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更新日:2021.03.02 / 掲載日:2021.03.01
日産、次世代「e-POWER」発電専用エンジンで世界最高レベルの熱効率50%を実現
日産は2月26日、次世代の「e-POWER」向け発電専用エンジンで、世界最高レベルの熱効率50%を実現する技術を発表した。
現在、自動車用ガソリンエンジンの平均的な最高熱効率は30%台であり、40%台前半が限界とされていた。今回実現した熱効率50%は、エンジン開発において極めて革新的なものだという。
発電専用エンジンだからできるアプローチ

次世代「e-POWER」発電専用エンジン
従来のエンジンは、様々な走行負荷(車速など)をカバーする出力特性を持つ必要があった。しかし、エンジンを発電専用として特化できる「e-POWER」は、エンジンによる発電とバッテリー蓄電量を適切にマネージメントすることで、エンジンの使用領域を最も効率の良いポイントに限定できる。これにより、エンジン燃焼を高効率化することが可能となった。
この考え方は従来のエンジン開発とは全く異なったアプローチであり、エンジンの役割が大きく変わることを意味する。バッテリー技術やエネルギーマネジメントの進化によって、エンジンの運転条件範囲を効率的な領域で使用し、将来的には完全な定点運転とすることで更に熱効率を向上させることが可能となる。次世代「e-POWER」用エンジンは、この考え方を基に、完全に「e-POWER」専用設計として開発している。
熱効率50%を実現する「STARC」コンセプト
今回日産が熱効率50%を実現するために開発したのが、新燃焼コンセプト「STARC」(Strong Tumble and Appropriately stretched Robust ignition Channel)だ。同コンセプトは筒内ガス流動(シリンダー内に吸入した混合気の流れ)や点火を強化し、より希釈された混合気を高圧縮比で確実に燃焼させることによって熱効率を向上させるという考え方。
従来エンジンの場合、変化する走行負荷に対応するために、混合気の希釈レベルの制御には制約があり、筒内ガス流動や点火方法、圧縮比などにも、様々な運転条件のトレードオフ(例えば動力性能のために燃費を犠牲にするなど)によって制約を受けてきた。
しかし、エンジンを発電専用に特化し完全定点運転で使用するというブレークスルーによって、熱効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
希釈方式としてEGR(*1)を使う場合で43%、リーン燃焼(*2)を使う場合で46%の熱効率を既に多筒エンジンにて実証しており、それらを完全定点運転することと、廃熱回収技術を組み合わせることで、熱効率50%が実現できることを確認している。
*1 EGR(Exhaust Gas Recirculation):燃焼後の排気ガスの一部を再循環させて、再度吸気する技術。EGRによって希釈された混合気を燃焼させることで熱効率が向上する一方で、確実に燃焼させることは課題となる。
*2 リーン燃焼:理論空燃比(燃料と酸素が過不足なく反応する、つまり完全燃焼する空気と燃料の比率)よりも空気過剰な空燃比のこと。ここでは空気過剰率λ=2以上のリーン燃焼を想定。
e-POWERシステムと発電専用エンジン

平井俊弘専務執行役員
「e-POWER」はガソリンエンジン、発電機、インバーター、モーターから成るコンパクトな一体型パワートレインと高電圧バッテリーで構成。モーターのみで100%駆動するので、EVと同様、走る楽しさや静粛性に加え、燃費の良さが特長。
「e-POWER」は従来のハイブリッドシステムとは異なり、エンジン出力とタイヤの駆動力とを完全に切り離すことで、エンジンを発電専用として使うことが可能となる。今回発表した技術により、さらなるCO2排出量の削減(燃費向上)を可能にする。
パワートレインを統括する専務執行役員の平井 俊弘は以下の通り述べた。
「日産は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、2030年代早期に主要市場に投入する新型車をすべて電動車両とする目標を掲げ、パワートレインの開発を進めている。日産の電動化戦略として、電気自動車(EV)のe-パワートレインおよび高性能バッテリーの開発を進めるとともに、『e-POWER』をもう一つの柱として位置付けている。『e-POWER』システムだからこそ実現できるエンジンによってCO2削減を図り、EV社会の実現を推進してきたい」。
日産は、カーボンニュートラルの実現に向けた目標と戦略を本年1月に公表した。同社は、より効率的なEV搭載用のバッテリー技術開発と並ぶ戦略的な技術開発分野として「e-POWER」開発を位置づけ、技術開発を進めていくという。