車の最新技術
更新日:2025.09.10 / 掲載日:2025.09.10

盛りすぎ、高すぎに待った! スズキが目指す次世代技術【スズキ技術戦略説明会2025】

文●内田俊一 写真●ユニット・コンパス、スズキ

 スズキは昨年発表した“10年先を見据えた技術戦略2024”の進捗状況を発表した。

車体の100kg軽量化にめど

 今回特に注目すべきポイントは、1本目の柱として紹介された、100kgの軽量化、Sライトだ。

 「二輪、四輪、船外機の部門の壁を越えてアイデアを出し合った結果、現在80kgの軽量化案の目途が立った」とスズキ代表取締役社長の鈴木俊宏氏が発表。

 その内訳は、部品軽量化で50kg、構造進化で20kg、仕様見直しで10kgだ。部品軽量化は、性能、コストとのバランスをとりつつ、最新技術を活用しながら進め、構造進化については初代アルトや、重量目標としている3代目アルトを徹底的に調査し、「改めて先人の想いに触れながら、ちょうどいい空間とは何か、安全性を向上させ、必要な機能を全うするために、1から寸法、形状を見直している」と述べるのは、スズキ取締役副社長技術統括の加藤勝弘氏だ。

 また、「社内での活動はもちろんのこと、異業種との交流も行いながら軽量化のヒントを探して“1gでも軽く”にチャレンジし、Sライトプロジェクトの先行開発車を2030年前までに完了させ、Sライト技術を盛り込んだ商品を、軽自動車を先頭に投入し、A/B/C各セグメントへ順次展開していくように計画」と加藤氏。

 一方、部品の軽量化技術については、「確立したものから順次、機種開発に展開し、2030年を待たず徐々に軽くしていく予定だ」と加藤氏はコメントした。

パワートレイン系にもめど

 2つ目の柱である燃費の良い内燃機関、カーボンニュートラル燃料対応技術については、「スーパーエネチャージを、軽いクルマにちょうどいいハイブリッドシステムとして先行開発を進めており、目標性能を達成できる目処がついた。同時にカーボンニュートラル燃料対応技術については既にインドで投入を始めており、E20対応車は二輪・四輪車共に全モデル対応済み、二輪車はFFVを量産開始。四輪車のFFVは今年度内に投入できるよう、開発を進めている状況だ」と鈴木氏。

 3つ目の柱は、バッテリーリーンなBEV/HEVだ。スズキ初のバッテリーEV、eビターラを海外で発表。EVとしての先進性やSUVの力強さ、ちょうどいい航続距離を兼ね備えたバッテリーリーンなBEVと位置付けられた。

 またインドで発表したe-ACCESSも同様に、バッテリーリーンなちょうどいい電動スクーターだと紹介された。

 また、将来のパワートレインの計画として加藤氏から、「エネルギー効率、エネルギー密度の観点に加え、環境、資源を踏まえ、バイオガスやバイオエタノールなどのカーボンニュートラル燃料を使う高効率な内燃機関の開発」。

 もうひとつ、「電動化技術とその組み合わせのハイブリッド技術というマルチパスウェイの技術方針はこれまでも、そしてこれからも変えずに進めていく」とされた。

 そのうえで内燃機関は、「NAエンジン、直噴ターボエンジンともに高効率なエンジン開発を継続。ハイブリッド専用エンジンであるDHE(Dedicated Hybrid Engine)の開発、バイオガスやバイオエタノールの対応技術+更なる高効率化を目指す」。そしてHEVは、「軽い小さいクルマには48Vハイブリッドスーパーエネチャージを、そして車格に合わせてシリーズHEVからPHEVまで、システム共通化と高効率化の達成目標を置きながら進める」。

 またe-Axleとバッテリーについては、「第1世代、第2世代、そして次世代へと技術を進化させ、将来のモビリティ社会にちょうど合うバッテリーリーンな電動化技術を育てていく」と述べた。

eビターラから始まるSDVライト

スズキ eビターラ

 さて、間もなく日本でも発表される予定のeビターラは4つ目の柱であるSDVライトの成果だ。

 「世の中全般に、電動化の拡大とともに、電装品の世界もどんどん進歩し、装備も拡充することで、お客様に利便性を提供する一方で、お客様には使うための習熟負担をかけるという裏腹な課題もある」と加藤氏。

 そこでスズキが掲げるSDVライトは、「お客様にちょうどいい高性能電装品の実現手段だ。あっても使わないものは過剰にせず、ちょうどいいを目指す」もの。その第一弾がe VITARAだ。BセグメントのSUVユーザーにちょうどいい機能を提供。具体的には、「統合ディスプレイシステム、サーバー連携ナビゲーションシステム、第三世代のスズキコネクトなど」が挙げられた。

 さらに今後は、「予防安全性の向上としてインテリジェントカメラのADAS機能を順次統合し、アフォーダブルな安全性能(NCAP性能)を獲得。自動車の装飾ランプはモデル毎の魅力・個性を大切に設計しつつも、ヘッドランプの機能集約と軽量化を実現。ディスプレイモジュールの一体化。市場と車格に対してちょうどいいデジタルコックピット、AIを活用した音声操作の導入、スズキコネクトのサービス拡充やコスト最適化など、お客様にちょうどいいをご提供していく」と加藤氏。

 また、「電子プラットフォームの更新も進め、将来必要とされる要件にしっかりと対応できる新しい電子プラットフォームを低コストで適切なサイズなど“小・少・軽・短・美”で開発していく」とスズキらしさも強調した。

ニュートラルからネガティブへ

5つ目の柱であるサーキュラーエコノミーの進捗は、

  • ・リサイクルを容易にする材料統合
  • ・容易に分解できる易分解設計
  • ・軽量化のSライトプロジェクトと連携して樹脂部品の減量
  • ・再生プラスチックの活用
  • ・回収スキームの構築

を着々と進め、近い将来、計画を立てて製品に投入する予定だとスズキ代表取締役社長の鈴木俊宏氏より語られた。

 そしてもうひとつ新しい取り組みとして、将来技術CN(カーボンネガティブ)についても紹介された。加藤氏は、「どんなに高効率な内燃機関であっても、全てを再エネ100%にしない限り、Well to WheelでのCO2はゼロにはならない。そこでスズキは、CO2を吸い取る技術、カーボンネガティブ技術にチャレンジしている。既存のクルマに後付けでCO2をキャプチャーして、そのCO2を農業に生かせないかという技術チャレンジだ」という。「自動車から出る排ガス中に含まれるCO2を捕集して、貯めておき、植物へCO2を供給し、植物の成長促進に寄与するサーキュラーだ」と述べた。

「エネルギー極少化」が新たなスズキの技術戦略になる

 そして今回加藤氏より、6本目の柱が紹介された。それは「エネルギー極少化」だ。

 「次世代のモビリティ社会における課題に対する、新たなスズキの技術戦略」と位置付けられ、日本での高齢化により免許返納の結果の移動制限や、公共交通の地域格差の問題。労働人口の減少による、物流や工場内搬送など、現場での人手不足。他方、新興国ではモータリゼーションが進み、交通渋滞や事故の増加が深刻な問題がある。これらは、「私たち自動車メーカーだからこそできる、自動車メーカーの技術者である私たちだからこそ、解決していかねばならない事だ」と加藤氏。

 そこで、「今一度原点に返って、クルマが持つ本質的な機能を見つめ直し、それを実現するクルマ作りを考えよう。クルマの本質的な価値を極大化してお客様にお届けしようと考えて、スズキの技術戦略に、クルマの本質価値の極大化を加えた」とその背景を語る。

 その上で安全性を確保しながら必要十分な先進装備を手ごろな価格で提供するとともに、操作性の向上や正しい運転姿勢による誤操作の防止。また、運転技量アプリを活用しドライバー自身の運転能力の客観的把握による免許返納時期の見極めをサポート。そして社会問題となっている運送ドライバー不足などへの対応として、自動搬送や公共交通の利便性を高める“新モビリティ”や、人生に寄り添うモビリティを目指す“サステナブルユース”を実現していくとされた。

120kgの軽量化!?

 最後に質疑応答時に、100kg軽量化での発見について問われると、スズキ常務執行役員四輪車両技術本部長の松下哲也氏は、「一番はクルマの大きさ」と回答。

 「軽自動車はハイトワゴンをはじめ、室内が小型車よりも広く、非常に使い勝手も良いが、軽自動車としての本質としては違う考え方もあるかもしれない。3代目アルトに皆で乗ってみると、全長で100mm、全幅で80mm軽規格の変更で小さいが、実際に乗ってみるとそれほど狭さ感は感じずちょうどいいねという意見もあった。昔のクルマを見るというのは、その小ささの中でも広さ感を感じる何かがあるというのが発見だった。それを参考にSライトとして、車両の寸法をゼロから見直して空間を最適化することを取り組んでいる」と述べる。

 すると加藤氏からから、「初代や3代目アルトはNVHのためのいろんなパッドとか全然ない。確かに乗ってみると確かにうるさいが、例えば構造解析だけではなくてノイズ解析などをやればノイズパッドがいらなくなる。こんなことが次世代のチャレンジとしてはある。そうすると10kg、20kgは間違いなく軽くなる。そうするといま80kgまでいっているので、100kgといわずに120kgをやれるのではないか」と半分冗談で新たな目標値が示されていた。

この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ