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更新日:2025.09.10 / 掲載日:2025.09.10
車はいらない?所有しないメリット・デメリットを徹底比較

近年、特に東京などの都市部において「車を持たない」というライフスタイルを選択する人が増えています。背景には、公共交通機関の充実や、必要なときだけ車を利用できるカーシェアリングといったサービスの普及があります。
すでに車を持っている人の中には、そうした背景に加えて、所有する車の使用頻度や駐車場代、税金、保険料といった高額な維持費が見合っていないと感じ、「このまま車を持ち続けるべきか」と疑問を抱くときがあるのではないでしょうか。しかし、いざ手放すことを考えると、「本当に不便はないのか」「緊急時にはどうするのか」といった不安もよぎります。
この記事では、車を持たない場合のメリット・デメリットを徹底比較。そのうえで、車を所有したほうがおすすめなケース、そうでないケースをライフスタイル別に解説します。
1. 車がいらないと言われる理由
近年、都市部に住む人たちの間では、「車は必要ない」という声が大きくなっています。その背景には4つの理由が挙げられます。
(1) お金がかかる
車を持つだけで、購入費用のほかに、下記のようなさまざまな維持費が発生します。
・自動車税
・自動車重量税
・自賠責保険料
・任意保険料
・車検費用
・駐車場代
・ガソリン代
・メンテナンス代(消耗品交換など)
・法定点検代
例えば、普通自動車の場合、維持費だけでも年間約50万円~70万円以上かかることも珍しくありません。このように、車は所有しているだけで大きな支出につながるため、「車はいらない」と考える人が増えています。
(2) 必要性を感じない
働き方の多様化や居住環境の変化により、日常生活で車の必要性を感じない人が増えています。特に以下のようなライフスタイルでは、車を所有していなくても生活できます。
ライフスタイルの例 | 理由 |
---|---|
在宅ワーク | 通勤で車を使う機会がない |
ネットスーパーや宅配サービスの利用 | 重い荷物を持って帰る必要がない |
週末の買い物やたまのレジャーなど、限定的な用途のために高額な維持費を払い続けることに疑問を持つのは自然なことです。
「車は必要ない」と言っている人たちは、自分の生活における実際の車の利用頻度を振り返り、所有以外の選択肢がより合理的であると判断しているのかもしれません。
(3) 価値観の多様化により若者の車離れが進んでいる
若者の車離れも、「車がいらない」といわれる理由のひとつです。価値観の多様化により、車を所有することへの関心が薄れていることが背景にあります。
警察庁の運転免許調査によると、令和5年末の運転免許保有者数の前年比は、18歳でマイナス5.1%、19歳でマイナス3%、20歳~24歳でマイナス1.5%と減少傾向にあります(令和5年運転免許統計 p.5|警視庁)。このことからも、若者の車に対する関心が薄れていることがうかがえます。
趣味や娯楽が多様化した現代において、若者にとって車はステータスシンボルではなくなりました。車にお金をかけるよりも、旅行やファッション、自己投資など、他のことにお金を使いたいと考える人が増えているのです。
(4) カーシェアリングなど新しいサービスが充実している
近年、必要なときだけ車を安価に利用できるサービスが充実してきました。このため、あえて高額な維持費を払ってまで車を所有する必要はない、と考える人が増えています。
特に「カーシェアリング」は、月々の駐車場代や保険料といった高額な維持費をかけずに、必要なときだけ車を使える便利なサービスです。
普段、定期的に車を使用しない人にとっては、所有するよりカーシェアリングなどのサービスを利用する方が経済的です。そのため、車を持たない選択をする人が増えています。
2. 車なしのメリット
車を持たない生活には、多くのメリットがあります。経済的な負担が大幅に軽減されることはもちろん、運転に伴う精神的・身体的な負担からも解放されます。
(1) お金がかからない
前述したように、車の所有には、車両本体の購入費用以外にも、税金や保険料、駐車場代といったさまざまな維持費が継続的に発生します。また、車を所有しているだけで年間約50万円以上もの費用がかかります。
車を持たないという選択をすれば、これまで維持費にかかっていた年間約50万円ものお金がまるごと浮くことになります。この経済的な負担の軽減は大きなメリットの一つです。
(2) 運転ストレスを解消できる
運転中は、混雑した道路や渋滞に巻き込まれたとき、駐車場や駐車スペースが見つからなかったときなど、さまざまなタイミングでストレスを感じます。また、歩行者や信号、標識など、さまざまな情報に気を配る必要があります。
車を運転するのだから当たり前だと思う人もいるかもしれませんが、こうした精神的な緊張は、知らず知らずのうちに負担となって蓄積されているものです。
車なしの生活になれば、そうした精神的な緊張感からも解放されます。これらのストレスがなくなることで、心に余裕が生まれ、移動時間をよりリラックスして過ごせるようになるでしょう。
(3) 事故のリスクが減る
車を運転しないことは、交通事故を引き起こすリスクを下げることにつながります。
自ら起こしてしまった交通事故による影響は大きいものです。相手にはもちろん、自分に対しても精神的、経済的な損害をもたらします。
他方、どれだけ注意していても、もらい事故の可能性もゼロにはできません。車を持たない選択は、より安心して暮らしたい人に大きなメリットがあるでしょう。
(4) 健康的になる
車中心の生活では、どうしても座っている時間が長くなりがちです。長時間、同じ姿勢で運転することにより、腰や肩などへ負担がかかります。
車を手放せば移動そのものが適度な運動に変わります。例えば、最寄り駅まで車を使っていた道のりを歩いたり、車を利用していた週末の買い物は自転車を利用したりなど、自然と運動の機会が生まれます。
また、厚生労働省でも、自動車の代わりに徒歩や自転車に切り替えることは、健康増進に効果的であると推奨しています(参照:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 p.33.34|厚生労働省)。
意識的に運動の時間を確保するのは難しいものですが、車なしの生活では移動そのものを運動に変えることができるのです。
3. 車なしのデメリット
車を持たない生活には多くのメリットがある一方で、不便さを感じる場面も存在します。特に、悪天候や緊急時の外出、大きな荷物を運ぶ際には、デメリットを感じやすいでしょう。
(1) 悪天候時の移動が大変
車がない生活で不便を感じやすいのが、雨や雪、猛暑日といった悪天候時の移動です。
タクシーやカーシェアという選択肢もありますが、悪天候時には利用者が集中し、すぐにつかまらないことや予約ができないことも少なくありません。こうした悪天候時の移動の大変さは、車なし生活の大きなデメリットといえます。
(2) 緊急時の外出に不便
家族の急な体調不良や怪我などで病院へ行かなくてはならないとき、車がないことに不便を感じるかもしれません。特に深夜は、電車やバスなど多くの公共交通機関が運行を終了しています。タクシーも時間帯や天候、場所によっては、すぐにつかまらない可能性があります。
小さな子どもがいるご家庭や、近くに頼れる親族がいない環境では、いざというときの移動手段が確保できないという点が大きな懸念材料となります。車を手放す前に慎重に検討すべきでしょう。
(3) 大きな荷物を運ぶのが困難
車がないと、スーパーでのまとめ買いや家具・家電の購入、アウトドア用品の運搬など、大きな荷物を運ぶ際に不便を感じることがあります。
公共交通機関では持ち運べる荷物のサイズに制限があり、自転車では積載量に限界があります。また、ネットスーパーや配送サービスを利用する方法もありますが、配送料がかかったり、必要な荷物をすぐに自宅へ持ち帰れなかったりと、不便が生じます。
特に郊外の大型家具店やホームセンターでの買い物を楽しみたい人にとっては、車がないと行動が大きく制限されてしまうでしょう。
(4) 行ける場所が限定される
車がないと、公共交通機関が通っていない場所へのアクセスが難しくなり、行動範囲が限定される可能性があります。
特に、以下のような場所へ行く際には、車なしでは不便を感じるでしょう。
場所の例 | 不便を感じる点 |
---|---|
郊外の大型商業施設 | 駅から遠く、徒歩でのアクセスが難しい |
自然豊かな観光地・キャンプ場 | 電車やバスの本数が極端に少ない、または最寄り駅がない |
複数の目的地を巡る旅行 | 公共交通機関の乗り継ぎに時間がかかり、効率が悪い |
このように、車がない場合は時間や手間がかかる、あるいは行くこと自体を諦めなければならないケースも出てきます。
休日の過ごし方や趣味によっては、車がないことがQOL(生活の質)の低下につながることもあるでしょう。
4. ライフスタイル別の車の必要性
車の必要性は、住んでいる地域や家族構成によって大きく異なります。ご自身の状況と照らし合わせ、本当に車が必要か考えてみましょう。
(1) 都市部在住の場合
東京23区や大阪市内などの大都市では、電車やバスの路線が発達しており、主要な場所へのアクセスに困ることはほとんどありません。運行本数も多く、少し待てば次の便が来るため、車がなくても日常生活で不便を感じることは少ないでしょう。むしろ、高い駐車場代や渋滞を考えると、車を持たない方が合理的といえます。
(2) 地方在住の場合
地方は公共交通機関の本数が少なく、駅やバス停まで遠いケースも珍しくありません。スーパーや病院など、生活に不可欠な施設が離れていることも多いため、車がなければ移動が困難になります。
また、総務省の調査によれば、地方は都市部に比べて物価が低い傾向にあります。例えば、車の維持に大きく関わる駐車場代などは、都市部よりも大幅に抑えられることが多いでしょう。このように、地方では車が生活必需品である一方、維持コストの面では都市部よりも負担が少なく、車を所有しやすい環境であるといえます。
(3) 子育て世帯の場合
子育て世帯にとって、車の必要性は高いといえます。例えば、子どもの急な発熱による病院への移動、雨の日の保育園への送迎など、車があることで安心できる場面が多いでしょう。
また、子どもが小さいうちは、公共交通機関での移動は周囲への配慮など、精神的な負担を感じることもあります。プライベート空間が確保された車なら、子どもがぐずっても気兼ねなく移動できます。
しかし、都市部在住で、近所に小児科やスーパー、公園などがそろっている場合は、必ずしも車が必須とは限りません。週末のレジャーなど、必要なときだけカーシェアやレンタカーを利用するのもひとつです。
(4) 独身や夫婦・高齢の親と同居している場合
独身や夫婦のみの世帯の場合、車の必要性はライフスタイルによって大きく異なります。特に公共交通機関が発達した都市部に住んでいる場合、車を持たない選択も十分に考えられます。
とはいえ若い夫婦の場合、将来的に家族が増える可能性もあります。将来の車購入を見据えながら、カーシェアなどを試してみるのも選択肢の一つです。
また高齢の親と同居している場合、通院や買い物の付き添いが必要なケースもあります。この場合、都市部、地方関係なく車がある方が生活しやすいでしょう。
5. 車を手放したときの代替手段
車を手放しても、代替手段を賢く使い分ければ、快適な移動が可能です。それぞれの特徴を理解し、ご自身のライフスタイルに合わせて最適なものを選びましょう。ここでは、代表的な代替手段の特徴を紹介します。
(1) カーシェアリングの活用
短時間・短距離の利用であれば、手軽で費用を抑えられるカーシェアリングが非常に便利です。
多くのカーシェアサービスでは、月額基本料と実際に利用した時間や距離に応じた料金を支払う仕組みになっています。利用料金も約10分から15分でで約200円程度と手頃です。この利用料金にはガソリン代や保険料が含まれているため、マイカーのように高額な維持費を心配する必要がありません。
さらに、スマートフォンのアプリ一つで、近くのステーション検索から予約できるのも魅力と言えます。
このような特徴があるため、例えば「週末にIKEAやコストコへ買い出しに行く」「急な雨で子どもを迎えに行く」といった日常的なシーンはもちろん、「友人と割り勘してゴルフに行く」など、都市部のライフスタイルに合わせた柔軟な使い方が可能です。必要なときだけ賢く車を利用できる、合理的な選択肢といえるでしょう。
(2) レンタカーの活用
旅行や帰省など、半日以上にわたって車を使いたい場合はレンタカーが便利です。カーシェアリングと違って事前の会員登録は不要なことが多く、店舗で手続きをすれば、必要なときにすぐ利用できます。また時間単位だけではなく、1日、1か月単位など長期でレンタルできるのも特徴です。
ただし、カーシェアリングがガソリン代込みの料金体系であるのに対し、レンタカーは利用後にガソリンを満タンにして返却する必要があります。また、基本料金は、万が一の事故に備えて手厚い保険がついているプランやトラブル対応してくれるプランなど、補償内容によって異なります。
短時間の利用ならカーシェアリング、長時間の利用ならレンタカーというように、利用シーンに合わせて賢く使い分けましょう。
6. 車を手放せない人にはダウンサイジングがおすすめ
車を手放せない場合は、車のサイズを小さくする「ダウンサイジング」も有効な選択肢です。
自動車税は一般的に排気量が大きい車ほど高くなるため、ミニバンからコンパクトカー、普通自動車から軽自動車へ乗り換えるだけで、維持費を大幅に削減できることがあります。
また、エコカーなどを選べば税金だけでなく、燃費向上によるガソリン代の節約にもつながります。ダウンサイジングは、車の利便性を保ちつつ経済的な負担を軽減できる、現実的な解決策といえるでしょう。
7. ライフスタイルに合わせて車の必要性を選択しよう
車の維持には、年間で数十万円ものコストがかかります。一方で、車を手放せば経済的な余裕が生まれるだけでなく、運転のストレスや事故のリスクからも解放されます。
また近年は、車の代替手段としてカーシェアリングやレンタカーを利用するなどライフスタイルに合わせた選択も可能です。
ご自身のライフスタイルを振り返り、車の利用頻度とコストが見合っているか、一度立ち止まって考えてみることが大切です。