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更新日:2018.11.20 / 掲載日:2017.06.27
レクサスの新型LSは世界初の運転支援システムを備えた自動運転への架け橋となるモデルだ!

レクサス LS500h
文●工藤貴宏 写真●川崎泰輝
日本デビューから11年。待ちに待ったフルモデルチェンジで新型へ進化し、今年の秋以降とされる発売へのカウントダウンが始まったのが「レクサス LS」だ。ライバルはメルセデス・ベンツのSクラスやBMW7シリーズといった世界一流のサルーンであることは、いまさら説明の必要もないだろう。レクサスの頂点に立つ、いや日本のフラッグシップセダンとして君臨するモデルだけにその進化の度合いは気になるところだ。

「レクサス LS500h」とレクサス インターナショナル プレジデントの 澤 良宏氏(右)、レクサス LSチーフエンジニアの旭 利夫氏(左)。
新型の姿は、これまで海外のモーターショーではすでにお披露目されていた。だからニュースなどでデザインを目にする機会はあったのだが、じつはレクサスの「本国」である日本においては、公式には非公開で「お預け状態」だった。
……というのがここまでの流れ。しかし、そんな状況で日本のクルマ好きが納得するわけがない。もちろんレクサスだってそんなことは百も承知だから、発売どころか正式発表まで、まだ数カ月あるこのタイミングで東京でも車両が公開された。
しかし、いまさら「日本で初公開」なんていってもファンが納得しないこともレクサスはわかっている。
だから今回は、車両公開と同時に先進安全装備など、これまで正式にアナウンスされていなかった情報も公表された。ここではその先進安全装備を中心に次期レクサスLSに迫ってみよう。

さすがLSである。
そんなふうに思わせる理由はレクサスとしてはじめてというだけでなく、国産車としても初採用の先進安全デバイスが多く投入されているからだ。もちろん、世界初搭載のシステムだって用意されているのだから、最新テクノロジーマニア(!?)だって安心していい。
まずお伝えしたいのは、先進安全装備の充実度では世界のトップクラスに到達したということだ。ここでいうライバルとはメルセデス・ベンツSクラスやBMW7シリーズであるが、それらの運転支援機構に追いつき、また一部は追い越しているのだから日本人としてはホッとした。はっきり言って従来のレクサスでは、先進安全装備や運転支援機構はライバルに負けていた。しかし新型はライバルを超える部分もあるのだ。この新しいLSのために「出し惜しみ」をしていたのではないかと勘ぐってしまうが、それもまんざら外れではないだろう。とにかくこれまでのレクサスとは先進度がまったく違うということをお伝えしておこう。
「世界初」は後ほど紹介するとして、最初にもっとも驚いた装備をあげておこう。それは「レーンチェンジアシスト」だ。別名「自動レーンチェンジ」とも呼ばれるこの仕掛けは、高速道路などでドライバーがウインカーレバーでクルマに指示を出すと、クルマが状況を判断し自動的にハンドルを切って車線変更。もちろん加減速も最適におこなうという、なんともハイテクを感じさせる機能だ。
とはいえこのLSが世界初ではなく、メルセデス・ベンツはEクラスで日本市場にも投入しているし、日本仕様には設定がないけれど本国などではBMW5シリーズにも採用されている。しかし、この機能は交通量の多い高速道路で使うと作動のスムーズさに欠ける印象がある(だからBMWは日本仕様には採用していない)。
レクサスがやるからにはスムーズな動きをしないと日本の舌の肥えたユーザーが納得しないはず。そういった意味で驚きだし、楽しみでもある。レクサス、いや日本のエンジニアがどう仕上げたか、お手並み拝見といきたいところだ。

それでは、世界初の装備を紹介しよう。ハイエンドカーにおけるプリクラッシュブレーキはもはや「単に止まる」という時代は過ぎ、新型LSでは世界初の「歩行者注意喚起機能」を搭載する。これは前方の歩行者と衝突する可能性があると判断した場合にヘッドアップディスプレイにその歩行者の方向を表示することで、ドライバーが直感的に歩行者を避けるようにサポートするものだ。
また緊急時においてはブレーキをかけるだけでは車線内の歩行者やガードレールなどとの衝突を避けられないという場合もあるだろう。そんなときには、ステアリング操作で回避もしくは被害軽減をおこなう「アクティブ操舵回避支援」も組み合わせている。
「レーントレーシングアシスト(LTA)」と呼ぶ、車線維持に必要な運転操作の支援……わかりやすくいえばクルマが自動で行うハンドル操作には、白線を認識できなくても先行車の軌跡を検知してハンドルを制御する仕掛けを追加している。またその際、もしドライバーの操作がない状態が続けばハザードランプとホーンで異常を周囲に知らせながら車線内に自動停車。ヘルプネットという車載の緊急通報サービスでセンターへ自動発報し、救急車などを手配して早期にドライバーを助けるシステムも備えられている。
自動停止まではEクラスもおこなうが、自動的に緊急信号発報するのはベンツでは次期Sクラス(今秋に発表予定)からになるという。
また、「フロントクロストラフィックアラート」では、前方の交差点で接近してくる車両がある場合はヘッドアップディスプレイを吊ってドライバーに存在だけでなく方向を伝える。これも世界初の機能。それでもドライバーが進もうとしている場合は、警告する仕掛けになっている。
そのほか自動ブレーキ、レーンディパーチャーアラート、後方の様子を把握し衝突の危険がある場合には警報して自動停止もする「インテリジェントクリアランスソナー」、後退時に車両の接近や歩行者の接近にも反応して自動でブレーキをかける機能(歩行者対応は世界初)など、日本の頂点に立つセダンだけに安全装備は抜かりなし。先進安全装備の見本市といってもいい充実度はさすがである。これぞレクサスの実力なのだ。
そして最後に、驚いたことをもうひとつ。新しいLSでは自動ブレーキで衝突を回避できる最大の速度差は約60km/hだという。じつはこの対応速度差は凄い。性能に定評のあるスバルのアイサイトでも約50km/hだし、世界最高水準の安全システムといわれるボルボでも約50km/hなのだ。そこへきて約60km/hという数字を出してきたことは、地味だけど凄いことである。
運転支援システムの話をすれば、完全停止するような渋滞から高速道路の追い越し車線のペースまで車速を自動調整してくれる「レーダークルーズコントロール」に加えて、渋滞でもステアリングを自動操舵する「レーントレーシングアシスト(LTA)」そして「レーンチェンジアシスト」が柱となる。現時点ではステアリングから手を放すとLTAが作動しないなどあくまでシステム作動はドライバーの管理のもとでおこなわれるが、それらの組み合わせはもはや、自動運転の直前まできていることを感じさせる。
この働きでドライバーの管理を離れれば、それは「自動運転」となるのだ。
おそらくこの次の世代のLSは「自動運転」が搭載されるのだろう。それを予感させる今回のLSは「自動運転への架け橋となるモデル」ということになる。「半自動運転車」といって差し支えない。
レクサス インターナショナル プレジデントの澤 良宏氏。
レクサス LSチーフエンジニアの旭 利夫氏。
先進技術開発カンパニー プレジデント/チーフセーフティテクノロジーオフィサー 伊勢清貴氏。
レクサス LS500h
レクサス LS500h Fスポーツ
新開発「V型6気筒3.5L ツインターボエンジン」。
新型FR用 10速オートマチックトランスミッション「Direct-Shift 10AT」。
「マルチステージハイブリッドシステム」。