ついに発売されたフロンクス。小さくてもインパクト抜群のSUV

文と写真●ユニット・コンパス

　スズキから新型コンパクトSUVのフロンクスが発表された。世界戦略モデルで、特徴は取り回しの良さと快適な室内空間を兼ね備えていること。価格は254万1000円から273万9000円。ここでは、発表会の模様と実車をチェックした感想をお伝えする。

世界戦略を日本市場向けにチューニング

　発表会では、スズキ株式会社 代表取締役 社⻑の鈴木氏が登壇し挨拶を行った。

　スズキは2023年に国内生産55万台（前年比111％）を達成。コロナ禍や半導体不足の影響から抜け出し、供給について安定してきたことが要因だという。フロンクスの国内投入によってその勢いをさらに高めたいと意気込みを語る。

　「フロンクスはスズキの世界戦略車として開発され、インドのSUV市場でもっとも早く累計販売台数20万台を突破。現在は世界70カ国で愛用いただいている。そのフロンクスを本日、満を持して日本市場で発売します。フロンクスは、適所適材のものづくりを体現する１台です。日本の道路情報に合わせたサスペンションのチューニングや降雪地域に合わせた4WDの設定など、日本に合わせた仕様の作りこみをしっかり行ってきました。事前キャンペーンでは予想を超える反響があり、私自身大きな期待を感じている。フロンクスは、運転する人が楽しく、後席も快適なモデルとして多くのお客様に喜んでいただけると思っています。触れて実際に乗っていただき、その良さを体感していただきたい」などと語った。

最小回転半径は4.8m。小さいけど存在感のあるデザイン

　実車を見た感想は、存在感のあるデザインの割に小さいというもの。

　もちろんそれはポジティブな感想で、それだけデザインがよく出来ているのだろう。フロントマスクは力強く、ボディパネルには抑揚がある。ツートンカラーのおかげもあって品質感は高く、もっと大きなクルマから乗り換えても満足できるだろう。最小回転半径は4.8ｍとクラストップレベルで、日常での使い勝手の良さが期待できる。

コックピットらしさの強いインテリアデザイン

　日本仕様に向けて磨き上げたというインテリアもフロンクスの自慢。メタル調の加飾パネルや色味を抑えたツートーンカラーで上質感を演出している。

　感心したのはドアパネルまでしっくり作りこまれていること。コンパクトクラスはどうしてもコストの関係から目線下側の質感には目をつぶることが多いが、フロンクスはここも上手に仕上げている。

　ダッシュボードのセンターにはスマホ連携機能を備えるディスプレイオーディオを採用。ナビ画面はもちろん、車両設定などもこの画面を通じて行える。

　操作スイッチはセンターに集中していて、エアコンの操作なども直感的に行えそう。シフトはオーソドックスなノブタイプだが、パーキングブレーキは電動式を採用。このあたりも上質さにつながっている。

日常を楽しく演出する素敵なコンパクトSUV

　運転支援システムは、全車速対応のACC（オート・クルーズ・コントロール）やレーンキープアシストなど、実際に使われる、または安全性に寄与するものをセレクトして採用しているといった印象。カタログ上の華やかさよりも実利を重視するスズキらしい骨太な内容となっている。

　すでにプロトタイプモデルをクローズドコースで走らせることができたが、軽快なフットワークと姿勢変換の少ない落ち着いた乗り味が印象的だった。スイフトの出来の良さからするとロングドライブ性能も期待できる。

　フロンクスは、これまでスズキのラインアップにはなかったスタイリッシュなクーペSUVであり、ライバルとなるようなモデルも多くない。価格が手頃なこともあり、スズキユーザー以外からも注目を集めそうだ。