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更新日:2020.06.10 / 掲載日:2018.09.28

MITSUBISHI 新型アウトランダーPHEV 公道試乗

クローズドコースでのプロトタイプ試乗をお伝えしたアウトランダーPHEV。今回は市販版を公道市場する機会を得た。改良前モデルからの進化をしっかりとお伝えしよう。
●文:川島 茂夫 ●写真:奥隅 圭之/澤田 和久

icon MITSUBISHI アウトランダーPHEV Gプレミアムパッケージ

●車両本体価格:479万3040円

よりEV感覚を高めた走りに進化している

御殿場市付近にて新しいPHEVの乗り味をチェック。市街地から郊外路、山岳路に高速道路と様々なシチュエーションにおいてその出来栄えを確認できた。

 内外装もプレミアム感を高めるべく変更が加えられているが、見所は走行ハードウェアの更新である。中でも最も注目すべきはパワートレーンの変更だ。アウトランダーPHEVは高速巡航用にエンジン直動機構を備えたシリーズハイブリッドを採用するが、主として発電機として用いられるエンジンを2.0Lからアトキンソンサイクルの2.4Lに変更した。大排気量化はエンジン直動領域の拡大を思わせるが、実際は電動領域の拡大が主眼である。発電制御を全域で見直し、低回転域の効率的な発電と静粛性の向上を図った。
 電動系はバッテリー容量を15%増、モーター出力を約17%増とし、EV走行距離の延伸と動力性能を向上させている。興味深いのはハイブリッド燃費で、JC08モードは従来車より0.6km/L低下。実燃費志向という側面もあるが、EV感覚を高めた走りの志向の変化も影響している。
 もうひとつの改良の見所はS-AWCの性能向上だ。従来の制御に加えて「スポーツモード」と「スノーモード」を設定。スポーツモードでは加速応答性を向上させるだけでなく、各輪のトルク配分を積極的に制御し、ライントレース性が向上する。スノーモードは氷雪路での駆動性と運転のしやすさを優先した制御となる。また、ボディの構造用接着剤塗布部位の拡大やダンパーの改良など車体本体への改良も加えられ、快適性も含めた走行性能全体のブラッシュアップが図られている。

【レベルアップ!】2モードを追加した車両運動統合制御システムS-AWC(SUPER ALL WHEEL CONTROL)

モーターと相性のいいシステムをさらに改良

新たに追加された「スノーモード」と「スポーツモード」。スノーは安定性とコントロール性を高め、スポーツはアクセルレスポンスと旋回性を高めてくれる。

 日本語表記がS-AWCの内容を端的に表している。曰く「車両運動統合制御システム」である。加減速やコーナリング、滑りやすい路面などの様々な状況でも各輪のトルク配分を最適に制御することで安定した走行を実現するのが目的である。前後独立した電動駆動系で構成するアウトランダーPHEVはトルクの精密制御が可能なモーターと相まってS-AWCとの相性に優れている。新型では「スポーツ」と「スノー」の2モードを追加。オンロードでも雪道でも操縦性の変化が少なく、山岳路や雪道に不慣れなドライバーでも安心の走行特性を実現。

【レベルアップ!】約9割のコンポーネントを改良、PHEVシステム

2.0Lから2.4Lへ変更、モーターを強化

バッテリー容量やモーターだけでなく、ジェネレーター出力も約10%アップ、EV走行の航続距離は60.8km(一部は60.2km)から65.0kmに拡大(JC08モード)。

 アウトランダーの車格に2.0Lは排気量不足だが、その分ポンピングロスの少ない大スロットル開度で稼働できる。発電機としてジャストだが運用の柔軟性が低く騒音も大きくなりやすい。そこで熱効率のいいアトキンソンサイクルの2.4Lに変更。発電効率を向上させると共にエンジン稼働時の静粛性を改善。同時にバッテリー容量は12kWhから13.8kWhへ、後輪駆動モーターを60kWから70kWへ強化して電動走行領域を拡大。元々レンジエクステンダー的な性格が強かったが、この改良でハイブリッド感を薄めてさらにEV感覚を強めている。

近未来志向のプレミアムカーとして選ぶのもアリ

 電動の加速特性は「造る」ものである。例えば停止からいきなり全開にした時に、タイムラグがほとんどないモーターは唐突に加速が立ち上がってしまう。そのためEVやハイブリッドではモーターのトルク変化を穏やかにする制御が一般的。だからといって鈍くしすぎても扱いにくい。アウトランダーPHEVは電動の力強さと滑らかな加速感の両立が巧みだ。動き出しは滑らかで、その後ぐいぐいと加速していくのだ。
 アクセルを深く踏み込むと蓄電量が十分であってもシリーズハイブリッドに移行する。この移行する踏み込み量は新旧の違いのひとつだ。以前は踏み代をけっこう残してハイブリッド走行となったが、新型は全開近い。感覚的には八分目以上踏み込んでいる。加速は踏み込み量に応じているので、EV走行の動力性能が向上したわけだ。
 十分な蓄電量がある時は100km/h以下の高速巡航では直動機構は作動しない。高速巡航は電動車の泣き所のひとつであり、それをカバーするための直動を使わないのはちょっと不思議だが、蓄電量が確保されている間は「EV」というのが制御の基本。120km/h以上の領域では直動機構が作動するが、少なくとも遵法走行ならEV走行が維持される。
 ただし、蓄電量を維持するセーブモードを選択すれば十分な蓄電量があっても直動走行に入る。直動時はパラレルハイブリッドとして振る舞い、負荷が小さければ充電、大きければバッテリー電力で電動アシストを行う。釣り合えば電動系はお休みである。
 これも新旧でちょっと様子が異なる。同じように走らせても新型のほうが充電時間が長く、電動アシストは少ない。ここに減速での回生発電が加わり、一定上の蓄電量になればセーブモードでもEV走行に移る。
 低中速域のシリーズハイブリッド走行ではエンジン回転数が低く、回転変化が少なくなっていた。2.4Lのゆとりだろうが、同時にエンジンの存在感が薄れる。静粛性でEV走行とのギャップが減少している。ロードノイズが騒音の主であり、ハイブリッド走行でもEV的になっている。
 新型は細かな振動が減少し、ストローク制御のしなやかさが高まったため乗り心地も向上していた。元々アウトランダーよりも重質な乗り味を持っていたが、洗練感が加わり、優れた静粛性と相まって走り全体のプレミアム感も高まった。SUVに対するイメージや適応用途を別にしても、この走りの質感と快適性ならば近未来志向のプレミアムカーとして選択してもいいだろう。

  • 比較すると改良によりハイブリッド感が薄まり、より「EV」のようなフィーリングに進化した。

    【改良前モデル】

  • ボディパネルに構造用接着剤を塗布(Sエディションは塗布範囲拡大)しボディ剛性もアップ。

    【最新モデル】

その他の注目改良ポイント

  • 出力状況が分かるようにパワーメーターの表示を変更。「もうすぐエンジンがかかるからアクセルを緩めよう」などの判断がより簡単に。

  • 衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)と誤発進抑制機能(前進/後退)を全車に標準装備として安全性を向上、「サポカーSワイド」に該当。

  • 前席のサイド形状を変更、サポート部に異なる硬さのクッションを使用しホールド性を向上。上級グレードはダイヤキルティング本革などでさらに室内の質感を高めた。

  • 普通/急速充電中、オーディオなどの電子機器に加えて、エアコンの使用も新たに可能となった。充電中の車内快適性が大幅に向上。

  • 後席用エアコン吹き出し口をフロアコンソール後部へ追加、快適性を高めた。また運転席に全窓のワンタッチオート開閉機能を採用、挟まれ防止機能も追加。

PHVライバル対決!国産3強を評価

続いてはアウトランダーPHEVと、今市販されている国産プラグインハイブリッドを比較。汎用性、コスパなどで評価した。今買いの1台はどれだ!?

icon MITSUBISHI アウトランダーPHEV

  • 3車中唯一のSUV。i-MiEVのEV、ランサーエボリューションの4WD、パジェロのSUV技術を投入したというミツビシ入魂の1台。

  • 車両本体価格:393万9840~509万40円
    充電対応:普通/急速
    ハイブリッド燃料消費率:18.6km/L
    EV走行換算距離:65.0km
    充電電力使用時走行距離:65.0km
    電力量消費率:5.55km/kWh
    ※ハイブリッド燃料消費率から下はすべてJC08モード。

icon TOYOTA プリウスPHV

  • プリウスのハイブリッドシステムをベースとした2代目プリウスPHV。EV走行に使えるソーラー発電を一部グレードに用意している。

  • 車両本体価格:326万1600~422万2800円
    充電対応:普通/急速★/ソーラー☆
    ハイブリッド燃料消費率:30.8~37.2km/L
    EV走行換算距離:55.2~68.2km
    充電電力使用時走行距離:55.2~68.2km
    電力量消費率:8.65~10.54km/kWh
    ※ハイブリッド燃料消費率から下はすべてJC08モード。
    ★:Sのみメーカーオプション(7万5600円)。
    ☆:S系にメーカーオプション(28万800円)。

icon HONDA クラリティPHEV

  • i-MMDをベースとしつつ、プラグインハイブリッド用に最適化。車両価格は高めだが、EV走行距離では他2車を圧倒している。

  • 車両本体価格:588万600円
    充電対応:普通/急速
    ハイブリッド燃料消費率:28.0km/L
    EV走行換算距離:114.6km
    充電電力使用時走行距離:114.6km
    電力量消費率:7.67km/kWh
    ※ハイブリッド燃料消費率から下はすべてJC08モード。

クルマとしてのバランスを考えるとアウトランダー

 プリウスのみ「PHV(プラグインハイブリッド)」、アウトランダーとクラリティは「PHEV(プラグインハイブリッド&EV)」となるが、ハイブリッド車に外部充電機構と大容量バッテリーを搭載し、EVとして使えるようにしたモデルという点では同じである。ちなみに3車とも急速充電に対応している。
 ただ、電動純度は異なる。アウトランダーとクラリティはともに巡航用直動機構付きシリーズハイブリッドを採用。つまり、駆動系はEVにほぼ等しいわけだ。一方、プリウスはシリーズ/パラレルの両方の特徴を備えたスプリットタイプで、電動純度はシリーズ2車より低め。
 設計や味付けによる部分も大きいが、走らせても同様の印象だ。プリウスはハイブリッドが基本であり、電動系の負担は少なく制御される。蓄電量に余裕があれば一般走行くらいはEV走行を維持する。しかし、高速域や急加速では他の2車よりも早くにハイブリッド走行に移行してしまう。
 直動付きシリーズの2車はEV走行域が広い。というか電動駆動が基本であり、直動は高速巡航時の燃費稼ぎの時に限定。高速でも急加速ではシリーズ走行に移り、すべての動力性能を賄える容量が電動系に与えられている。
 ともにレンジエクステンダーEV的なハイブリッド車だが、EV純度ではクラリティが一枚上だ。
 搭載する駆動用バッテリー容量は17kWhであり、満充電のEV走行距離は114.6km(JC08モード)にもなる。さらに搭載エンジンは発電と巡航に割り切った1.5L。燃料タンク容量は26Lでしかない。電動技術の市販テストベッド的な性格のクラリティならではという印象もあるが、あと一歩でレンジエクステンダーEVというところまで来ている。
 EV走行時の動力性能もクラリティが最も優れ、アウトランダーと比較するとやや瞬発力を誇張した印象もあるが、それはそのまま力強さに繋がる。また、エンジン稼働時のエンジン騒音も極めて小さく、EVとシリーズ走行のギャップも少なく走れる。
 ただし、ハイブリッド走行に移行してからのエンジンの稼働頻度は高い。動力性能に直接影響するためか、最小蓄電量の管理はアウトランダーよりも厳しく、定期的に発電してるような感じである。
 使い方によって評価も異なるが、外部充電なしでもメリットが多いプリウスはハイブリッド的であり、電動走行基準のクラリティはEV的。その中間がアウトランダー。キャビンスペースの使い勝手も含めれば、アウトランダーがウェルバランスと言えよう。

輸入PHVならコレがおすすめ!

  • MINI クーパーSE ALL4

    車両本体価格:498万円
    充電対応:普通
    ハイブリッド燃料消費率:17.3km/L
    充電電力使用時走行距離:42.4km
    ※ハイブリッド燃料消費率から下はすべてJC08モード。

    電動系は後輪を担当し、内燃機系が担当する前輪とでハイブリッドと4WDを成立させているのが特徴。PHV/PHEVとしては物足りなさを感じるがミニの個性も楽しめるのが魅力だ。

  • BMW i3 レンジ・エクステンダー装着車

    車両本体価格:587万~644万円
    充電対応:普通/急速
    ハイブリッド燃料消費率:24.7km/L
    充電電力使用時走行距離:288.9km
    ※ハイブリッド燃料消費率から下はすべてJC08モード。

    レンジエクステンダーそのものといった存在で、充電した電力で走るのが基本。発電機搭載で航続距離の不安も少なくなり、EVを存分に堪能できる。カーボンモノコックなど構造も斬新だ。

国産PHV3強おすすめグレード

  • MITSUBISHI アウトランダーPHEV
    G プラスパッケージ


    上級仕様は高級感を高める演出やスポーティな専用サスを採用したモデル。基本性能とプレミアムSUVに相応の装備でまとめるならナビ標準のGプラスパッケージが買い得。

    ■主要諸元(G プラスパッケージ)
    ●全長×全幅×全高:4695×1800×1710mm
    ●車両重量:1890kg
    ●パワートレーン:2359cc直4DOHC(128PS/20.3kg・m)+(モーター:前:60kW/137N・m、後:70kW/195N・m)
    ●燃料タンク容量:45L[レギュラー]
    ●最小回転半径:5.3m
    ●最低地上高:190mm

  • TOYOTA プリウスPHV
    A ユーティリティプラス(特別仕様車)


    ACCは全車に標準装着されるがBSMが装備されるのはA以上。このAをベースにETC2.0ユニットやAC100V/1500Wコンセントを装着した特別仕様が狙い目だ。

    ■主要諸元(A ユーティリティプラス【特別仕様車】)
    ●全長×全幅×全高:4645×1760×1470mm
    ●車両重量:1530kg
    ●パワートレーン:1797cc直4DOHC(98PS/14.5kg・m)+モーター(1NM:53kW/163N・m、1SM:23kW/40N・m)
    ●燃料タンク容量:43L[レギュラー]
    ●最小回転半径:5.1m
    ●最低地上高:130mm

  • HONDA クラリティPHEV EX

    1グレード展開で装備も1仕様のみだが、全車速型ACCを含むホンダセンシングやナビ、前席パワーシート、本革コンビシートなどプレミアムセダンらしい装備が揃っている。

    ■主要諸元(EX)
    ●全長×全幅×全高:4915×1875×1480mm
    ●車両重量:1850kg
    ●パワートレーン:1496cc直4DOHC(105PS/13.7kg・m)+モーター(135kW/315N・m)
    ●燃料タンク容量:26L[レギュラー]
    ●最小回転半径:5.7m
    ●最低地上高:135mm

国産PHV3強を○×評価

※評価は×、△、○、◎の4段階。PHVレベルは充電電力使用時走行距離、充電系装備やインターフェイスなど「PHVとしての出来栄え」、完成度は「クルマ自体としての出来栄え」、汎用性は居住空間、荷室、ポケッテリアなどを加味した「使い道の広さ」、走りは質感、操安性などを含めた「走りの良さ」、コスパは「高すぎず」「価格に見合った価値があるか」を表す。

提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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