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更新日:2019.06.10 / 掲載日:2018.06.07

鮮やかにアップロードされた新しい「Gクラス」

文●内田俊一 写真●川崎泰輝

 メルセデス・ベンツの「Gクラス」で、フルモデルチェンジといっていいくらいの大幅改良が行われ、日本でも受注が開始された。この新型Gクラスの型式は「463」で、これを聞いておやっと思われた方は、Gクラス通といっていいだろう。そう、旧型Gクラスと同じ型式なのだ。

オンロード・オフロードとも性能向上

  • メルセデス・ベンツ G550

  • メルセデスAMG G63

 Gクラスといえば、タフなオフロード性能に注目が集まるだろうから、まずはそこから見ていこう。Gクラスではずっと継承されてきたラダーフレームが新型では新設計となった。最大3.4mm厚のスチール鋼板を「ロ」の字型にした鋼材から制作し、MAG溶接技術で組み立てることで、悪路走行時に求められる強度、剛性、安全性を高めたのだ。 また専用サスペンションも、Gクラス開発チームとメルセデスAMGとで新開発。フロントのダブルウィッシュボーン独立懸架サスペンションと、リヤのリジッドアクスルが組み合わされた。フロントのダブルウィッシュボーンサスペンションのコンポーネントはいずれも、サブフレームなしでラダーフレームに直接取り付けられている。フレーム上のロアウィッシュボーン取り付け点は、走破性向上のため高い位置に設定。さらに、フロントのディファレンシャルギアに対して270mmの地上高を確保し、オフロード性能の向上に貢献しているという。その結果、以下のように悪路走破性が向上した。

・登坂能力:適切な路面で最大100%
・前後アクスル間最低地上高:24.1cm(従来比+6mm)
・最大渡河水深:水中・泥中走行時70cm(従来比+10cm以上)
・安定傾斜角度:35°(従来比+7°)
・デパーチャーアングル:30°(従来比+1°)
・アプローチアングル:31°(従来比+1°)
・ランプブレークオーバーアングル:26°(従来比+1°)

 また、独立懸架サスペンションの採用により、ボディフロントエンドの剛性を高めることが可能となった。さらに、サスペンションブリッジと呼ばれるストラットタワーブレースによりフロントストラットタワーを接続することで、ラダーフレームのねじり剛性を高め、リヤサスペンションは、トレーリングアーム左右各4本とパナールロッド1本を備えた新型リジッドアクスルを採用。これにより、オンロード走行の快適性がさらに向上するとともに、オフロードでの走破性能の向上にも寄与している。つまり、新型Gクラスはオフのみならず、オンロードでの走行性能向上にも注力しているのだ。

運転支援システムも充実

 新型Gクラスもこれまでと同様、ダイナミックセレクトによって路面や走行状況に応じてドライブモードを切り替えることが可能だ。これは、エンジンやトランスミッション、サスペンション、ステアリング、運転支援システムの特性によって、「コンフォート」、「スポーツ」、「エコ」、「インディビジュアル」の4つのモードが選べるほか、今回新たに「Gモード」が選可能となった。このGモードは、3つのディファレンシャルロックのいずれかを作動させる、または通常より2倍以上の駆動力を発揮するオフロード用低速ギアのLOW RANGEを選択した場合に有効になるもので、シャーシの調整式ダンパーとステアリング、アクセル特性を変更することで、不要なギアシフトを回避し、最適なコントロールと最大限の悪路走破性を確保するものだ。

 またステアリングも従来のボール&ナット形式から電動機械式ラック&ピニオン式のステアリングへ変更され、ドライビングフィーリングが大幅に改良された。上記ドライブモードでのステアリング特性が切り替えられるのと同時に、電動機械式に切り替わったので、パーキングアシストやアクティブレーンキーピングアシストなどの運転支援システムを搭載することが可能となった。

 今回のGクラス改良において、最も変化したのは安全運転支援システムの導入だ。車間距離を適切に維持するとともに、先行車が停止した場合は減速して停止する渋滞追従機能を備えた「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」、ドアミラーの死角範囲をレーダーによってモニターして危険性を警告するリヤブラインドスポットアシスト」や衝突回避をサポートする「アクティブブレーキアシスト(歩行者検知機能付)」、衝突時の乗員へのダメージを最低限に抑える「プレセーフ」、一般道や高速道路の制限速度を表示する「トラフィックサインアシスト」などを含めたレーダーセーフティパッケージを標準装備。

 また、夜間の安全なドライブをサポートするマルチビームLEDヘッドライトも採用された。これは、片側84個のハイパフォーマンスLEDを瞬時に個別に制御することで、前走車などのドライバーを眩惑せずに、より広い範囲を明るく正確に照射し続けるシステムだ。また、安全性に加え、大型化したGクラスの利便性を向上する装備として、車両周囲の状況をモニターする「360°カメラシステム」、自動操舵・ブレーキ機能により縦列駐車と車庫入れをアシストする「アクティブパーキングアシスト」も標準装備となった。

3つ以外は新設計のエクステリア

登壇して、モデルの詳細な説明をするダイムラー社 商品企画責任者 ミヒャエル・ベルンハルト氏。

 これまでのGクラスの面影を大きく残しながら、3つ以外はすべて刷新されたエクステリア。その3つとは、ドアハンドル、リヤのスペアタイヤカバー、そして、ヘッドライトウォッシャーだ。特徴的なアイコンとなるフェンダーのウインカーなどは残しながら大きく変更されているのだ。

 まず、そのウインカーは突起物なので、歩行者保護の観点から採用は見合されていた。しかし、Gクラスのアイコンとして非常に重要とのことから、新型では衝撃が加わると、内側に落ち込むように新設計されての採用となった。また、フラットなウインドウまわりも、リヤウインドウを除いて曲面ガラスを採用。これにより、空気抵抗の低減を図っている。

 また、新デザインのフロントラジエターグリルやバンパー、丸形のLEDヘッドライト/LEDリヤコンビネーションランプを採用し、一目でGクラスと分からせながらも、最新のメルセデスデザインによって大幅にアップデートされたのだ。

 今回の改良により、ボディサイズは、従来モデルと比べ、全長が4817mm(+53mm)、全幅が1931mm(+64mm)とサイズアップ。同時に室内空間も拡大。特にリヤのレッグルームは 150mm拡大している。

エクステリアの印象をインテリアにも

 そのインテリアは他の最新のメルセデス同様のデザインが取り入れられた。まず特徴的なインパネ周りは、2つの12.3インチの高精細ワイドディスプレイを1枚のガラスカバーで覆うことで、視覚的に融合したワイドスクリーンを採用。左右のエアアウトレットはGクラスの丸型ヘッドランプを、その上のスピーカーはウインカーを意識してデザインされ、Gクラスに乗っているという印象をドライバーに与えている。

 また、豊富なインテリアカラーにより、ラグジュアリーさも強調している。

 助手席前方のグラブハンドルや、3つのディファレンシャルロックを操作するクローム仕上げのスイッチなどは、今回の改良においても、Gクラスならではのインテリアパーツとして継承された。

2つのモデルを導入

 日本に導入されるモデルは今のところ2つ、G550とメルセデスAMG G63のみだ。G550は、4L V8気筒直噴ツインターボエンジンをベースに開発されたM176型エンジンを搭載。最高出力422PS、最大トルク610Nmを発揮し、気筒休止システムを採用している。 G63はメルセデスAMGが完全自社開発した、最高出力585PS(従来型比+14PS)、最大トルク850Nm(先代比+90Nm)を発揮するAMG 4L V8直噴ツインターボエンジンM177型が搭載される。2基のターボチャージャーはV型シリンダーバンクの外側ではなく内側に配置する「ホットインサイドV」レイアウトとし、エンジンを可能な限りコンパクトにするとともに、ターボチャージャーへの吸排気経路を最適化することで、優れたレスポンスを実現。また、メルセデスAMG G 63専用装備として、圧倒的なパフォーマンスに対応するAMG強化ブレーキ、コーナリング時やブレーキング時には、硬いスプリングレートに瞬時に切り替えることで、高い安定性と思いのままの俊敏なハンドリングを実現する「AMG RIDE CONTROLスポーツサスペンション」を採用している。

463継承の理由

 さて、冒頭の「463」についてだ。ここまで変更しているにもかかわらず、なぜ型式は共通なのか。ダイムラー社商品企画責任者 ミヒャエル・ベルンハルト氏は次のように回答した。「同じ463型として提供することによって、全く新しいモデルではなく、昔からのヘリテージを踏襲しているということをまず示したかったのです」と継続性を強調。そしてもうひとつの理由として、「正直に明かしますが、このクルマを全く新しいGクラスとしてデビューさせると、ユーザーや市場がどう反応するかが心配だったのです。今更なぜGクラスを新しくするのかという反応があったらどうしようということが実は怖かったのです」と打ち明ける。しかし、「いったんこの新型Gクラスを見てもらうと、中身は大きく変わりながらも、外見は以前のGクラスとあまり変わらないので、その話題でもちきりなったので安心しました」とほっと胸をなでおろしたようだ。

従来モデルも併売

  • 挨拶をする、メルセデス・ベンツ日本代表取締役社長 上野金太郎氏。

 メルセデス・ベンツ日本代表取締役社長の上野金太郎氏は、Gクラスについて、「1979年の販売開始以来、お客様に好評をいただいている特徴的なスクエアなスタイリングと、高いオフロード性能を維持し続けたまま、時代の要求に合わせて絶え間ない改良を施しながら全世界で述べ30万台以上を販売しています」と紹介。そして、「元々が国境警備などで使用されるゲレンデヴァーゲンを乗用車に改良したというルーツを持ち、1980年にはローマ法王専用車に採用され、また2014年には6輪車のG63AMG 6×6を販売するなど大変ユニークな歴史を持っているクルマでもあります」という。

 また、「日本においても多くのご愛顧いただいておりGクラスファンの多い市場です」と述べ、当面は新型と並行し従来型も併売するとした。これは、「新型と39年前に誕生したゲレンデヴァーゲンの面影を色濃く残す従来型とは、良し悪しではなくテイストの違いだと考えた結果で、お客様がGクラスに求めるイメージに沿うモデルを選んでもらうことを可能にしたいと考えたためです」と語った。

オフロード体験イベントを開催

 メルセデスミー東京に併設のイベント型ブランド体験施設、nextdoorでは、新型Gクラスの発表に合わせてオフロード体験イベント、Gクラスエクスペリエンスを6月7日から24日まで期間限定で開催する。最大傾斜約45°のアーチ状のコースを走るブリッジや、凸凹の路面を走るモーグル&バンク。そして最高地点約9mの坂を駆け上がるマウンテンクライムの3つのアイテムが用意され、「新型Gクラスの性能を、都心で気軽に体験出来る、またとない機会です」と上野氏。

 また、7月14日から16日の3日間はメルセデスミー大阪にあるグランフロント大阪にて同様のイベントを実施する予定であるという。

 メルセデスの持つ最新の技術によって、鮮やかにアップロードされた新しい「Gクラス」。8月下旬以降の納車が予定されている。



販売価格 :G550 1562万円(左ハンドル)/メルセデスAMG G 63 2035万円(左/右ハンドル)

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グーネットマガジン編集部

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