カーライフ
更新日:2022.08.05 / 掲載日:2021.10.15
もしも交通事故を起こしてしまったら? ドライバーの4つの義務

道路には自分の車だけでなく、歩行者や自転車、バイクや車が多数走っています。自分の不注意はもちろんですが、どんなに安全運転していても相手がいるため交通事故の可能性は残ります。 では、もし交通事故が発生してしまったら、どうすれば良いのでしょうか。 事故の当事者となると、どうしても慌ててしまうものですが、どのように対処したら良いのか知っているだけでも実際の対応に大きな差が出るといわれています。 この記事では事故発生から事故現場での対応が終わるまでの一連の流れを、これから車を検討する方にもわかりやすく解説します。
交通事故発生! ドライバーの4つの義務
皆さんは交通事故に遭遇したことがありますか?
とある調査では、ドライバーで交通事故を起こしたことがある(加害者)、または遭ったことがある(被害者)と回答した方が40%以上もいたそうです。
残念ながら、とても身近な存在といえる交通事故ですが、起こしてしまったドライバーには、すぐに行わなければならない義務が4つ定められています。
緊急措置義務(①運転停止義務、②救護措置義務、③危険防止措置義務)と報告義務(④警察への事故報告義務)です。
これは道路交通法第72条1項に記載されていて、あまり知られていませんが、実は自転車にも適用されます。
それでは順に内容を見ていきましょう。
運転停止義務
事故が発生したら、相手がいる、いないにかかわらず、すぐに運転をやめて停車する義務があります。
車の外へ出て、負傷者や、車や物が壊れていないか、被害状況を確認しましょう。慌ててしまいがちですが、急にドアを開けると対向車や後続車と衝突する可能性もありますので、周囲の確認もしっかりしてから降りるように注意してください。
救護措置義務
もし負傷者がいるようなら、すぐに救護しなければならない義務があります。
怖くなり救護をせずに立ち去った場合は救護義務違反、いわゆる「ひき逃げ」となってしまい、厳しい罰則があります。
相手が大丈夫そうだからとその場を立ち去ってしまった場合でも、救護義務違反になったケースもありますので注意が必要です。
危険防止措置義務
後続車が事故現場を通ることで第二、第三の事故が発生しないように、車を移動するなど危険を防止する義務があります。
前項の救護措置義務と同様、危険防止のための措置を行わずに走り去ってしまうと、危険防止措置義務違反、いわゆる「当て逃げ」となってしまい厳しい罰則がありますので注意が必要です。
警察への事故報告義務
ドライバーは交通事故が発生したことを警察に届け出る義務があります。連絡方法は110番通報で大丈夫です。ドライバーがケガを負い連絡できない場合などは同乗者に依頼します。
警察に報告する内容は以下の5つですが、通報時や現場検証で警察から質問されますので、項目を覚えていなくても大丈夫です。
①交通事故が発生した日時・場所
②死傷者の数、負傷者の負傷の程度
③壊した物と程度
④車両の積載物の状況
⑤事故について講じた措置
交通事故発生から対処の流れ
ここまで4つの義務について解説しましたが、もし事故が起きてしまったら、実際は現場でどのような流れになるのでしょうか。
自分や相手の車が壊れたり、ケガをしてしまった状況を目にしたら、なかなか冷静ではいられませんが、流れを知っておくだけでもいざというときの行動に違いが出るかもしれません。
ここでは事故発生から現場での対応が終了するまで、事故で最も大変なシーンについて詳しく流れを解説していきます。
すぐに停車
ガシャン・・・!!
もし事故を起こしてしまったら、すぐに停車しましょう。
怖いでしょうが、いったん外へ出て被害状況を確認します。間違ってもそのまま走り去ったりしてはいけません。
慌てて飛び出すと、開いたドアや自分自身が他の車にぶつかってしまうかもしれませんので、落ち着いて周囲を確認してから降りるようにしましょう。
負傷者の救護
けが人がいる場合はすぐに救出し、119番通報で救急車を呼ぶか、自分で最寄の病院まで運ぶなど、状況に応じて対処してください。
(スマホから119番通報をすると、緊急通報位置通知機能により現在地が警察に通知されます)
事故発生直後は興奮して痛みを感じにくくなっている場合もあります。翌日になって痛み出す場合もありますので注意が必要です。大丈夫そうな場合でも、念のため受診をおすすめします。
事故車の移動など二次災害の防止
事故車両をそのままにしておくと、交通渋滞や事故と気付かない後続車が衝突するなど二次災害に発展する恐れがあります。
負傷者の救護が完了したら、車を路肩や空地に移動したり、必要に応じて車の誘導も行います。また、ぶつかったことで自動車の部品や荷物が散乱している場合はこれを撤去します。
ハザードランプや三角表示板、発炎筒などを使って後続車へ事故を知らせることも重要です。
警察へ連絡
車の移動が完了したら、すぐに警察へ事故が発生したことを連絡します。
現在地が聞かれますが、わからない場合は近くにある自動販売機の住所表記シールや電柱番号(縦長の金属板)を伝えれば大丈夫です。
(スマホから110番通報をすると、緊急通報位置通知機能により現在地が警察に通知されます)
なおケガ人がいない物損事故の場合でも、届け出が必要です。
相手や目撃者の確認
警察へ連絡が終わったら、改めて相手の氏名や連絡先などを確認します。保険会社に事故対応を依頼する際に必要になりますので、しっかりとメモをしましょう。勤務先がわかりますので名刺交換も有効です。
①氏名
②住所
③連絡先
④車のナンバー
⑤加入している保険会社
もし周囲に事故の目撃者がいるようであれば、証人として協力を依頼して連絡先を聞きましょう。
その場で示談しない
安易に「修理代はこちらで負担します」などと口約束をしないように気を付けてください。
実は口約束でも法的に示談が成立してしまいます。必ず「保険会社を通して進めたい」と相手に伝えるようにしましょう。
ただし、口約束はしてはいけませんが、自分が加害者の場合には、相手を気遣う言葉や、お見舞いやお詫びの言葉など、誠意ある対応を心がけましょう。
現場の記録
後ほど警察や保険会社から聞かれますので、忘れないうちに事故状況についてメモをしたり記録を取りましょう。
スマホなどで事故状況を撮影して記録することも大切です。またドライブレコーダーをつけている場合は、映像が上書きされないように記憶メディア(SDカードなど)を抜き取って保管しましょう。
保険会社に連絡
加入している自動車保険会社(任意保険)に事故報告の連絡を入れます。もし電話がつながらない場合は、自動車ディーラーなどの代理店に連絡を入れます。
インターネットで申し込むタイプのダイレクト損保に加入している場合は、電話がつながりにくいときも。その場合は後日かけなおすか、後ほどネットから事故報告をしましょう。
警察による現場検証
110番通報から少しして、警察官が現場に到着します。
現場検証に立ち合い、事故がどのように発生したのかありのままを報告しましょう。自分に有利となる証言をしたくなりますが、絶対に嘘とならないよう注意してください。
検証にかかる時間は1時間から、場合によっては2時間かかるケースもあります。
修理工場へ自走かレッカー移動
現場検証が終わったら、修理工場へ自走していくか、無理なようであればレッカー移動をします。もしオイルが(こぼれ)漏れていたら無理に動かそうとせず、ロードサービスを利用しましょう。
保険会社によっては修理工場が指定されていたり、ロードサービスが付帯されている場合がありますので、まずは保険会社に確認してみましょう。
もしものために準備しよう
ここまで事故対応について一連の流れを解説しました。次の項目では、万が一に備えて事前に準備されていなければならないもの、あると安心なものをご紹介します。
それは自動車保険(任意保険)への加入と三角表示板、発炎筒、ドライブレコーダーです。発炎筒以外はすべて任意とされていますが、多くの方が万が一に備えています。
準備するためには費用がかかりますので、はじめての車を検討している方は、車の予算に上乗せして考えましょう。
任意保険への加入
自賠責保険でもある程度人への補償はあります。しかし車や物に対する補償はまったくありません。また示談まで代行してくれるサービスもついていないため、もし任意の自動車保険に加入していない場合はすべて自分で解決しなくてはなりません。
自動車に乗るということは交通事故の可能性も同時に発生します。非常に大きな責任がついて回ります。必ず任意保険は加入するようにしましょう。
若い方はどうしても金額が高くなりがちですが、プランによっては負担が軽くなる場合も。はじめての車を検討する方は自動車販売店などの保険代理店に相談してみましょう。
三角表示板
三角表示板、または三角停止表示板ともいわれる反射板は、高速道路において車を停止させる際に表示義務があります。
一方、一般道での設置義務はありませんが、夜間などは車の存在が見えにくくなります。後続車へいち早くトラブルを知らせることができるため、二次災害の防止観点で設置は有効です。
三角表示板は車を購入しても付属されていません。オプションで購入するか、ホームセンターなどでも購入できます。車を手に入れたらすぐに積んでおきましょう。
発炎筒
発炎筒の正式名称は「自動車用緊急保安炎筒」といい、踏切や高速道路上での事故、一般道でも交通量の多い場所などで、事故や自車の存在を知らせるために使います。
法律でも搭載が義務化されており、必ず車の中にあります。大抵は助手席の足元あたりに付いています。赤い筒状のものが発炎筒です。
使い方は、まず発炎筒を車から取り外します。車外でキャップを外して本体を取り出し、マッチに火をつけるようにキャップの先端で本体を勢いよくこすると火が付きます。火が付いたら車の50m後方に置くなどして後続車に事故を知らせます。
しっかりと場所や使い方を確認して万が一に備えましょう。
ドライブレコーダー
事故当時者だけでは記憶があいまいなケースもありますが、ドライブレコーダーなら事故の前後をありのまま記録することが可能です。例えば、信号が青だったのか赤だったのか覚えていない場合でも、映像として残されていればすぐにはっきりします。
最近ではユーザーが事故映像やあおり運転に遭遇した映像をSNSにアップしたり、それがメディアに取り上げられたりして、ドライブレコーダーの役割が広く認知されるようになりました。
保険会社や裁判においても証拠として提出されるケースも増えています。そのため装着率は今や50%近くあるといわれています。
ドライブレコーダーを選ぶ際は、夜間の映像がクリアなものや、近年のあおり運転被害などもあり、前方だけでなく後方も記録できるタイプがおすすめです。
事故で良くある疑問
当て逃げやひき逃げについて触れましたが、なんとなく言葉は知っていても、具体的にはどういうものかわからない方も多いのではないでしょうか。
この項目では、そういった交通事故に関連した、初心者の方が疑問に思うことについてわかりやすく解説していきます。
過失割合ってなに?
相手がいる交通事故は、ぶつかった当事者に何らかの過失があることで発生します。加害者・被害者に関わらず、自分に過失があればその分の責任は取らなくてはなりません。
自分と相手の過失の度合をわかりやすく数値化したものが過失割合で、損害賠償額の比率となります。これは事故の当事者の加入している双方の保険会社が話し合って決定します。
表現方法は色々で、9対1、8対2、7対3であったり、90:10、80:20、70:30のようになります。数値が大きい方が加害者、少ない方が被害者となります。
痛みは後から出る?
事故直後はショックを受けたり、興奮して痛みを感じにくくなるといわれています。そのため、その場では大丈夫と思っても翌日痛みが出る場合があり注意が必要です。
良くある例として、追突された直後は問題ないように思えても、翌日になって首が傷む(むちうち症)になっていることがあります。
そのため、事故直後に大丈夫と思っても、念のために整形外科などの医療機関で検査を受けることが重要になります。
もし立ち去ってしまった場合はどうなる?
もし交通事故を起こしたにも関わらず、そのまま現場を離れてしまった場合、当て逃げやひき逃げとなり、厳しい罰則がありますので注意してください。
【当て逃げ】
物損事故を起こしたにも関わらず、何もせずにその場を離れてしまうと「当て逃げ」となってしまいます。危険防止措置義務違反および報告義務違反となり、それぞれ1年以下の懲役または10万円以下の罰金、3月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。
【ひき逃げ】
負傷者の救護をせずに現場を離れてしまうと「ひき逃げ」となってしまいます。救護義務違反により10年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。免許もすぐさま取り消しで欠格期間も3年以上あり、非常に重い罰則が待っています。
有料ロードサービスに加入するべき?
レッカー移動などのロードサービスは、自動車保険に加入すると無料で付帯されるケースがあります。
一方で、JAF(ジャフ/日本自動車連盟)のように年会費を支払ってロードサービスに加入している方も多くいます。
このふたつの大きな違いは、サービスの対象が「車」か「人」かです。
自動車保険は「車」で、契約した車に限定してサービスが受けられます。保険会社によっても異なりますが、無料でもレッカー移動やバッテリー上がりなどの対応など最低限のロードサービスは付属していることが多いようです。しかし年間利用回数が1回のみなどの制限が設定されている場合があるため注意が必要です。
一方でJAFは「人」で、車が違ってもドライバーが同じなら、例えば会社の営業車でも利用することができます。また年間何度でも利用することができる点も特徴です。その代わり、年会費として4,000円(初年度6,000円)がかかります。
JAFの加入者限定でレッカー移動できる距離が増えるサービスを展開している保険会社もあるため、両方に加入するのも手です。
相手と直接交渉しない
交通事故はどうしても主観や感情が入り、相手と直接交渉をすると収拾がつかなくなる恐れがあります。必ず保険会社を通して交渉をするようにしましょう。
なお例外として、自分に過失がまったくなかった場合に限り、保険会社の示談代行サービスが受けられません。相手と直接交渉しなければならないので注意が必要です。
しかし、交渉には法律などをよく理解している必要があります。できれば交渉はプロに任せたいところ。
自動車保険には弁護士特約などがあり、これを利用すると弁護士相談費用などを保険から賄うことができたりします。安心のためにも弁護士特約の検討をおすすめします。
すぐに修理をしない
もしも事故で車が壊れてしまったら、きっと誰もが元の姿に直したいと思うことでしょう。
しかし、ここで気を付けなければならないことが、自動車保険会社の承諾を受けずに修理に出してしまうと、保険金が受け取れない場合がある、ということです。
ちょっとした傷なら問題なくても、大きな修理となればほぼ必ず保険会社の担当が被害状況を調査してからの保険金支払いになります。
特に車を大切にしている方や、自分が被害者になった場合に起こりがちなトラブルです。すぐに直したい気持ちを抑えて、修理前に必ず保険会社に確認を取るようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
事故を起こしてしまったときの対処についてまとめると以下のようになります。
①すぐに停車して被害状況を確認
②負傷者がいれば救急車の手配
③車を安全な場所へ移動
④警察へ連絡
⑤相手や目撃者の確認
⑥その場で示談しない
⑦保険会社へ連絡
⑧修理工場へ自走かレッカー移動
はじめて車を購入する方は事故のことなど想像もしたくないと思います。しかし、道路にはたくさんの車が走行しているため、どんなに自分が注意して運転していても事故に遭う確率をゼロにはできません。だからこそ、遭ってしまったときの対処法を知っておくことが重要になってきます。
この記事を読んだことで、事故対応の理解がより深まり、事故発生時の冷静な対応や日頃の安全運転のきっかけとなりましたら幸いです。