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更新日:2022.03.30 / 掲載日:2021.11.11
カローラ クロス実力採点簿
リーズナブルな価格でコンパクトSUV戦線に参入したカローラクロス。 日本を代表する大衆車の名を冠したニューモデルは、SUVカテゴリーでも伝統の名を轟かせるのか。 公道試乗でその実力を徹底チェックだ!!
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久
この記事の目次
“カローラ”はSUVでも王道定番となり得るか!?

写真左:ハイブリッドZ(FF)●価格:299万円●ボディカラー:ダークブルーマイカメタリック

タウン&レジャーの 高い実用性を低価格で提供 カテゴリーの基本コンセプトなら悪路走行を目的としたモデルになるが、最近のSUV、特にコンパクトクラスでは高い室内高を活かしたキャビンスペースや見晴らしのよさ、乗降性など、実用面のメリットもセールスポイントとして重視されている。 カローラクロスの開発では悪路踏破性はあまり重視されていない。最低地上高はスペシャリティ志向のC-HRを除くトヨタSUVでは最も低い。一方、室内高は最大であり、RAV4の+35㎜だ。室内長ではさすがに及ばないが、居住空間はコンパクトSUVでもトップクラス。同じようにカローラ ツーリング(ワゴン)と比較すると、室内長は同等で、室内高は105㎜上回り、キャビンユーティリティを重視するユーザーには魅力的なパッケージングなのだ。 実用派の要のひとつ、コスパもカローラクロスの見所。HB/セダン/ワゴンと同様の価格レンジに収めるべく、コスト管理された設計を採用。もちろん「安かろう悪かろう」では無意味。設計や部品の共用化などを巧みに用いて車格感や性能低下を抑えつつ、カローラシリーズらしい価格におさめている。コスパよくレジャーや生活の供となるクルマが狙いである。



高コストなメカニズムを使わずに納得の走行性能と乗り心地を達成

ハイブリッド仕様のドライバビリティは最新のハイブリッド車に遜色なし

吟味された不足のない性能 &機能が好印象 座面地上高はほどよい高さ。膝を軽く曲げたところに座面がある感じだ。RAV4では小柄な人にはちょっと高く、HBやワゴンでは腰や上半身の動きが大きい。もちろん、サイドシルはドアがカバーしているので、悪路走行後の車体汚れもさほど気にせずに済む。 着座姿勢は前後席ともに立ち気味。上半身の拘束感が小さいので視線移動も容易だ。高いアイポイントと相まって寸法以上に開放的な印象を受ける。荷室は掃き出し段差と後席格納時の段差が大きいのが泣き所だが、ワゴンに匹敵する奥行きと余裕の荷室最大高により、かさのある荷物も積載可能。上級クラスからのダウンサイザーにも対応できるキャビンだ。 試乗車はともにFFで、リヤサスはカローラ系では唯一のトーションビーム。同タイプのサスとしては比較的長いストロークを使いしっとりしているが、他のカローラ系ではあまり意識しなかった段差や目地越えでの突き上げや車軸周りの振動が目立つ。これはリヤダブルウィッシュボーンを採用する4WDでは改善されている可能性が高く、車種全体としての結論はまだ出しにくいのが正直な印象だ。 ロール速度を抑えながら、ロールに合わせて素直に回頭。中立付近や定常円旋回中の据わりもいい。切れ味を誇張するのでもなく、車体サイズ以上に収まりのいい操縦感覚を示す。FF車にしてはロール軸の前下がりが少ないのも安定感としなやかさではプラス評価。 全体として悪くないし、乗り心地に気を使ったサスチューンも好感が持てる。ただ、乗り心地の質感がちょっと気になるところだ。 動力性能面では、巡航ギヤ維持範囲の拡大や踏み込み直後のトルク増大等々、踏ませず力感良く走らせる制御はダイナミックフォースエンジン的だが、比べてしまえば加速移行時のレスポンスやエンジン回転変化(ダウンシフト量)で鈍な印象も覚える。もっとも、ハイブリッド車ではエンジン回転変化が目立つ程度で、ドライバビリティ自体は最新ハイブリッドと大きな違いはない。また、同クラス相対では余力感や扱いやすさで高く評価できる。 お手頃価格実現のための手抜きはなく、キャビン実用性やケレン味なくまとまった品のいい走りなど、総じて印象はいい。リヤサスを云々、最新エンジンをかんぬんと言っても、それで数十万円値上げなら魅力も半減。クルマ好きメカ好き視点ではひと言言いたくなるが、悪路性能にこだわるアウトドアレジャー派を除けば、カローラ系あるいはコンパクトSUV全体で考えても実力派である。


【CLOSE-UP】ガソリンかハイブリッドか
ガソリン車もスペック以上の実用性能だが ハイブリッド車は明らかにそれを上回る エンジン回転数を抑え、アクセルペダルストロークの浅い領域でのトルクやレスポンスを上げているので、ガソリン車もスペック以上に余裕のある実用動力性能を示す。ただ、ハイブリッド車と比較すると全体的に反応が鈍い。ハイブリッド車相対ではマイルドな味付けだが、それでも電動駆動の威力で微細なコントロールや素早く踏み込んだ時の追従性は段違い。低中速域では純電動走行も頻繁に行う。速さよりもドライバビリティの洗練度でハイブリッド車が格上の出来だ。

実力採点簿【走行性能/運転支援】

最先端を追うことなく 実用面の総合力で勝負 取りこぼしなく高水準でまとめているが、例えば運転支援ではアクアには採用されるアドバンストパークが非採用など、全体的にトヨタ車として時代の真ん中にはあるが先行はしていないといった印象。先進性や特化型アドバンテージよりも実践的総合力の高さで勝負するタイプだ。
エクステリア/インテリア
エクステリア
実用的なスクエアフォルムに カローラ系のフェイスデザイン フロントマスクにカローラ系らしさが演出されているが、全体的にはヤリスクロスの拡大版の印象が強い。全長はカローラツーリングにほぼ等しく、全高はヤリスクロスより30㎜大きい。全幅はコンパクトSUVでは最大級となる1825㎜だが、フェンダー部幅によるもので、ドア部幅では他のカローラ系と同等なので実用面のハンデは数値よりも低い。





インテリア
アップライトなドラポジと 寸法の余裕が開放感をもたらす 上下幅を大きく取っているが、基本デザインはカローラ系を踏襲している。インパネは緩やかな一体感の曲面を軸にした造形に、機能感よくメーターや操作パネル、DAを配している。室内有効長は他のカローラ系と大きく変わらず、ゆとりの室内高と合わせてゆったりとしたキャビンスペースを確保。SUVパッケージングを活かした実用性が見所だ。





実力採点簿【エクステリア/インテリア】

飛び道具的な演出はなく 実用的に手堅くまとめている 居住性と積載性を考えた設計だが、寸法的な優位性以外に目立ったアドバンテージはない。操作系の基本レイアウトはカローラ系に準じ馴染みやすいが、特筆すべき点はない。全体の印象は「手堅さ」であり、ウェルバランスのまとまりのよさが印象的である。
装備/ユーティリティ
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ダウンサイザーも納得できる 適度なプレミアム性を備える カローラ系で唯一カローラクロスだけが設定するプレミアム装備がパワーシート。Zへの標準装着のみの設定だが、ダウンサイザーは注目すべき点だ。パワーリヤゲートはハンズフリー対応型をS以上に設定。セーフティセンスとDAは全車に標準。


















【CLOSE-UP】パワートレーンでサス方式が異なる



【CLOSE-UP】グレードによる装備差は?










結論&おすすめグレード
アウトドア趣味がメインではなく 日常&タウンユースで好バランス 悪路対応をどこまで求めるかがカローラクロスの評価では大きく影響する。160㎜の最低地上高は雪路のわだち跨ぎ性は確保できても、荒れた林道レベルになると余裕がない。4WDはハイブリッド車に生活四駆型E-Fourを設定するだけ。他のカローラ系よりも悪路対応力が高いと言ってもSUVの購入を機にアウトドア趣味を考えているユーザーには心許ない。 しかし、それを除けばカローラクロスはコンパクトSUVでも走行性能やキャビンユーティリティで最も余裕があり、サイズと実用性のバランスがいい。居住性と積載性、高いアイポイントの爽快感や車格感などを上手にまとめたモデルであり、上級クラスからのコンパクトクラスへのダウンサイジングを考えているユーザーには最有力候補の一車である。
おすすめグレード
ハイブリッド S(FF)
コンパクトSUV最上位の車格感にこだわれば意外とZが買い得だが、実用志向のコスパ派ならばSをベースにOPで無駄なく仕立てるのもいい。ハイブリッド車とガソリン車の価格差は25万円だが、電動化の進捗を背景に、長期使用前提ならハイブリッドが無難。

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