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更新日:2025.12.16 / 掲載日:2025.12.16

フォレスター、デザイン先行でもスバルらしいクルマづくり【九島辰也】

文●九島辰也 写真●日本カー・オブ・ザ・イヤー

 去る12月4日に、2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーが決定しました。およそ20年、この賞に選考委員として携わっていますが、毎年この時期になるとワクワクします。いったい今年はどのクルマが本賞を獲るのか、選考委員の総意が気になるところです。

 とはいえ、今年はあいにく海外出張と重なったため本賞の発表会は欠席せざるを得ませんでした。ここ数年はしっかり発表に立ち会っていたので残念です。ですが、オンラインで生中継してくれたおかげで、遠いヨーロッパの地でも観ることができました。便利な世の中です。

2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー 10BESTカー

 興味深かったのは、選出されるクルマもそうですが、その選考方法と演出です。今年は選考方法が変わったことと、各選考委員が自分の投票が公表されたタイミングで30秒のマイクパフォーマンスをすることになりました。なので、興味津々。10ベストに選ばれたクルマすべてに順位をつけるのは初めての試みです。昨年までは上位3モデル、それ以前は上位5モデルだったので、大きく異なります。これまでも自分なりには10位まで順位をつけていましたが、それをコメント付きで公表するのとしないのでは別物。自分の中で完結するのであれば、「この3台は同率7位かな」ですましていたものが、そうはできなくなりました。

 30秒のマイクパフォーマンスも気になっていました。選考委員の皆さんどんなことをコメントするのか、そしてそこにもし自分がいたらどんな話をしたのか想像を膨らませていました。結果からすると、皆さんすごく上手でした。言いたいことを完結に述べていてとても聞きやすかった。普段からトークショーなどしていますからね。話し上手です。

 閑話休題。

 大賞はスバル・フォレスターが受賞しました。6代目として生まれ変わったSUV然としたモデルです。目玉はスタイリングとパワーソース、それと運転支援システムのひとつに挙げられるアイサイトXです。スタイリングは個人的にとても気に入っています。変にアクセントをつけて個性をアピールすることなく、オーセンティックに仕上がりました。

 このデザインですが少しユニークな話があります。それはチーフエンジニアによれば、デザイン優先でこのモデルが仕上がったというのです。ですが、デザイナーに任せるとクルマとして成立しないのが常です。そりゃそうでしょう。デザインコンシャスな人が自由に線を引けばパッケージとして成立しなくなります。なんたって彼らはカッコいいデザインを追い求めていますから、人が乗れなくても構いません。レクサスのスピンドルグリルの時がそうでした。デザインスタディの評判が良かったのですが、既存のプラットフォームではそれを実現することができず、フレームから作り替えました。まさに、これじゃ人が乗れないとなったのです。デザインスタディは市販車のデザインとは違いますが、概ねそんなものです。

 ところがスバルは違った。デザイナーが自由に線を引いてもクルマづくりの要件をすべてクリアしていたのです。つまり、彼らは初めから人が乗れなかったりエンジンが積めなかったりするパッケージングを想定していませんでした。そこをスバルのデザイナーに直接問うと、「うちはデザインが走りを邪魔することはありません」と答えてくれました。確かにこれは当たり前と言えばそうですが、開発前のドローイングの時点でこれを考えるデザイナーは他社には少ないと思います。まぁ、良くも悪くもこれがスバルなんでしょう。もちろん今回はそれがポジティブに現れました。

スバル フォレスター

 パワーソースはストロングハイブリッドが目玉です。2.5リッターBOXERエンジン+2モーターで力強い走りを見せます。排気量以上のパワーを感じさせながらEVモードを持つことで燃費にも役立つのですからメリットは大きいでしょう。と同時に1.8リッターターボを用意しているのはスバルらしい。内燃機関だけの走りを楽しみたい人のニーズにも応えています。

 さらに言えば、このクルマはハンドリングが気持ちいいのと乗り心地も快適です。ここはスバル実験部の味付けが、個人的な好みとマッチしていると言ってもいいかもしれません。路面からの入力をどうフィードバックするかは、さじ加減次第ですから。そこに期待するフィーリングがあるかないかというハナシです。

 ということで、今回は2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーを振り返り、フォレスターに言及しました。インプレッションに関してはこれまでいろいろなメディアでレポートしてきたので今更ですが、本賞にふさわしい仕上がりであることは間違いありません。それに販売も好調のようですから我々も嬉しい限り。あとはこの人気をどう維持していくかですかね。息の長いモデルになることを期待します。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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