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更新日:2020.08.26 / 掲載日:2020.08.26
新型ハリアーの○と×

まさに全方位が進化した新型ハリアーだが、そういえども気になる部分があるのも当たり前。ここではポイント別に、強みとなる◯の部分と、少し気になる×の部分をピックアップ。購入時の参考になる情報を整理してみたい。


レザーパッケージ車の 価格設定は十分納得できる
今の時代、先進運転支援機能が全グレードに標準装着になるのは当然。ただしプレミアムモデルらしい運転席パワーシートやパワーテールゲートなどが標準となるのはG以上から。Sの装備内容は物足りなく、さらにSとGの価格差も気になる。一方、もう一つの売りであるレザーパッケージ車は、価格差(30万円)と内容を考えれば妥当だ。いずれにせよ装備内容や走行性能まで考慮するならば、新型はプレミアムSUVの割には買い得は高い。

GとZに設定されているレザーパッケージ車は、前後シートがフルレザー仕様となり、上質なキャビン空間の雰囲気がさらに高まる。30万円高となるが、価格アップに見合った価値を感じられるユーザーも多いはずだ。

ハリアーらしい個性は 新型にもしっかりと継承
いい意味でハリアーらしさを上手に継承。ただ、SUV踏破性で重要なアプローチアングルを減少させる長いフロントオーバーハングは少々気になる。悪路重視のRAV4との棲み分けを考えれば納得できるが、RAV4に比べると100mm以上も長い。一方、後席頭上空間や荷室容量を確保した上で、ファストバック風に見せたキャビン周りの工夫の効かせたデザインはなかなか巧みに感じる。実用性とスペシャリティを巧く融合している。
キープコンセプト路線ながら、リヤセクションを絞り込むクーペスタイルを追求することで、新型らしさも上手にアピール。ちなみにハイブリッド車とガソリン車の外観上の違いはバッチ程度だ。
開口部を広めに取ることで力強さを主張するフロントマスクを実現。リヤも横一文字に光るテールライトを採用し存在感を強調する。メリハリの効いた表現もアピールポイントのひとつ。

デザイン優先の弊害は 予想よりもかなり少ない
サイドウインドウグラフィックをクーペ風にデザインしているためか、後席の視角的圧迫感は強め。前方への視線も前下がりで見晴らしは今ひとつ。RAV4との違いを意識させられる。ただ、後席の居住性そのものは良好であり、荷室容量もミドルSUVらしい余裕がある。荷室は汚れ物を嫌う上級ワゴン的な仕立てだが、常載品の整理がしやすい床下収納スペースが設けられているため、ある程度までのレジャー用途ならば問題ない。

加飾パネルやパイピング処理などに加えて、GとZの前後シートはハーフレザータイプを採用。フルレザーシートのレザーパッケージを選ばなくても、ハリアーらしさは楽しめる。

RAV4の荷室に比べると開口部まわりが少々手狭に感じるが、容量的にはミドルSUVの平均レベルは凌駕している。床面は防汚仕様ではないが、実用性に関して見劣りする部分は少ない。

最新トヨタセーフティセンスは 全グレードに標準装着
最新仕様のトヨタセーフティセンスの採用や、ディスプレイオーディオ(SDナビ)の標準化など、機能装備の充実ぶりも新型ハリアーの特徴。これなら無暗にOP費用が嵩むことも少ないだろう。ただし、グレード間による細かな利便系装備の装着設定の違いは悩ましい部分も多い。典型的なのはパワーシートの設定。G以上のグレードに装着されるが、メモリー機能はレザーパッケージ仕様に限定されてしまうのが気になる。
12.3インチ大型モニター+SDナビはZ系に標準装備。G系はOPで8インチDAから変更できるが、OP価格は36万9600円と追加費用がかなり嵩むので注意が必要だ。
ガラス自体に調光・透過機能を持たせた調光パノラマルーフは、最上位のZ系のみ選べるOP装備。OP価格は19万8000円と高めだが、ハリアーのみに設定された最新装備になる。
車両後方のカメラ映像をミラー内に画像表示できるデジタルインナーミラーはZ系とG系に標準装備。前後方録画機能も備える最新仕様が新型ハリアーには用意されている。
トヨタセーフティセンスの最新仕様が標準装備となるほか、従来型では未設定のブラインドスポットモニターも選べる。Z系は標準装備、G系とSはOP(6万8200円)で装着可能。


ハイブリッド車はもちろんガソリン車も実力は申し分なし
性能面で不満があるとすればガソリン車の全開加速時の速さくらいだが、そこまで求めるシーンはあまりないので、速さにこだわるユーザー以外は気にしなくてもいい。むしろ、ファントゥドライブ志向のスポーツ派にとって、新型の走りが合うかどうか。穏やかさと寛ぎを軸とした走りは、手応えや切れ味を求めるユーザーには物足りなさそう。走りにスポーツ性を求めるならば、ダートランナー的な走りのRAV4と乗り比べる選択も。

ハイブリッド車もガソリン車も、高速走行は得意。ただし刺激を求めるスポーティさというよりも、高速長距離を快適に走れるツアラー的な魅力に富んでいる。

新型はハイブリッド車にもFF駆動を選べるため、ガソリン車との価格差が大きく縮まったことも見逃せない。予算に余裕があるならばハイブリッド車の方が満足度は高いだろう。
新型ハリアーの○と×最終結論

武器は仕立ての良さのみにあらず 1ランク上の走りも選ぶ理由になる
RAV4の実力からして基本プラットフォームとパワートレーンを共用するハリアーにも期待していたが、予想以上の出来栄えだった。
内外装の仕立ての良さは期待どおりだったが、それ以上にインパクトを感じたのが走りの仕上がり。特に良質なツーリング性能には驚いた。オンロード志向のSUVは、硬く忙しい乗り心地のハードサスでスポーツ性を演出するのが定番だが、ハリアーは適度な緩さを持たせたフットワークで寛げる走行感覚を示す。RAV4とも違った穏やかで懐深い走りは、上質感を一層高めてくれる。ハイブリッド車、ガソリン車のいずれを選んでも満足度は高いはずだ。
オススメグレードは2つ!
Z “Leather Package” (2WD)ガソリン車
コスパとプレミアム性を求めた選択。Gレザーパッケージとの価格差は50万円を超えるが、高価な12.3インチモニター&SDナビをOP装備で選んだ場合を考えると、Zを選ぶ意味はある。さらに調光パノラマルーフの選択も可能だ。
G(4WD)ハイブリット車
走りのプレミアム感とドライブの楽しみを優先するならハイブリッドの4WD車がベスト。予算に余裕があればZ系が魅力的だが、G系でもハリアーらしい雰囲気は十分楽しめる。ロングドライブが多いユーザーにオススメだ。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久