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更新日:2020.08.27 / 掲載日:2020.08.25
アイサイトXを体験! 新型レヴォーグの全容が明らかに。国産ワゴンの雄はどう進化したのか

スバル レヴォーグ STIスポーツ(プロトタイプ)
文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
初のフルモデルチェンジで2代目に進化し、この秋に発売される予定のSUBARU(スバル)「レヴォーグ」。発売に先立ってプロトタイプ(試作車両)に乗ることができたのだが、正直に告白すると、受けた衝撃はおおきかった。あまりの進化の大きさに。
レヴォーグは実質的に日本における同社のフラッグシップモデルであり、新技術の積極採用など他のモデルをリードする役割を担っているのはご存知のとおりだ。しかしそれにしても、旧型からの成長幅には驚くばかり。伝えたいことはたくさんあるのだが、今回はその概要と先進の運転支援システムを中心に紹介しよう。
日本の道路事情にマッチしたボディサイズは新型でも健在

新デザインコンセプト「BOLDER」による彫刻的で力強いフォルムが新型レヴォーグの特徴
まずはレヴォーグの立ち位置を再確認しておこう。
レヴォーグは、日本はもちろん、世界でも珍しいステーションワゴン専用車。車体構造をはじめとする基本メカニズムの多くはセダン専用車種の「WRX」と共用しているが、とはいえ顔つきは異なるし別の車種として展開。クラスは「Dセグメント」なので、BMW「3シリーズツーリング」やメルセデス・ベンツ「Cクラス ステーションワゴン」、そしてアウディ「A4アバント」などと同じ車格となる。とはいえ日本では、それらに比べると手の届きやすい価格帯だから身近なモデルだ。
そして、レヴォーグの特徴であり、新型に触れても「しっかり守ったな」と思えるのが、日本向けの設計になっていることだ。現在は欧州への輸出もしているレヴォーグだが、当初は日本専用として開発された。それを象徴しているのが車幅。「日本では幅が1800mmを超えると駐車場などで扱いづらくなる」というこだわりに基づき、初代は全幅を1780mmに設定。新型は15mm増して1795mmとなったが、それでも1800mm以下を守っている。ここは絶対に譲れない部分なのだ。
いっぽう全長は先代に対して65mm伸びた4755mm。ホイールベースは2670mmと変化なく、全長の延長分は伸びやかになったエンジンルーム長にあてられている。ただし、ホイールベースは変わらないが前後席間距離は25mm拡大し、後席がひざまわり広くなった。
ライバルに対してラゲッジスペースの広さで差をつけた

走りと居住性が高次元でバランスするステーションワゴン。スバルはここにこだわり続けている
パッケージングのハイライトは、ステーションワゴンとして譲れないラゲッジスペースの拡大だ。荷室の前後長は変わらないものの、左右幅を広げることで容量をアップ。後席を畳まない通常時の容量は、従来比39Lプラスの561Lとしている。

荷室は数値的な広さはもちろん、実際の使い勝手も良好。これはスバル開発陣が実際にワゴンユーザーが多くその体験が生きているから
ちなみにこの荷室容量は、Cクラス ステーションワゴンが470L、3シリーズツーリングが500L、A4アバントが505L、そして日本に導入されている欧州車のクラストップを誇るボルボ「V60」の529Lを上まわるといえば、いかに大きいかイメージできるだろう。車体サイズはもっと小さいが、荷室はもっとも広い高効率のパッケージングなのだから高く評価しないわけにはいかない。さらに付け加えると、荷室床下のサブトランクも69Lと、機内持ち込みサイズのキャスター付きケースが入りそうなほど大きなサイズだ。
新型レヴォーグはメカニズムを刷新。エンジンには高出力版の噂も

SGPを採用すると同時に、SGPと上屋(うわや)を溶接することで一体化させ、さらなる剛性向上を実現させたレヴォーグの骨格
メカニズムや車体設計は刷新。車体は現行インプレッサから導入されているSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)というプラットフォームを活用し、構造用接着剤の使用拡大や外板パネルを最後に接合するフルインナーフレーム構造により、ねじれ剛性が従来型比で44%(!)も高い強靭なボディを作り上げたのだ。頑丈な車体は旋回性能だけでなく直進安定性や乗り心地などの基礎となる要だけに、見逃せないポイントだ。
パワートレインも新設計のエンジンとCVTを搭載。エンジンは排気量1.8Lのターボで、パワーと燃費のバランスに優れている。そのうえ、さらに大きな排気量でパワフルなタイプが追加されるという噂もあるから期待したい。
床板となるオレンジ色の部分がSGP。構造用接着剤の範囲を広げたり、リヤサス付け根、荷室開口部なども強固な構造とし、サスペンションがスムーズに動くように設計した
安全性能については基準値だけでなく独自の視点からも追求。歩行者保護性能も高められた
変化が大きいインテリアデザイン。縦型タッチモニター採用で先進イメージが加速

ナビやエアコンなどの各種情報を表示するタッチ操作対応の11.6インチディスプレイを縦型に搭載
エクステリアデザインはキープコンセプトといっていいだろう。しかし細部にエッジを効かせてシャープになると同時に、フェンダーは張り出し感を強調するなど躍動感が大きくアップ。先代よりもダイナミックな雰囲気だと感じた。
一方でインテリアは、あまりに変化が大きすぎて2度見するほどのインパクト。一部仕様はなんと、インパネ中央部に縦長の大画面タッチパネル(11.6インチ)を設定。まるでタブレットを張り付けたかのようなガジェット感である。12.3インチのフル液晶メーターとあわせて日本車をリードする勢いの先進感だ。はっきりいって、このデジタルに包まれるような感覚は好みが分かれないわけがない。しかしここは、守りに入ることなく攻めたスバルのデザインチームを評価しようじゃないか。ときには、こういう思い切りが必要だ。
操作系はステアリングに集約され、運転中に手を離すことなく各種操作が行えるようになっている
取材車はSTIスポーツで、ボルドー/ブラックの本革シートが装着されていた
「アイサイトX」の搭載により渋滞時のハンズオフを実現した

そんな新型レヴォーグにおいてじつは、もっとも進化したのは、先進安全技術やドライバー支援技術である。たとえば自慢のアイサイトは、システムの要となるステレオカメラを刷新して高性能化。さらに先代でも使っていたリヤソナーや後側方レーダーに加え、新たに前側方レーダーも追加して周囲を検知する能力を高めている。衝突回避・被害軽減ブレーキの性能がアップしただけでなく、衝突回避サポートの作動環境が右折時の対車両、交差点右左折時の対歩行者、そして横断する自転車にまで拡大。交差点では左右側方から近づいてくる車両に反応してブレーキをかける制御も新たに採用している。
そして、運転支援の真骨頂といえるのが「アイサイトX」という新システムの搭載だ。先ほど紹介した大画面タッチパネルやフル液晶メーターまで含めて約35万円という価格のオプションとして用意されるこの装備のハイライトは、ハンズオフ機能である。ハンズオフとは、走行中にドライバーがハンドルから手を離せる機能。従来はドライバーがハンドルに手を添える必要があったが、新型はドライバーに代わってクルマが、車線を守るようにハンドルを制御するのである。
使えるのは自動車専用道路で速度上限は渋滞を想定した50km/hと条件に制約はあるものの、ハンドルから手を放してもクルマが走る様子はとにかく衝撃だ(速度管理はクルーズコントロールがおこなう)。新型レヴォーグはクルマのセンサーに加え、3D高精度地図ユニットと準天頂衛星システムの情報も併用することでハンズオフを実現している。
実力はもとより、コストパフォーマンスの高さも魅力

今回の試乗では実際にこの機能を試してみたが、特筆すべきはステアリングさばきが正確でスムーズなことだ。こういったシステムはドライバーに不安を与えるような動きだと使う気にはなれないが、そこは心配いらない。まるで上手なドライバーが運転しているかのように滑らかなことを確認できた。
ところで、ハンズオフ機能自体は3シリーズをはじめとするBMWの最新モデル各車(上限速度60km/h)や日産「スカイライン」(上限素読度は高速道路の最高速度)などにすでに搭載されている。だから日本初ではない。しかし、注目したいのは車両価格だ。スカイラインが500万円台後半からだし、BMWはもっともリーズナブルな3シリーズのベーシックグレードでも500万円手前から。しかしレヴォーグはなんと、オプション装着しても350万円程度のモデルから用意しているのだ。従来は縁遠い存在だったハンズオフ機能を、グッと身近な存在としたのである。それが新型レヴォーグの最大の衝撃ではないだろうか。