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更新日:2025.05.31 / 掲載日:2025.05.31
TOYOTA クラウンエステート詳報《試乗&モデル解説》
70年の歴史を誇るトヨタ・クラウンが、15代までのセダンというイメージを一新。現行16代目では「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」など多様なモデル展開を見せる中、最後に登場するのがクラウンエステートだ。長らく待ち望まれていたワゴンのクラウン、その走行性能や使い勝手はどれほどのものだろうか?
●本文:まるも亜希子 ●写真:澤田和久/奥隅圭之/編集部
TOYOTA クラウンエステート詳報《公道試乗》
最新技術で滑らかな力強さを実現。新世代ワゴンの走りに脱帽

革新の現行世代が揃い踏み。エステートは大本命モデル
時代とともに変わりゆく「日本の暮らし」に合わせて、「継承」と「革新」を繰り返してきたクラウン。100年に一度の変革期と言われるこの時代に生まれた16代目は、これまでの固定概念を打ち破り、誰も予想しなかった変革を遂げ、多種多様な4タイプのクラウンとなった。
まず2022年にクラウン(クロスオーバー)が登場し、セダン、スポーツと続いて、いよいよ2025年、最後のエステートが登場。これでようやくクラウンシリーズが揃い踏みとなったわけだ。
クラウンエステートのコンセプトは、ワゴンとSUVの融合による「大人のアクティブキャビン」というもの。頼もしさと洗練さをあわせもつデザインに、多彩かつスマートに使える数々の荷室と機能性をプラス。クラウンらしい上質感と余裕を持ちながらも、長時間でも疲れない移動時間の質を高めることを目指して開発されている。

シックで良質な装いに加え、ユニークな装備もプラス
そんな狙いもあって、エクステリアはかなりワゴン風味が強め。水平基調のデイライトランプのあたりは、クラウン(クロスオーバー)と似ているが、サイドから見れば伸びやかなルーフラインがリヤまでしっかりと貫いていて、エステートらしさを感じさせてくれる。
インテリアは、クラウンシリーズに共通するレイアウト。運転席と助手席それぞれの乗員をぐるりと包み込み、ディスプレイやスイッチなどの機能を集約して島(アイランド)のように配置するアイランドアーキテクチャーを採用する。運転席では視線移動が少なく運転に集中できるが、その他の席では長距離移動も考慮した快適な空間を意識したもので、全体的にシックで落ち着きのある雰囲気だ。
そして、エステートのセールスポイントになるのが荷室。荷物を積むだけでなく、停車時に休憩したりペットを遊ばせたり、自由な発想で楽しんでほしいという想いを込めたという、広さと機能性を感じさせる空間は、5人乗車時でも570ℓの大容量が確保される。
さらにユニークなアイテムを装備としてプラスしたことも面白いところで、地上高が低めに抑えられたフラットなフロアの左端を見ると、クラウンマークがキュートな三角形のプレートがはめ込んである。実はこれは、専用装備の折りたたみテーブルという。さらにゲート部のはき出し口をめくると、引き出し式のデッキチェアも装着。この2つのアイテムは、景色のいい場所などでサッと引き出して、腰掛けながらコーヒーを飲んで欲しいという意図から生まれたもの。これまでのクラウンのイメージにはなかった発想だが、アクティブな使い方が広がりそうだ。
もちろん後席は簡単に折りたたみ格納ができ、最大時は1470ℓの大空間が生まれる。走っても停まっても、さまざまな用途に応えてくれる、おおらかな余裕ぶりがエステートの魅力だ。
後席への配慮が嬉しい家族みんなが心地よい走り


独自セッティングで疲れ知らずの走りを実現
パワートレーンは2.5ℓのHEV(ハイブリッド)とPHEV(プラグインハイブリッド)が用意された。基本的なシステムは先行して発売されているクロスオーバーやスポーツと変わらないが、フロントモーターの出力は5割ほど向上させており、荷物を多く積んだ状態での走りにもストレスがないよう考えられている。ちなみにPHEVの純電動駆動での航続距離は89㎞(WLTCモード)を達成。街中での普段使いではBEVのように利用することも可能だ。
さっそくPHEVから試乗すると、走り出しからモーターによる軽やかさと滑らかさが際立っていることに気づく。急な登り坂もスーッと余裕たっぷりで駆け上がっていく。落ち着きのあるステアリングフィールと相まって、ほっとリラックス。剛性感の中にもソフトな接地感がある乗り心地は、新しいのにどこか懐かしさも感じさせるから不思議だ。
このような印象の要因は、しっかりとした操舵感や安定感を意識しながらも、上質で疲れにくい乗り心地を両立させているサスペンションセッティングが効いているようだ。特にDRS(ダイナミック・リア・ステアリング)はリヤ側がより動く方向へとエステート独自のセッティングが施されていて、さらに電子制御サスペンションのAVSにも減衰力向上と摩擦低減の設定をプラスしている。ドライブモードの中で、特に後席の乗り心地を重視した「リヤコンフォートモード」を選択すると、ボディの塊感が一段上がったようなフラット感のある乗り味が強まる。このモードが選べることは、エステートの武器のひとつといっていい。
もちろんHEVも同様の傾向。静粛性の面ではPHEVに分があるが、ほぼ同様の乗り味といっていい。いずれにせよエステートの走りは、洗練されていながらも、歴代クラウンが大切にしてきた走行フィールをしっかりと受け継いでいた。
電動ゆえの際立つ滑らかさ。新たな移動体験を実感

TOYOTA クラウンエステート詳報《エクステリア》

シームレスな躍動感が、とても新鮮
GA-Kプラットフォームを活かしたボディは、伸びやかなルーフラインがリヤまで貫き、ショルダーラインはフロントフード上のキャラクターラインとシームレスにつながってダイナミックさを演出。フロントグリルとバンパーを一体化してボディ同色とし、上から下にメッシュパターンが変化する洗練されたデザインとなっている。バックドア面には横一文字のリヤコンビネーションランプを採用。ここもワイド感と存在感を感じさせる重要なポイントだ。




TOYOTA クラウンエステート詳報《パワートレーン》

荷物満載でも、余裕の加速力を約束
HEVは効率向上と性能向上を追求した2.5ℓの高効率システムを搭載。フロントモーターの出力をクロスオーバー、スポーツに対して約5割向上しており、荷物を満載にしてもストレスのない加速を実現している。PHEVは、出力密度の高い駆動用モーターを搭載し、エネルギー密度の高い大容量リチウムイオンバッテリーを床下に配置。EV走行距離はWLTCモードで89㎞を達成するなど、日常生活の大部分をカバーする。
TOYOTA クラウンエステート詳報《キャビン》
上質感だけが武器にあらず
クラウンシリーズで共通となる「アイランドアーキテクチャー」を採用。中央に大きなディスプレイを配置し、メーターと水平にして視線移動を最小限にとどめる運転席に対して、助手席はぐるりと包まれるような安心感が強め。おのおのアプローチは異なれど、長距離走行でもゆったりと過ごせる空間を意識している点は同じだ。シートもさりげないサポート形状を取り入れた前席と、リラックスした姿勢が取りやすい後席と好対照だが、ともにビンテージ調の「雲柄」をサドルタンとグレイッシュブルーのトリム部分に採用するなど、上質感の演出も巧みだ。






TOYOTA クラウンエステート詳報《荷室》
レジャーでも活躍できる工夫がいっぱい
通常時で570ℓ、6:4分割で後席を格納すると、最大1470ℓの大容量を確保した荷室。後席折りたたみ時に長さ2mの完全フルフラットスペースを生み出す新機構「ラゲージルーム拡張ボード」をトヨタ初採用するなど、荷物を積むだけでなくレジャーシーンなどで“居住空間”としても使えるようにしている。専用装備となるデッキテーブルは、クラウンの王冠マークをあしらい、使わない時は荷室左端に格納可能。引き出し式のデッキチェアも面白い装備だ。


