハイブリッド仕様がラインアップされている

 実際に維持コストにも影響する、エンジン車とEVの定期交換部品の違いはどの程度あるのでしょうか。いずれの仕様も設定されるマツダMX-30をサンプルに見ていきましょう。下記の表にまとめたのが、取扱説明書に記載されている主な定期交換部品となります。

マツダ MX-30の主な定期交換部品

定期交換部品MX-30 マイルドハイブリッド仕様MX-30 EVモデル
バッテリー(12V)
スパークプラグ×
エンジンオイル×
オイルフィルター×
冷却水(クーラント)
ATフルード○(EVトランスアクスル用)
ブレーキ液
ブレーキパッド
エアフィルター×

 エンジン車のスパークプラグは交換頻度が少ない部品ですが、大きく影響するのは油脂類の有無でしょう。EVにはエンジンが無いので、定期的に行うオイル交換が省けるため、メンテナンス代を抑えることが出来ます。同じ電動車でも、ハイブリッドやPHVには、エンジンが備わるため、油脂類の交換が必要となります。そして、定期交換部品で、エンジン車よりも寿命が長いのが、ブレーキパッド及びブレーキディスク。これは回生ブレーキでの発電による減速が行われるので、ブレーキの減りが抑制され、長持ちします。ただ冷却水とブレーキ液の交換は、経年劣化が発生するので、エンジン車と同様の交換時期が指定されています。また車載システムを動かすために必要な12Vバッテリーは、エンジン車同様にバッテリーあがりを起こすことがあり、傷みや経年劣化が生じれば、交換が必要です。

 このようにエンジン車と比べ、構成する部品点数が少なく、多くの機能が電動化されるEVは、エンジン車では必要となる部品交換が無かったり、より寿命が長かったりするものもあります。定期的なコストが抑えられるのは、EVの嬉しいメリットのひとつといえるでしょう。しかしながら、「走る、曲がる、止まる」というクルマの基本には変わりはありません。必ず定められた点検を厳守し、運転時などの異変を感じたら、ディーラーや整備工場に相談や点検の依頼を行いましょう。また車種毎の定期交換部品や点検項目については、車載の取扱説明書やメンテナンスノートで確認できます。

執筆者プロフィール:大音安弘(おおと やすひろ)

自動車ジャーナリストの大音安弘氏

自動車ジャーナリストの大音安弘氏

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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グーネットマガジン編集部

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