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更新日:2025.09.02 / 掲載日:2025.09.01
新しいラパンは、甘すぎないのがちょうどいい【スズキ ラパン・ラパンLC】【内田俊一】

文●内田俊一 写真●ユニット・コンパス、内田俊一、スズキ
スズキはアルトラパンとアルトラパンLC(以下LC)をマイナーチェンジ。一部メディアに向けて撮影会を実施し、そこで開発責任者とCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザイナーに話を聞くことができたので、そのこだわりなどについてレポートする。
どちらもこだわりのあるユーザーへ

現行ラパンは2015年にデビュー、LCは2022年に登場。どちらも初めてクルマに乗る若いユーザーをターゲットにしながらも、子育てを卒業し、もう大きなクルマはいらない、もっと小まわりが利くクルマが欲しいなどの年齢層の高いユーザーからも選ばれている。
ラパンユーザーは、「ちょっとかわらしいものが好きな方が多いイメージで、LCユーザーは、どちらかというとこだわりを持っている方とか、人とは違う個性を表現したいという気持ちを持っている方が多いようです」と話すのは、スズキ商品企画本部四輪デザイン部エクステリア課の長嶋みのりさんだ。因みに販売割合はおおよそ半々だという。
今回の改良ポイントは大きく2つ。先ずはデザインで、フロント周りを中心とした変更とともに、内外装のカラー等、CMF(Color:色、Material:素材、Finish:仕上げ)に関わる部分にも大きく手が入れられた。そしてもうひとつはパワートレイン系と安全運転支援システムの進化だ。
R06D型エンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせることで、走りと燃費を向上させた。また、デュアルセンサーブレーキサポートIIや車線逸脱制御機能、信号切り替わりにも対応した発進お知らせ機能などを標準装備。USB電源ソケットもType-C(PD対応)を2つ採用している。
さらに、足まわりのチューニングを少し変えるとともに、タイヤサイズも変更。加えて構造用接着剤や、減衰接着剤を開口部やプラットフォームに採用することで、「運転しやすいクルマがさらに違和感なく素直なフィーリングになりました」と開発責任者のスズキ商品企画本部四輪軽・A商品統括部の竹中秀昭さんは紹介する。
かわいいを若い人たちがどうデザインするか

さて、今回注目のデザインについて長嶋さんは、「ラパンは“エフォートレスエモ”というテーマでデザイン」したという。「肩肘張らないという意味と、ちょっとエモーショナルな雰囲気を掛け合わせてデザインコーディネートしました。日常にきらめきを与えられるようなデザインを目指しています」とのこと。
一方LCは、「ハンサムトラッドスタイルというテーマです。最近女性が男性のジャケットを身につけるなど、ジェンダーレスな雰囲気が可愛いと感じられ、その可愛いが多様化してきていますので、そういったこだわりを持ったお客様に向けてデザインしました」と説明。このLCの意味は、「ライフチェンジコンパクト。小型のクルマに乗って生活を変えてみよう、変えてほしいっていう思いが込められています」と長嶋さん。同時に2代目から4代目まで続いたフロンテの型式LCにも由来し、2代目のフロント周りがデザインモチーフとして採用されていた。

竹中さんからデザインへのオーダーについて長嶋さんに尋ねると、「私も含めて若い女性や男性のデザイナーの中が多くて、今の若い子たちが思うかわいいって何なのかっていうのを調査してデザインしてほしいというものでした。割と自由にやらせてもらえました」という。竹中さんも、「お題はあまり細かく話さずに、若年女性の思う自分が乗りたいクルマとしてデザインしてもらいました。デザインの社内審査会でもおあまり年寄りの意見を出すのではなく、デザイナー自身としてどうなの?聞いて決めていきました」と話す。

明度を落として上質さを表現

とくに今回はボディーカラーに特徴があり、新色のルーセントベージュが追加された。改良前にはホーンベージュというカラーがあり人気色だったが、発売から10年経ったこともあり、この人気色をアップデート。長嶋さんによると、「性別に関係なく選べるように明度を落としつつ、光を当てると光の粒がキラキラと輝くような質感で、すごく白く、綺麗に輝くようなベージュに仕上げました」とコメントし、「いまの若い人たちの心が動くようなかわいいが表現できているでしょう」とのこと。
また、フォギーブルーパールメタリックも両車に追加。オフブルーメタリック(ラパンのみ)と比べ、こちらも明度を落とし、大人っぽいような印象、少し色気のあるような雰囲気を纏わせ、「LCのハンサムトラッドにもかなり合う車体色」と長嶋さん。竹中さんによると、「これまでLCのボディーカラーはブラウン系やノクターンなど少し濃いめの色がありましたが、優しい青がないという要望がありました」と市場の声もありブルー系が追加された。
2トーンカラーも充実。LCはアーバンブラウンルーフとソフトベージュルーフという2種類を用意。「少し甘い雰囲気になりますし、アーバンブラウンで合わせると少しビターでちょっと渋くて、おしゃれな雰囲気になりますので、ルーフの遊び心があるでしょう」とのこと。ラパンは、ソフトベージュのみをコーディネートされている。
より上質感を求めて

インテリアは、「全体として甘みのあるブラウン系のコーディネートから、ぐっと明度を落としました。LCの助手席前インパネ部分もただの塗装からレザー調の塗装(Xハイブリッド)に変更しています。レザーに見えるように、実際に革を張るとどうシボが入るのが自然かを確認して仕上げましたので質感の高いイメージが表現されています」という。
そのほか助手席前のテーブルは暗めの木目調から、「LCはヘリンボーン柄、ラパンは木目調ながら揺らぎのあるような木目調に変更することで、心が動かされるような雰囲気の木目調を表現しました」と長嶋さん。 また、LCのステアリング中央にあるホーンパッドの加飾がキャラメルカラーになっており、それがリアのエンブレムのカラーとおそろいになっているなど、非常に細かいところまでこだわりぬいてデザインされていた。

最後に竹中さんは、「色々なところこだわりポイントがありますから、ご自分のこだわりポイントを見つけてかわいがってもらいたいですね。このクルマを所有することで、人生が変わる、生活が変わる、もっと楽しい気持ちになれるクルマとしてつくり上げました」とアピール。
長嶋さんも、「かなりこだわって質感を上げました。若い女性はあまりクルマに興味がない方が多いかもしれませんが、ファッション感覚で選んでもいただけるクルマです。ぜひいろんな方に乗っていただいて、居心地の良さや、これなら安心して運転できるところが伝わると嬉しいですね」とコメントした。
現在シュリンク傾向の軽セダン市場だからこそ、より個性を発揮したラパンやLCの存在は輝いている。背の高さが必要ないユーザーにはお勧めの1台といえる。