車種別・最新情報
更新日:2018.11.20 / 掲載日:2017.06.09
ニュル最速記録樹立! ランボルギーニ・ウラカンの最強モデルが日本上陸

文●工藤貴宏 写真●川崎泰輝
「生で見ることができただけでラッキー」。数多くの新車がデビューしていくが、そこまで思わせるクルマはそう多くはない。しかしウラカンの頂点となる『ペルフォマンテ』はそう感じさせるほどの雰囲気、迫力をもっていた。
このオーラの凄さは、実車を見ればだれだって、それこそクルマに詳しくないひとであっても感じられることだろう。

「これでウラカンのレンジが完成した。『ウラカン・ペルフォルマンテ』は最高のドライビング体験を堪能でき、その高性能ぶりをだれもが楽しめるものなのです」。2016年9月からアウトモビリ・ランボルギーニの日本及び韓国のカントリーマネージャーを務めているフランチェスコ・クレシ氏のそんな宣言からスタートしたウラカン・ペルフォルマンテの発表会。会場となった渋谷ヒカリエには、その日本上陸に立ち会おうという大勢の報道陣が駆けつけた。
ペルフォルマンテ以外にもクーペとスパイダーが2台ずつ、合計4台のウラカンが展示された発表会場。そこはいつもの新車発表会とはずいぶん違う雰囲気に包まれていた。まずステージ上には主役のウラカン・ペルフォルマンテがベールに包まれて置かれたほか、スカートに深くスリットの入った衣装に身を包んだ美女が登場。まるでモーターショーのような華やかさだ。日本における販売が絶好調のランボルギーニだが、さらなら高みを目指そうとする猛牛のごとく、荒い鼻息からその野心がビンビンと伝わってくる。そんな熱い空気に満ちていた。
そしてペルフォルマンテを包むベールの柄はなんと渦巻き模様。これはスクープ写真などでおなじみのテスト車両をイメージした演出なのだろう。発表会で流されたニュルブルクリンクのタイムアタック映像ともリンクするものだった。

さて、ウラカンについておさらいしておこう。ウラカンはひとことでいえばランボルギーニにおいては「ベーシックなモデル」となる。違いは単に「ドアが上に開くか、それとも横に開くか」というだけではない。現行車種としてカウンタックの流れを受け継ぐモデルがV12エンジンを搭載する『アヴェンタドール』で、ウラカンはその下に位置するV10エンジン搭載車だ。世界的な大ヒットでランボルギーニのマーケットを大幅に拡大する立役者となった『ガヤルド』の後継モデルでもある。
ガヤルドやウラカンはV12モデルに比べて車体もエンジンも小さいことから「ベイビーランボ」という愛称もあるけれど、実際にウラカンを前にすればとても「ベイビー」なんかではないことを実感させられる。ロー&ワイドで、まるで地を這うようなプロポーションが独特の存在感を持ち、放つオーラがハンパないからだ。そこにあるだけで、一般的なクルマとは一線を画す、しっかりと空気を支配できる存在になり得ているのである。

さて、発表会がおこなわれた渋谷といえば外国人の観光スポットにもなっている世界一歩行者の多い交差点があるが、このウラカン・ペルフォルマンテもまた世界一の称号を得ている。それはなんとニュルブルクリンク北コースのタイムアタックにおける「量産車最速ラップタイム」だ。
スポーツカーの聖地ともいわれる1周が約20キロもある過酷なサーキットで記録したウラカン・ペルフォルマンテのラップタイムは6分52秒01。これはミハエル・クルムがたたき出したGT-Rニスモの7分8秒68やポルシェ918スパイダーが2013年9月に記録した従来の量産車最速レコードの6分57秒00を上回るとんでもないタイムだ。「性能」を意味する「ペルフォルマンテ(performante)」のネーミングは伊達じゃないのだ。
「360度全方位から性能を高めている。すべてを完璧な状態に持っていきたいと思った。最高のドライビング体験を味わってもらうために」とフランチェスコ氏。その結果が、ニュルのラップタイムとして具現化されたのだ。

ペルフォルマンテのエンジンはウラカンの高出力仕様である『ウラカンクーペ』に対して30馬力、4.1kgmのパフォーマンスアップを果たしているが、速さの理由はそれだけではない。カーボンコンポジット素材の採用により車両重量は40kgのダイエットを果たした車両重量はわずか1382kg。その車体サイズ、搭載エンジンの大きさ、さらにAWDであることを考えれば驚異的な軽さである。
サーキットで最高のパフォーマンスを発生できるようにサスペンションのセットアップはより締め上げる方向でリセッティング。ハンドリングはレーシングカー感覚を重視し、ESPの介入を減らしたほか「ストラーダ」「スポルト」「コルサ」が選べる走行制御モードもさらに刺激的に味付けされているという。「スポルト」ではオーバーステア傾向のハンドリング特性となり大胆なドリフトも可能という、その方向性を聞いただけで胸躍る。

しかし何を隠そう、ペルフォルマンテのテクノロジーの真骨頂は見えていない部分かもしれない。まずフロント。フロントスプリッター内のシャッターを開閉することでローダウンフォースとハイダウンフォースを切り替え、コーナリング時とストレート時でダウンフォースを変化させる仕掛けが組み込んでエアロダイナミクスを完成させている。そしてリヤは市販車としては珍しくステーに対して吊り下げ式となっているウイングを採用。これはカーボンコンポジット製で究極の軽さを実現しているのだが、凄いのはそれだけではない。なんとウイング内部に空気の通り道があり、そこにバルブを組み込んでエアが通過する量を調整し、発生するダウンフォースに変化をつけているのだ。コーナリング中は左右のダウンフォースに差をつけて、空気によるトルクベクタリングともいえる効果を得て旋回性能を高めるというから驚くばかりである。
ランボルギーニが新たに開発したこの可変エアロダイナミクスシステムはALA(Aerodinamica Lamborghini Attiva)と呼ばれ、ニュルブルクリンクで7分を切るタイムを実現したのはこの空力による効果も大きいはずだ。
ちなみにエクステリアは大きなリヤウイングを特徴とするだけでなく、フロントバンパーも通常のウラカンとは異なるデザイン。そのうえリヤウイングと同等、もしくはそれ以上に攻撃的なのは専用設計のリヤバンパーで、なんとエキゾーストパイプが左右テールランプの間にあるのだからなんともアグレッシブだ。多くのドライバーは、フロントよりもむしろこの後ろ姿を見せつけられることになるのだろう。
このエキゾーストシステムはペルフォルマンテ専用だが、重量および後方にかかる圧力を削減し、「排気音にはレーシングカーをイメージさせる攻撃性を加えている」というからなんとも頼もしい。
ウラカンの頂点に立つペルフォルマンテのパワーウェイトレシオはわずか2.16kg/馬力。0-100km/h加速は2.9秒。最高速度は325km/h。「ベイビーランボ」という愛称に似つかわしくない戦闘力の高さは、兄貴分の『アヴェンタドール』の高性能仕様である『アヴェンタドールSV』をも上回るニュルのラップタイムが証明している。
最後に、うれしいニュースをお伝えしておこう。ニュルの量産車最速という輝かしい肩書を持ったウラカン・ペルフォルマンテは限られたひとのためだけのクルマではない。限定モデルではなくカタログモデルなのでだれでも購入することが可能なのだ。量産車においてニュル最速を誇るこのモンスターをだれにも邪魔されることなく心ゆくまで堪能できるのである。ただし購入資金として3163万8800円を用意できる財力が必要との条件が付く。
【ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ 諸元】
エンジン形式 V型10気筒
総排気量 5204cc
最高出力 470kW(640馬力)/8000rpm
最大トルク 600Nm(61.2kgm)/6500rpm
全長 4506mm
全幅 1924mm
全高 1165mm
重量 1382kg
最高速度 325km/h
0-100km/h加速 2.9秒
価格 3163万8800円(税別)
アウトモビリ・ランボルギーニ アジア太平洋地区代表のアンドレア・バルティ氏。
アウトモビリ・ランボルギー二 日本及び韓国カントリーマネージャーのフランチェスコ・クレシ氏。
アウトモビリ・ランボルギー二 アドバンスト・コンポジットリサーチセンター代表ルチアーノ・デ・オト氏。
リヤウイングの断面模型を手に、新技術「エアロベクタリング」について解説するルチアーノ・デ・オト氏。
ウラカン ペルフォルマンテが、ニュルブルクリンク「ノルドシュライフェ(北コース)」で記録した、量産モデルの新たなコースレコード6分52秒01。
発表会の会場となった渋谷のヒカリエ。
会場には「クーペ/スパイダー」、「2WD/4WD」といった4タイプのウラカンも展示された。