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更新日:2023.08.28 / 掲載日:2023.08.26
マセラティ MCエクストリーマに興味をもったワケ【九島辰也】
文●九島辰也 写真●マセラティ、ベントレー
世界中のディープなカーガイが注目する夏のイベントといえば、モントレーカーウィークに他なりません。ペブルビーチ・コンクール・デレガンスに代表される大掛かりな催しです。
場所はアメリカ・カリフォルニア州。サンノゼの南モントレー湾の南端が会場となります。ゴルフ好きなら、ペブルビーチ・ゴルフリンクスはもちろん、スパイグラス・ヒル・ゴルフコース、ザ・リンクス・アット・スパニッシュベイ、デル・モンティ・ゴルフコースあたりは一度はラウンドしてみたいと思わずにはいられないゴルフ場でしょう。個人的にもいつか行くことを夢見ています。
それはともかく、今年モントレーカーウィークの中で話題が多かったのが、ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング。モントレーの隣にあるカーメルの高級ゴルフ&リゾートのロッジ周辺で行われるカーショーです。昨今、レーシーなハイブランドが競ってここで新型車やコンセプトカーを発表しています。かつてはランボルギーニ・ウルスがここでアンベールされました。
それじゃ今年はというと、ベントレーがコンチネンタルGTスポーツのワンオフモデルを、ブガッティがW16ミストラルの新仕様を、ランボルギーニが初のBEVとなるランザドールを、マセラティがサーキット専用車MCエクストリーマを、初お披露目しました。どれも話題沸騰なのは言わずもがな。それぞれのブランドの歴史やこのモデルが生まれた背景などを知らずとも、胸がワクワクする顔ぶれが揃いました。中でも一番興味をそそったのはマセラティMCエクストリーマです。
このクルマに興味を持った理由はいくつかあります。まずは大前提としてサーキット専用車であること。カーガイを自負する方はご存じでしょうが、マセラティはそもそもレーシングカーメーカーです。創業は1914年、戦前の主戦場はグランプリレースで、そこでワークスとして参戦していました。ライバルはアルファロメオやメルセデス、アウトユニオンあたり。1947年以降はアルファロメオを引き継いだフェラーリが良きライバルとなります。
その意味で、1997年にマセラティがフェラーリの管理下に置かれ、クオリティコントロールをするようになったのはセンセーショナルなニュースでした。かつて鎬を削っていたライバル同士が同じフィアットグループ傘下になり、そこで上下関係ができるのですから感慨深い。戦前の自動車史を勉強した者からすると、信じられませんね。月日というのは恐ろしいものです。
スタイリングも気になる理由です。流れるような美しいボディはマセラティらしさいっぱい。しかもレーシングカーに求められるレギュレーションを無視し新たな提案を行っています。速さにこだわったデザインは限界に挑んだ結果だそうです。なかなか大胆なシルエットです。
でもってこれを手がけたチーフデザイナーのクラウス・ブッセ氏とは知り合いで、コロナ前のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードではディナーテーブルで隣になり打ち解けあったことがあります。今もSNSで繋がっているので、近況をチェックしています。その面で、アンベールの時の嬉しそうな顔が印象的でした。デザイナーにとって一生に幾度しかない晴れ舞台に違いありません。
エンジンは3リッターV6ツインターボで、最高出力は730hpとなります。このパワーユニットはMC20と共有で、それを100hpスープアップしました。ディチューンしたものをグレカーレが積んでいるのですからかなり汎用性の高いエンジンと言えるでしょう。というか、グレカーレ恐るべきかも。ちなみに、このクルマは世界限定62台だそうですが、発表前にすべて完売だとか。世界の富裕層のネットワークは凄すぎます。
そんなマセラティには想い入れがあります。それは2014年のコンクールデレガンス・ヴィラ・デステのこと。この年ブランド生誕100周年ということでマセラティ専用カテゴリーができ、たくさんのモデルが会場に並びました。こんなにたくさんのコメモラティブなマセラティを見たのは初めてです。そしてベストオブショーは1956年式マセラティ450Sが受賞したのですが、個人的に興奮したのはオート&デザイントロフィーに輝いた1953年式A6GCSベルリネッタ。あれはカッコよかった。まさにマセラティ、いやいやレーシングカーの真髄だと思います。
なんて感じで、まだまだハイエンドなモデル話題は尽きません。今秋もいろいろなブランドが驚くようなモデルを発表することでしょう。もはや、世界中のカーショーから目が離せませんね。