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更新日:2024.12.01 / 掲載日:2024.12.01
100年の歴史を凝縮した真のグランツーリスモ【マセラティ GT2ストラダーレ】

文と写真●ユニット・コンパス
マセラティがこの度ワールドプレミアしたGT2ストラダーレは、その詳細を知れば知るほど魅力を感じる真のグランツーリスモだ。
グランツーリスモこそマセラティの歴史

マセラティというブランドはどのように生まれ、どのような存在として価値を持つのか。2000年以降のマセラティは、自分たちの真の姿を取り戻そうとしてきた。それは、モータースポーツから生まれたグランツーリスモであるということ。
いまから100年前の自動車は、レースカーと市販車との境界はあいまいで、富裕層はレースで勝利したモデルを手に入れ、それを街中で乗り回すことを楽しんだ。しかし、スピードに特化した原初のスポーツカーはあまりにも快適性が低かった。そこで富裕層は、スポーツカーに快適性と利便性を求めた。グランツーリスモの誕生である。
そして、1926年のタルガフローリオでのクラス優勝以来、マセラティはこうしたグランツーリスモを生み出すブランドの代表例であった。



話を現代に戻す。マセラティは2020年にMC12以来16年ぶりとなる完全自社製のスポーツカーMC20を生み出した。そして、2022年からは、MC20をベースにしたレーシングカー GT2をSRO GT2カテゴリーに投入する。ここで注目すべきがGT2カテゴリーのユニークさだ。
モータースポーツの世界は勝利がすべてだ。どんな草レースもそう。プロのレーサーという職業が誕生したのも、どうしてもレースに勝ちたいレースカーのオーナーが、ステアリングを運転のうまい他人に委ねたことがきっかけだった。しかしGT2カテゴリーでは、プロのレーサーだけでなくジェントルマンと呼ばれるアマチュアもステアリングを握る。それはまるで100年前のレースシーンのように。
今回発表されたGT2ストラダーレとは、GT2マシンを公道で走れるように仕立てたモデルである。MC20のチューニング高性能モデルではなく、レースカーをベースに公道で走れるよう法規を満たし、快適性と利便性を与えている。だからGT2はチューニングカーではなく、真の意味でのグランツーリスモなのだ。
GT2ストラダーレを本当の意味で理解するのに必要なのは、スペックの羅列ではなく、こうしたストーリーだろう。
公道を走行可能なレーシングカー、それがGT2ストラダーレ

アジア地域で初めて公開されたGT2ストラダーレの実車を目の当たりにして感じたのが、レースカーでありながらも、公道を走行するモデルにふさわしい仕上げが施されていること。
たとえば時速280km/hで最大500kgものダウンフォースを発生させるエアロパーツだ。フロントのカーボン製スプリッターはまさにレーシングスタイル。なのに仕上がりは一体整形で美しいアートピースのよう。スワンネックを備えるリヤウイングもそうで、支柱の角はすべて優しく面取りされていてボルト類も突起しないように埋設されている。あらゆるディテールがそうで、レーシングカーの形と機能を備えているのに、市販車にふさわしい美しい仕上がりなのだ。これはサーキットで本物のレーシングカーをご覧になったことがあるならわかるだろう。レースカーはもっと荒々しく、触れば怪我をするような箇所がたくさんある。




最後にGT2ストラダーレのスペックを紹介することにしよう。
エンジンは3LV6ツインターボで最高出力は640馬力で最高速度は324km/h、0−100km加速は2.8秒。「コルサ・エボ」と呼ばれるドライブモードを備え、サーキットではドライビングスキルに応じて電子制御によるサポートを段階的にオフにできるところも個性的だ。もちろんサーキット専用車ではなく、日本の公道を走り、旅行に出かけられるグランツーリスモだ。カメラやパーキングセンサーや運転支援装備も充実している。
マセラティ ジャパンによれば価格や導入時期といった詳細は未定。こういった特別なモデルは発表と同時に完売という話も珍しくはないが、もしも手に入れたいのであれば手厚くサポートを行うと約束してくれた。