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更新日:2019.05.13 / 掲載日:2019.05.13
新型RAV4開発者インタビュー

佐伯禎一氏 トヨタ自動車株式会社 Mid-size Vehicle Company MS製品企画 ZD チーフエンジニア
デザイン、走り、パッケージングのすべてが驚くほど高いレベルで調和している新型RAV4。トヨタ最新のSUVとして世界中から注目を集めているだけに、そのクルマ造りの考え方や手法も大いに気になるところ。開発の中心となった佐伯チーフにお話を伺った。
●文/山本シンヤ
「SUVのど真ん中!」新型RAV4の開発は直球勝負で挑みました
――3年ぶりの国内復活となりますね。初代はモノコックボディの都市型クロスオーバーSUVの先駆者でしたが、新型はよりSUVらしくなったように感じます。
佐伯「昨今、スタイリッシュでカーライクなSUVが多いですね。そんな中「SUVとは何なのか?」を考えて直球勝負で開発に取り組んだのが、この新型RAV4です」
――RAV4の開発コンセプトは「Recreational Active Vehicle 4 Wheel Drive」でしたが、この新型でも不変でしょうか?
佐伯「今年はRAV4が登場して25年の節目の年になります。次の25年を考えた時にRAV4を再定義して出発したいと考え、開発コンセプトを「Robust Accurate Vehicle with 4 Wheel Drive」としました。つまり、力強さと使用性とのきめ細やかな配慮を兼ね備えた4WDを目指したわけです」
――つまり、今のクロスオーバーSUVのトレンドは追いかけず、SUVとしてのRAV4を追求したと言うわけですね? グローバルで年間80万台を生産するメインモデルのコンセプトチェンジは勇気が必要だったと思いますが?
佐伯「もしかしたら好き嫌いはこれまでより激しくなるかもしれません。でも、新型は八方美人ではなく好きな人に本当に惚れてもらえるクルマ造りに挑戦しました」
――おっしゃることは分かりますが、大きな販売台数が見込めるアメリカや中国は重要な市場では?
佐伯「台数的にはそうかもしれませんが、SUVの力強さや頼れる相棒と言った部分を世界中のマーケットに問いかけた商品として開発してみたかったんですよね」
――ちなみに日本への再導入のキッカケは何だったのでしょうか?
佐伯「日本市場も既にポストミニバン時代。家族で夫婦で一人で……とクルマの使い方にも多様性が表れていますので、よりマルチに使えるSUVを、と考えました」
――世界的にはクロスオーバーSUVがトレンドですがそのあたりはどのようにお考えですか?
佐伯「正直、あまりとらわれないようにしました。気にし過ぎると自分たちのやりたいことがブレてしましまいますからね。それよりも「これから求められるSUVとは?」、「RAV4として最大限何かできるのか?」を重要視しています」
――その新型RAV4でやりたかったことってズバリ何ですか?
佐伯「分かりやすくシンプルですが、強いメッセージ性を持たせたかった。その一つが四駆性能です。そもそもRAV4の「4」は四駆を意味していますが、今までのように雪道/雨だけでなくオンロードも含めて安心して走らせるためにハードはかなり奢りました」
――AWDは3種類ありますね?
佐伯「様々な性格を与えていますが、共通なのは「安心して気楽に疲れず走れる」SUVらしい性能と「狙った所にスッとクルマが向かう」高いハンドリング性能を高次元で両立させている事です」
――ガソリンは2.0L直噴+ダイレクトCVT、ハイブリッドは1.5L直噴+モーターの組み合わせですがそれぞれの特徴とは?
佐伯「ガソリンは軽快感、ハイブリッドは燃費重視ではなくドライビングFunを狙っています」
――プラットフォームはカムリから採用の新しいTNGA「GA-K」ですね。先代はカローラ系の新MCプラットフォームでしたがこのあたりはいかがですか?
佐伯「性能を「遊びの部分」に使いたかったので、余裕があるカムリ用をベースにしました。基本のエンジンコンパートメントと言った部分はカムリと共通ですが、RAV4用にわがままを言わせてもらっています(笑)」
――より良い走りのために開発には「匠」と呼ばれるプロフェッショナルが活躍されたと伺いました。これはSUV開発ではあまりない事例のようですが?
佐伯「ステアリングを切った時の気持ち良さ、加速感や減速感などは数値より官能性能を重要視しました。そのために匠たちの協力は不可欠でした。乗れば必ずその良さがわかっていただけますよ!