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更新日:2018.11.24 / 掲載日:2018.04.26
TOYOTA新型RAV4詳細リポート
●文:山本シンヤ

今年のニューヨークモーターショーで発表された次期型RAV4は、どうやら久々に日本市場にも投入されるようだ。導入は来年春と先の話だが、トヨタの新世代を占うモデルゆえに、その実力はかなり気になる。現時点で判明しているその詳細をすべてお届けしよう。
TOYOTA RAV4
主要諸元(北米仕様車の数値)
●全長×全幅×全高(mm):4595×1855×1700●ホイールベース(mm):2690●パワートレーン:2.5L直4DOHC、2.5L直4DOHC+モーター ●トランスミッション:8速AT(ガソリン車)/ 電気式CVT(ハイブリッド車)●駆動方式:FF/4WD

世界初披露となった新型RAV4は、TNGAの思想がふんだんに盛り込まれたこの先のトヨタ車の流れを占う使命も与えられた。グローバル市場で圧倒的な人気を持つことも手伝い、最新型への注目は際立って高い。
デザインテーマは原点回帰力強さを巧みに表現
昨今、世界的なブームが続くクロスオーバーSUVだが、実はトヨタがその先駆けの存在であった。1994年に登場した「RAV4」は「乗用車の乗りやすさ」と「SUVの安心感」を両立したモデルとして登場。キムタクのテレビCMも相まって高い人気を獲得し、ライバルメーカーからも似たようなモデルが次々と登場した。
しかし、2代目と3代目は海外市場がメインの商品展開となったことで、国内販売は低迷。実は海外では2013年に4代目へと進化したのだが、日本仕様はなぜか3代目のまま、2016年まで生産が行なわれ、C‐HRの登場に合わせてヒッソリと姿を消している。
その一方、海外向けは北米や欧州、アジアともに絶好調で、特に北米ではベストセラーのカムリを超える販売台数を記録するなど、着実にトヨタのエースへと成長している。
そんなRAV4が5代目へと進化し、デザインやメカニズムは全面刷新が行なわれた。開発責任者の佐伯禎一氏は、「昨今、クロスオーバーSUVが当たり前になっていますが、その先駆者として改めて『SUVとは何なのか?』と考え直しました。その答えはSUV本来の『力強さ』、『頼れる相棒』で、それを再定義したのが5代目になります。RAV4は来年25周年を迎えますが、次の25年に向けてのスタートです」と語る。
エクステリアはC‐HRに似たマスクでスポーティなイメージの強かった4代目モデルに対して、昨年のニューヨークショーでお披露目されたコンセプトカー「FT‐4X」のイメージや、北米専売のタコマ&4ランナーに似た『SUVらしさ』を強調したデザインに変更された。写真を見るとボリューム感があり大柄なサイズに見えるが、実際はさほど変わっていない。
トヨタ車初のフルTNGAモデルハイブリッド車&ガソリン車を設定


新型のスタイリングは、2017年に発表されたコンセプトモデル「FT-4X」をモチーフに、トヨタSUVが育んだエッセンスが融合したデザインを採用。
ガソリン車のパワートレーンは、2.5L直噴のDynamicForceEngine+DirectShift-8ATの組み合わせ。共にトヨタ最新が注がれる。
ガソリン車はダイナミックトルクベクタリングAWD(左)、ハイブリッド車は新型E-Four(右)と、最新のAWDシステムが搭載される。

新型RAV4には、TNGAの思想が盛り込まれたGA-Kプラットフォームを投入。車格的にはカムリクラスとなり、それに見合うよう全体的なパフォーマンスアップが図られていることが予想できる。

機能性に加えて質感も向上最新デジタルデバイスも用意される
居住性と積載性が向上質感向上も見逃せない
インテリアは水平基調のインパネと骨太なセンターコンソール、多角形のモチーフや硬質素材/ソフトパッドの上手な使い分けで、SUVらしい機能性を演出しながら質感も高まった。ホイールベースの拡大による居住性と積載性の向上はもちろん、視認性や機能性もレベルアップしている。
グレードは3タイプで高級な「リミテッド」、スポーティな「XSE」、そして更にSUVテイストを強調させた「アドベンチャー」を設定している。
メカニズムは基本コンポーネントをカローラと共用していた4代目モデルに対して、新型はカムリと共用する。パワートレーンはガソリンとハイブリッドを設定。ガソリンは2・5L直噴と8速AT、ハイブリッドは2・5L直噴+モーターの組合せだが、特にハイブリッドは燃費よりもファンドライブに振ったセットという。
TNGA技術の投入で全てが大きく進化した
プラットフォームはTNGAの思想が盛り込まれたGA‐KプラットフォームをSUV用に最適化。注目はAWDシステムで、ガソリンの上級モデルには前後の駆動力配分に加えて、後輪の左右駆動力配分も最適制御する「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を採用。ハイブリッドも後輪の最大トルクを1・3倍に増加させた「新型E‐Four」が採用されるなど、基本性能の底上げはもちろん、ドライバーが狙った所にスーッとクルマが向かう、素直なハンドリングに仕上がっているそうだ。
先進安全デバイスも抜かりはなく、検知能力がアップした「プリクラッシュブレーキ」や「レーダークルーズコントロール」、「レーントレーシングアシスト」などの機能を持つ「第2世代トヨタセーフティセンス」を全車に標準装備。
北米では2018年末(ハイブリッドは2019年初)から販売がスタートされるが、2019年春頃に日本へ再導入も行なわれる。3年ぶりの復活となるが、市場にどのように受け入れられるか、気になるところである。
車格が向上したこともあり、キャビンスペースも拡大。アップライトのシート位置が生み出す視界の良さも見所とされる。
北米仕様車はマルチメディアシステム「Entune3.0Audio」を標準搭載。ソフトパッドを巧みに配置するなど、内装仕立ての向上も図られた。
メーター部の中央にはインフォメーション表示部を配置。スマートフォン対応の強化や第二世代のトヨタセーフティセンスの採用もトピック。
カムリベースに車格が上がった恩恵は荷室を中心としたユーティリティにも及ぶ。使い勝手の良さは日本でも重宝されそうだ。
トヨタ同門SUV先取り比較
2019年、春最新技術満載のRAV4の投入でハリアー&C-HRはどうなる?
日本上陸まで1年近くあるとはいえ、新型RAV4の存在は、現在のトヨタSUVにも多大な影響を与えるだろう。新型RAV4はどのカテゴリーに位置するのか?同門の売れ線SUV同士を比較することで、その近未来を占ってみたい。
ランドクルーザープラド
直接のライバルにはならないが車格や価格帯はかなり近い
ランドクルーザー系は本格クロカン4WDの系譜に連なるモデルで、クロスオーバーSUVの新型RAV4とはキャラが異なる。そのため直接のライバルとはならないだろうが、ランドクルーザープラドならば、価格帯や車格感などはかなり近い。ハリアー
日本で独自に発展を遂げたプレミアムSUVの代表モデル
プレミアムSUVは世界的に売れ線が揃うカテゴリーだが、現行型ハリアーはダウンサイジング化され、先代に比べて車格感をダウン。オンロード性能に特化した、日本専売のプレミアムSUVとして、世界戦略車たちとは違った発展を続けているモデルだ。
C-HR
2017年のベストセラーSUVはスタイルも走りもスポーティ
スポーツクーペさながらのスタリングと走りを武器に、大ヒットを飛ばしているC-HR。オフロードは苦手としており、主戦場はオンロード。ハイブリッド車とガソリンターボ車が用意されるが、主力はハイブリッド車だ。ヒエラルキーとしては、トヨタSUVの一番下に位置する。新型RAV4
質実剛健で真面目に進化したトヨタ王道の正統派SUV
プラットフォームがカムリベースとなり、車格は1ランクアップ。サイズ的にはハリアーとほぼ同格のミドルSUVといえるだろう。ただし、こちらはハリアーほどプレミアムを追求しておらず、質感向上を果たしながらも生真面目な仕立て。4WD性能も売りとするなど、正統派のSUVだ。
ボディデザイン&サイズ
最大サイズはハリアーだがパッケージ効率はRAV4が優れる
RAV4は写真で見ると大柄に見えるが、ボディサイズは4代目モデルからさほど変わらず全長4595×全幅1855×全高1700mm、ホイールベースは2690mm。マツダCX-5や日産エクストレイルとほぼ同サイズだ。対してC-HRは全長4360×全幅1795×全高1565mm、ホイールベースは2640mmと1クラスコンパクト。前席優先のパーソナルユースならC-HR、後席や積載性を考えたファミリーユースならRAV4と、違いは明確である。一方、ハリアーは全長4725×全幅1835×全高1690mm、ホイールベースは2660mmとRAV4に近いが、パッケージングの違いで室内の居住性や積載性などは数値以上の差はある。
新型RAV4


ボディのワイド化や19インチタイヤの採用に加えて、最低地上高も高くなった新型のエクステリア。フロント&リヤのオーバーハングも短くなり、4代目モデルに比べると精悍さが際立つデザインに進化している。
ハリアー


全長はRAV4を凌駕するが、その余裕の多くはノーズ部分の長さに当てられる。流麗なボディスタイルの影響も含めて、キャビンを中心とした空間、特に後席はRAV4の方がゆとりある設計だ。
C-HR


リヤエンドが切り下がるデザインは、昨今のSUVが得意としている見せ方だが、中でもC-HRはその傾向が強く、クーペライクなスタイリングが採用されている。キャビンのゆとりも2車に比べると明らかに手狭だ。
パワートレーン&メカニズム
RAV4とC-HRは最新のプラットフォームだがハリアーは一世代前が使われている
C-HRのプラットフォームは新世代のTNGA技術が盛り込まれるが、C-HRはプリウス系と同じ「GA-C」、RAV4はカムリ系と同じ「GA-K」とクラスが異なる。どちらも走りにはかなりこだわっているようだが、RAV4は上級車用を使って余裕の性能を持たせている。パワートレーンはC-HRは1.2Lターボと1.8L+モーターに対して、RAV4は2.5LNAと2.5L+モーター。クラスが根本的に異なるのだ。一方、ハリアーは4代目RAV4の基本コンポーネントを用いて開発された日本専用モデルのため、パワートレーンとプラットフォームは共に旧世代。パフォーマンス的にはちょっと厳しい。
新型RAV4
TNGAシャシーと煮詰められた足まわりが生み出す走りは、パワートレーン系の強化もあって、4代目から劇的に向上していることが予想される。
ガソリン車もハイブリッド車も次世代の2.5Lエンジンがベース。共に熱効率を考慮した設計が見所で、動力性能に加えて燃費性能にも優れることが特徴だ。
ハリアー
昨年のマイナーチェンジで追加されたターボ車は、低速域からしっかりとしたトルクと反応を楽しませてくれるスポーティなキャラを持つ。
ガソリンは2LのNAと直噴ターボ、ハイブリッドは2.5L+モーターという設定。ターボはレクサス直系の最新直噴ターボだが、ハイブリッドのシステムはRAV4と比べると一世代前のもの。
C-HR
ニュルブルクリンクで徹底的に走りこまれた足の良さは、C-HRの大きな強み。ターボ車はもちろん、ハイブリッド車でもその楽しさを体感できる。
RAV4と同様にTNGAシャシーが採用されているが、こちらはプリウスベースのものとなり、設計面のゆとりなどはRAV4に一歩譲る格好だ。
装備
快適装備に少々の差はあるが基本的にはどれもレベルは高い
どのモデルも必要十分な装備アイテムは採用されているが、ハリアーはプレミアムSUVを謳うだけあり、内装の仕立ての良さやドアミラー足元照明、室内イルミネーション、シートベンチレーション、JBLオーディオなども用意されている。先進安全装備は、RAV4には最新スペックの第2世代トヨタセーフティセンスを採用。C-HRとハリアーは、現時点では一つ前の世代のトヨタセーフティセンスPとなる。機能的には大きくは変わらないものの、検知能力などは大きく進化しているので、性能差があるのも事実である。
新型RAV4

マルチメディアシステム「Entune3.0Audio」の採用のほか、通信機能を活用した最先端機能が充実することは、新型RAV4の強みのひとつ。
ハリアー

最新の先進安全装備が搭載されるRAV4に対して、ハリアーの搭載システムは、障害物検知能力で若干の弱さがある。
C-HR

C-HRにはハリアーと同じセーフティセンスPが標準装着されるが、ハリアーで設定のない後方警戒機能のBSMもOPで設定が可能。
トヨタ同門SUV先取り比較【結論】

先行2車に勝る部分が目白押しトヨタSUVの勢力図は変わるはずだ
グローバル市場において、トヨタを代表するモデルにまで成長を遂げたRAV4。満を持して日本に再投入される新型は、日本市場において十分な実績を持つハリアーとC-HRの牙城を崩せるだけの性能を持つことは疑いない。特にシャシーからエンジン、4WDシステムに至るまでTNGA技術を中核とするトヨタの“最新”が注がれるメカニズム面の進化は、明らかに先行する2車を凌駕している。来年春という日本導入の時期はやや遠く、新型の新鮮味が色褪せて感じてしまう可能性もあるが、正式導入時には他メーカーを含めて脅威になるだろう。
提供元:月刊自家用車