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更新日:2018.10.24 / 掲載日:2017.03.31
思わず欲しくなるエコカー。新型プリウスPHVで「ハイブリッドの次」を体験

プリウスPHV [フルモデルチェンジ] 発表:2017年2月15日
トヨタ自動車 お客様相談センター TEL:0800-700-7700
トヨタがハイブリッドに続く、次世代環境車の柱と考えている戦略モデルプリウスシリーズの「プリウスPHV」がフルモデルチェンジして登場した。PHVとは「Plug-In Hybrid Vehicle」の略で、コンセントなどから駆動用バッテリーに直接充電できるプリウス(ハイブリッドカー)という意味が込められている。
従来のハイブリッドカーは動力の主役がガソリンエンジンだったのに対して、PHVはより大きな駆動用バッテリーを備え、通常走行では多くのシーンをモーターのみで走るというのが特徴。駐車時に駆動用バッテリーに直接給電することで、極力エンジンの使用を抑えるというのがポイントで、燃料消費やCO2排出を特別な意識なしに削減できる。高速走行時や駆動用バッテリーの電力が残り少なくなった際にはエンジンが始動し、通常のハイブリッドカーのように走るため、電気自動車に比べて航続距離も長く、使い勝手に優れるというメリットもある。
現在、世界中のメーカーが電動化への対応としてPHVモデルを続々と発売しているが、トヨタの強みは先行していたハイブリッド技術の蓄積に加え、先代プリウスPHVの市販によって得られたマーケットデータを開発に活かせるという点にある。
プリウスPHVの初代モデルは、2009年に3代目プリウスをベースにした「プリウスプラグインハイブリッド」として、官公庁向けのリース販売という形で登場、その後小改良を受けて2012年から一般ユーザー向けに「プリウスPHV」として販売が開始された。トヨタとしては当時、1997年から販売しているプリウスの次世代を担う存在として初代プリウスPHVを投入したが、残念ながらその販売台数は想定を超えることはなかった。そこで、今回のフルモデルチェンジにあたってトヨタはその戦略を大幅に変更し、「ハイブリッドの次」というキャラクターを明確に主張する方針へと転換。さらに、初代モデル販売時に得られたユーザーからの声をフィードバックすることで、1台のクルマとして強い魅力を持つモデルへと成長させた。
新型トヨタ プリウスPHV開発時に課せられた様々なタスク、そのなかでとくに重要度が高かったというのが、ベースとなったプリウスよりも格好いいデザインを手にいれること。トヨタが考える次世代環境車の柱であるプラグインハイブリッドカーを人気、話題の面でも支えるために、プリウスよりもスタイリッシュで購買意欲をそそるスタイリングが不可欠だったというわけだ。
そこで、新型トヨタ プリウスPHVでは、プリウスに対してホイールベースは同一ながらも、全長を105mm拡大。フロントで25mm、リヤで80mmオーバーハングを拡大したことで、車格感をアップさせた。プリウスPHVのイメージを単なるプリウスの1グレードではなく、上位の別車種として認識させるのがその目的だ。事実、プリウスの隣に並んだ新型プリウスPHVからは、プリウスに対して格上のモデルに成長したと感じられる風格が漂っている。
さらに、スタイリングのディテールにトヨタの環境車におけるフラッグシップである燃料電池自動車MIRAIのニュアンスを導入することで、より先進的なイメージを取り入れているのもポイント。それを象徴するのがフルLEDを採用した特徴的なヘッドライトだ。これは、開発段階で内部ユニットをMIRAIと共用することを前提に開発したもので、コスト的にも内容的にも「一歩未来を行く」装備。さらに、フロントマスクのデザインについても、空力性能よりも見栄えを優先したデザインを採用。ここにも、燃費性能の数字をやみくもに追いかけるのではなく、クルマとして魅力的なモデルに仕上げるというトヨタの強い意思が現れている。

デザイン面でのこだわりはさらに続く、プリウスで縦長だったブレーキランプがワイド感を感じさせるデザインへと変更されたことに加えて、リヤガラスには「ダブルバブルウインドゥ」を採用した。このガラスは、見た目にも新しさと美しさを表現するだけでなく、空力性能的に有利に働く。そして、このガラスを保持するバックドアもプリウスPHVのために先進の技術が投入された。素材にレクサスLFAで培った技術となるカーボン炭素強化繊維樹脂(CFRP)を採用したのだ。軽量素材として知られるアルミよりもさらに軽量化が計れるだけでなく、形状面での自由度が高いのがCFRPの特徴。従来はレーシングカーやスーパースポーツなど、高コストが許される特殊な車両にしか使われていなかったこの先進素材を、生産技術などを工夫することで量産車に取り入れることに成功した。なお、このバックドアは内張りを使わずにカーボンの素材感を生かしたことで、コスト面でもアルミレベルまで引き下げることが可能になったという。

インテリアのハイライトは、センターコンソールに配置された11.6インチ大画面が特徴の「T-Connect SDナビゲーションシステム」。室内の中央に縦型に配置された大型モニターはインパクトが強く、ここでもプリウスとの差別化を実感。タブレット感覚をうたうそれはレスポンスもよく、操作も直感的。車両情報などが集約されるため情報量は多いが、メニューも整理整頓されており、日常的な操作の多くはすぐに身につけられるだろう。
また、DCMを標準(除くS)としており、いわゆるコネクテッドサービス(T-Connectサービス)を受けられる。従来ではレクサスなど一部高級車向けに提供されていたサービスに近く、先進のクルマとしての満足度を高めてくれるところ。アラーム通知、車両の位置追跡・警備員の派遣、エンジン始動通知、停車位置確認などといった「クルマ見守り」機能が充実していることに加えて、事故や急病時にはオペレーターによる緊急車両などの手配などがされるのは嬉しい。
また、目に見えない部分の進化として注目なのが、ヒートポンプシステムを採用したエアコンシステムだ。バッテリーが性能に大きな影響を与えるPHVのために開発されたシステムで、量産車では世界初となるガスインジェクション機能を搭載することで、氷点下でもエンジンを始動させることなく暖房を可能とし、EV走行の範囲を拡大することで燃費低減に貢献しているという。実際、EVを所有しているユーザーのなかには、電費を気にして冬場には厚着をしてクルマに乗るひともいるくらい、暖房の及ぼす影響は大きいもの。このあたりの作り込みにも、新型PHVを「使えるクルマ」として仕上げようというトヨタの熱意を感じることができた。

注目のドライブトレーンについては、初代モデルから大幅に強化されている。ハイブリッドシステムはTHS-II、エンジンもプリウスと同じ1.8L直4の2ZR-FXEという構成だが、実際のコンポーネンツについてはプリウスPHVのために新規開発された部品を数多く採用している。
性能面でのもっとも大きな変化がEV走行可能距離の大幅な伸長で、初代モデルが26.4kmだったのに対して、新型では68.2kmを達成。例えば、年間走行距離を1万km、2日に1度クルマを利用すると仮定した場合、1日あたりの走行距離は55km弱となるため、新型ならば日常生活のほとんどをEV走行のみでまかなえる計算になる。
また、プリウスPHV独自の要素としては、EV走行時に通常のモーターに加えて発電用ジェネレーターを駆動力に活用する「デュアルモータードライブシステム」の採用もトピック。これによってモーターのシステム最高出力は122psで、プリウスの72psと比べて大幅に強化された。
充電システムの充実も新型のトピックで、200Vで2時間20分、急速充電器ならば20分で80%の充電が可能。さらに太陽光から駆動用バッテリーに充電できるソーラー充電システムも用意された。さらに、車載バッテリーは外部への電力供給も可能で、付属のコネクターを利用することで、家庭用100Vのコンセント(合計1500W)として活用できる。バッテリー残量が少なくなってもガソリンがあればプリウスPHV自体が発電するため、日常生活やレジャーだけでなく、災害時の備えとしても有用だ。
グレード体系は5つで、性能面での大きな差はなく、装備やトリムが主な違いとなる。「S」(326万1600円~)、そこにナビを追加した「Sナビパッケージ」(366万6600円~)がベーシックモデルにあたり、「A」ではさらにブラインドスポットモニターやインテリジェントクリアランスソナーといったサポート機能が充実し、ドアトリム上部がソフトパッドになるなど質感が向上する。さらに運転席8ウェイパワーの本革シートが備わる「Aレザーパッケージ」(406万6200円~)やカラーヘッドアップディスプレイが標準装備される「Aプレミアム」(422万2800円~)も用意される。注意したいのは、注目のオプション装備である、ソーラー充電システムが「S」または「Sナビパッケージ」でのみ選択可能だということ。ソーラー充電システムは新型の先進性を象徴する装備でもあるわけで、ぜひ今後の改良で「A」でも装着できるようにしてもらいたい。
プリウスに対して、しっとりと上質感のある走り味
今回試乗を行なったのは、最上級グレードの「Aプレミアム」。
試乗基地から出発してまず感じられたのが、乗り心地のよさ。これは同じTNGAプラットフォームを採用するプリウスでも感じられたことだが、ボディにしっかり感があり、その上でサスペンションがしっかりと仕事をしていて、段差を乗り越えた際にも衝撃をボディが受け止めた上で上手にいなしている。
先代プリウスおよびその派生型出会ったプリウスPHVでは、リヤからの突き上げが強く、また衝撃をボディが受け止めきれず揺すられるような動きが気になったが、新型プリウスPHVは足腰の粘り強さが数段上がった印象だ。その上でプリウスとも違う味付けとして、いい意味での重厚感がクルマ全体を包み、しっとりとしたフィーリングを醸し出す。実際プリウスに比べて車重が100kg近くプラスされているわけであるが、単純にプリウスに重しを載せたような動きではなく、上級セダンに見られるような、落ち着きのある振る舞いを見せるのだ。エンジニアによれば、このセッティングにたどり着くにはかなりの時間がかかったというが、スタイリングから受ける印象と実際のクルマの動きがシンクロするため、「プリウスよりも格上のモデルに乗っている」感覚は上手に表現されていると言えるだろう。
このしっとりとした走りを後押しするのが、デュアルモーターによる力強く、それいでいて静かな加速感。新型PHVではわざわざEVモードを選択する必要もなく、駆動用バッテリーに十分な電力が蓄えられている際にはEV走行となるが、重みのある車体がスルスルと加速するのは気持ちがいい。モーター特有のリニアかつ低速から発生する強大なトルクにより、意のままに車速をコントロールすることが可能で、バッテリーさえ十分ならば流れをリードするような加速をしても街中でエンジンがかかることはなかった。今回の改良によってEV走行の最高速度は135km/hまで引き上げられており、試乗の場を高速道路へと移しても、ほとんどのシーンをモーターのみで走破。充電効率が高められたこともあり、よほどアグレッシブな走りをしなければバッテリーのインジケーターが急激に減るようなことも見られなかった。
市販モデルに先駆けてプロトタイプモデルをサーキットで試乗した際にもエンジンがなかなかかからないことに驚かされたが、街中をアベレージスピードで走らせている限り、新型プリウスPHVはまるでピュアEVのような感覚を与えてくれる。これはハイブリッドカーに乗り慣れたユーザーにとっても十分に新鮮なはずで、「ハイブリッドの次」というトヨタの主張は大げさではないと思えるだろう。
カタログ上の数値などを比べるだけでは、プリウスと比べ、一見高額なように思えるプリウスPHV。だが、ナビゲーションやトヨタセーフティセンスPなどの装備面を考慮すると、装備レベルではプリウスにおける「A」(277万7563円)に「プリウス専用 T-Connectナビ 9インチモデル」(29万9700円)を加えたものに相当するため、実質的な価格差は60万円を下まわる。実質的には電気自動車のように使えるフレキシビリティや外部給電機能という新しい価値を考えれば、バリューフォーマネーは意外に高いとすら感じられる。何より、自動車の進化を日常的に体感できるクルマとして、新型プリウスPHVは非常に魅力的だ。
トヨタ プリウスPHV Aプレミアム(CVT)
全長×全幅×全高:4645×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
トレッド前/後:1530/1540mm
車両重量:1530kg
エンジン:直4DOHC+モーター
総排気量:1797cc
エンジン最高出力:98ps/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm/3600rpm
モーター最高出力前後:72ps/31ps
モーター最大トルク前後:16.6kgm/4.1kgm
JC08モード燃費:37.2km/L
サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
タイヤ前後:195/65R15
文と写真●ユニット・コンパス
価格
プリウスPHV
326万1600円~422万2800円(全グレード)
プリウスPHV Aプレミアム
プリウスに対して全長を105mm拡大して車格感をアップ。「ダブルバブルウインドゥ」やテールランプを変更することで、バックスタイルの印象は大きく変わった。
ロービーム点灯
ハイビーム点灯
セーフティセンスPを搭載
写真のシート表皮はAプレミアム、Aレザーパッケージに標準設定される本革シート。ファブリックもプリウスPHVは専用表皮を採用していて、光沢フィルムが織り込まれており未来的な印象を与えてくれる。
ラゲッジ容量は通常時360L、リヤシートを倒した状態で1200L。長さ46インチのゴルフクラブが入る9.5インチのゴルフバッグは2個収納できる。デッキボードの下には駆動用バッテリーが収納されている。
ワイヤレス充電に対応。Qi(チー)に対応したアクセサリーや携帯電話が利用できる
T-Connect DCMパッケージを採用
充電・給電の状態がスマホで確認可能