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更新日:2022.05.20 / 掲載日:2022.05.20
【三菱 eK クロス EV】ガソリン車と変わらない感覚で乗れる電気自動車

文と写真●ユニット・コンパス
5月20日、日産と三菱がそれぞれ電気軽自動車(BEV)を発表した。日産版が「サクラ」で、三菱版は「eK クロス EV」というネーミングになった。
アライアンスを組む日産と共同開発
アライアンスを組む両者はすでに軽自動車分野で協業を進めてきたが、いよいよ電気自動車の分野でも共同開発が進んできたというわけ。スケールメリットを生かして、高品質な商品を低コストで提供しようという作戦だ。日産と三菱はそれぞれ電気自動車について長年の知見を持っていることもあり、その出来栄えには期待が集まる。
興味深いのが、日産版と三菱版それぞれがルックスだけでなく電気自動車に対するアプローチが異なること。ここでは、三菱版である「eK クロス EV」をメインに紹介し、両者の違いについても解説する。
内外装は「eK クロス」をベースに専用アイテムを追加



「eK クロス EV」は、その名のとおり三菱の人気モデル「eK クロス」のBEV版。SUVテイストを取り込んだお馴染みのデザインはほぼそのままに、専用のディテールを施している。外観上の違いは専用のボディカラーやフェンダーに与えられたエンブレムくらい。内装については、メーターパネルが7インチの液晶モニターになったこと、シフトノブが電制式になったことがハイライト。

ほぼそのままというのは使い勝手についても同じで、電気自動車であることをあまり意識しないで普通の軽自動車として扱えるように作られている。室内の広さもガソリン車と変わらないし、スペックを比較しても車重が200kgほど重くなっていること、最低地上高が10mmほど低くなっていることくらいだ。スペックといえば最大トルクはガソリン車と大幅に異なる。数字で言えばほぼ倍にあたる195Nmもあるのだ。なぜそれが可能になったかというと、軽自動車には「最高出力の規制」はあっても「最大トルクの規制」がないから。取材時に敷地内を走らせることができたが、坂道などでの力強さは従来の軽自動車とは比較にならないレベルだった。もちろん、モーター駆動なので静粛性も段違い。
軽自動車の弱点である加速の遅さと騒音問題が電気自動車になったことで解決したといっていい。それでいながら実質的な購入額は、184万8000円と従来のガソリン車とあまり変わりがない。自宅に充電設備が準備できるユーザーなら、試してみたいと思える価格設定だ。




軽自動車ユーザーを分析し実用性のある航続可能距離を設定
BEVでもっとも気になる一充電航続距離は180km(WLTCモード)。これはユーザーの使用状況をリサーチしたうえで決めたもので、大半のユーザーなら充電せずに2日間は使えるという想定だ。普通充電でも約8時間で満充電になるため、帰宅して充電ケーブルを繋いでおけば、翌日には「満タン」になっているというから使いやすそうだ。
急速充電器にも対応しているので、高速道路を使うような遠出にも対応。電気自動車で高速走行などで駆動用バッテリーに負荷がかかると駆動用バッテリーの温度が上昇し、急速充電に繋いでも充電されにくい現象が起きる。「eK クロス EV」では、その対策として駆動用バッテリーには温度管理用の冷却装置(エアコンの冷媒を使うため低コスト)を備えることで、実際の使い勝手も追求したという。これは嬉しいところ。
「eK クロス EV」は、モビリティとしてだけでなく、巨大なバッテリーとしても使用可能。V2L機器(外部給電器)を接続すれば電化製品も稼働させられるため、災害時の備えにもなる。もちろん、V2Hにも対応している。
日産「サクラ」との違いは?

気になる日産「サクラ」との違いについて説明しよう。「eK クロス EV」が従来の軽自動車に近いデザインと価格とすることで、電気自動車を選択肢のひとつにしたのに対して、「サクラ」は価格的にも装備的にも上のポジションをねらっている。所有することが嬉しくなるような専用デザインを与え、室内の素材も上質で手触りにもこだわった。日産は、いま電気自動車を購入できるのはアーリーアダプターで経済的にもゆとりがある層だと考えていて、そういう人々が欲しくなるようなプロダクトを作ったというわけだ。価格帯とコンセプトを分けることで、より広い層にアプローチするという作戦だろう。
電気自動車をユーザーの選択肢のひとつに

使い勝手のいい道具としての「eK クロス EV」と所有する魅力にあふれる「サクラ」。いずれにせよ、日本の4割を占める軽自動車市場に、最新スペックの電気自動車が投入されたインパクトは大きい。