車のニュース
更新日:2024.09.29 / 掲載日:2024.09.29

トヨタが描くクルマの未来・水素活用の街づくりとは?

モータースポーツを通じて加速するトヨタが取り組む、九州における水素を活用した街づくり

トヨタのスポーツカーブランドである「GR」とスーパー耐久などに参戦する「ルーキーレーシング」は水素エンジンカローラを走らせているが、現在では仲間づくりの輪が広がり、水素エネルギーを活用した街づくりの取り組みも広がっている。今回は九州における実例を紹介しよう。

●文:月刊自家用車編集部 ●写真:トヨタ自動車株式会社/月刊自家用車編集部

2022年の連携協定締結後、驚異のスピードで水素活用が進む

福岡市とトヨタ、そして水素社会の早期実現に向け、商用事業での協業に取り組むCJPTは、2022年2月に「水素社会のまちづくり実現に向けた幅広い取り組みに関する連携協定」を締結している。その後、同年12月には福岡県とも「FCモビリティ普及に向けた取り組みに関する連携協定」を締結し、公用車での燃料電池車両の導入拡大に共同で取り組むことに同意。この中で、小型トラックや塵芥車(ゴミ収集車)、救急車、大型バスや小型バスなど、FCEVの車両を導入する企画と検討が宣言された。
トヨタ「GR」と「ルーキーレーシング」が共同で、水素エンジンカローラで参戦しているスーパー耐久の2023年オートポリス戦の会場では「BtoG(企業と行政が一体となって、地域住民の生活を豊かにする街づくりを行う取り組み)」として具体的な車両導入を宣言。それから約1年が経過し、今回スーパー耐久第3戦期間中の7月27日に、取り組みの実績と課題の説明会がイベント会場の特設ブースで開催された。
説明会では、トヨタ自動車副社長/CJPT社長の中嶋裕樹氏が九州における水素の取り組み、この1年の総括を行った。まずは九州の話から離れて、福島県での小型FCトラックの実証実験について、「10万㎞を無事走行完了してデータが取れたのは非常に大きなこと。量産へ向けた大きな一歩が踏み出せた」とコメント。さらに、九州ではJR九州と福岡県と共同で運行している「日田彦山線BRT ひこぼしライン」のFCEVバスの有用性や福岡市と共同で運行しているFCの塵芥車(ゴミ収集車)や救急車についても実車の展示を見ながら言及。使用する水素についても、大林組が取り組む大分県の地熱を利用したクリーンな水素を使用している点、FCEVの塵芥車や救急車は下水由来の水素を使用するなど、地産地消でまかなっている点を強調した。
さらに今回は展示されなかったがFCEVの給食配送車についても説明。この配送車は今年の6月30日までに福岡市の27校、約20万人分の給食を配送(3台合計)。中嶋氏は配送車について「お子さんに水素を身近に感じてもらい、大人になった時にエネルギーは水素が当たり前という世界を作りたいし、必ず来ると思う。今ここにいる皆さんと一緒に汗をかくことで実現できると思っている」と熱い思いを語った。
そして水素供給の問題点についても触れた。やはり課題は水素の安定供給。現場の課題として水素ステーションの数が少ない(遠い)、待ち時間や点検休止の頻度をあげて説明。しかし、今回展示された車両が人口30万人都市で必要な数(救急車12台、給食配送車20台、塵芥車300台、コミュニティバス30台)FCEVに置き換わった場合の1日あたりの水素量は2000㎏で水素ステーション8基分となり、安定して運営できるようになるという。
このように良いことも課題もある水素事業だが、トヨタとCJPT、そして自治体は「まずはやる事」、そこから課題を洗い出すことに重点を置いていることがわかった。お世辞ではなく、モータスポーツの世界でも取り組む水素へのアプローチと取り組みの厳しさを同じスピード感を持って取り組んでいることに感銘を受けた。また1年後、どれだけ進化しているか楽しみである。

説明会にはCJPT中嶋社長(右)のほか、トヨタ自動車株式会社CVカンパニー 太田博文チーフエンジニア(左)、福岡市 衛材観光文化局 新産業振興部 水素推進担当 三浦慎一朗課長(中央)も登壇した。
6月30日までに延べ2052名が乗車した「日田彦山線BRT ひこぼしライン」のFCEVバス。航続距離は約380㎞。
「平成29年7月 九州北部豪雨」により被災した日田彦山線添田駅〜夜明・日田駅間を運行し実証実験中だ。乗車定員は21(内立席6)人。
現行型FCEVセダン「MIRAI」搭載の第二世代FCシステムを採用している。外装も専用のカラーリングとなっている。
FC塵芥車(ゴミ収集車)は、CJPTに参画するいすゞ自動車の小型トラック「エルフ」がベース。航続距離は約200㎞。
今回の説明会会場で必要な電力をFC塵芥車で給電。FC化ならではのエピソードとして、「今まではディーゼルだったためエンジン音が大きく、その音を合図にゴミ出しをしていたのに、静かだから気がつかずゴミ出しができなかった……」という意見があったという。
スーパー耐久の開発車両などが参戦可能なST-Qクラスを実験の舞台として挑戦している水素エンジンカローラ。
水素エンジンカローラ参戦活動で仲間づくりの輪は今回のオートポリス戦で56に拡大。今回新たなに加わった日本重化学工業は水素吸蔵合金タンクを用いたボイルオフガス活用に参加。
オートポリス戦は残念ながらリタイヤという結果になったが、毎戦ごとに進化。前回の富士24時間レースでは、水素タンクの形状変更などで、初挑戦時から3倍(1充填で30ラップ)という航続距離延長を達成。
トヨタの高級ミニバン「グランエース」をベースに救急車として必要な装備を搭載。航続距離は約300㎞。
FC救急車は、低振動で乗車する患者にも優しく、静かで大きな声を出せない患者との会話も明瞭で好評という。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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