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更新日:2019.04.01 / 掲載日:2019.04.01
自動運転中は動画視聴などスマホ操作はOKに?道路交通法の改正内容とは

2018年12月に自動運転車の公道走行の改正試案が出されました。2019年3月には道路交通法の改正案が閣議決定し、実現に向けて話が進められています。現行法では常に運転者がハンドルやブレーキを操作できる姿勢が求められていますが、自動運転中は走行中にある程度の作業は認められるようになるようです。
スマートフォンの操作をはじめ、その他の作業はどこまで認められるのでしょうか。今後の課題と合わせて解説します。
道路交通法の改正試案
現行法に、新たに自動運転車の公道走行を認めるための対策案が盛り込まれた改正試案が公表されたのは2018年12月です。3ヶ月を経て、2019年3月8日には、自動運転技術を実用化するための道路交通法改正案が閣議決定されました。
自動運転は技術によりレベル0~5に分類され、改正の対象となったのは自動運転「レベル3」です。
自動運転のレベルとは?
「自動運転車」と聞くと「自動車が勝手に運転してくれる車」というイメージですが、実際は自動化されている機能によって段階ごとに0~5レベルに分類されており、それを「自動運転レベル」と呼んでいます。
・レベル0:運転者が全ての操作を行う、一般的な自動車。
・レベル1:
ハンドル・アクセル・ブレーキ操作のうち、1つを自動化したもの。車線逸脱時のステアリング補正機能、あるいは先行車との距離を一定に保つための自動スピード調整機能のいずれかが備わっており、一般的には「運転支援システム」と呼ばれています。
・レベル2:
ハンドル・アクセル・ブレーキ操作のうち、複数を自動化したもの。車線逸脱時のステアリング補正、先行車との距離を一定に保つための自動スピード調整の両機能が備わっており、レベル1同様「運転支援システム」と呼ばれています。
・レベル3:
高速道路など特定の場所で全ての運転を自動化するが、緊急時は運転者の操作が必要となるもの。実際に「自動運転」と呼ばれるレベルで、緊急時やシステムの動作が困難となった場合以外、全ての操作を自動で行います。
・レベル4:
一定の環境や条件下で、全ての運転を自動化したもの。基本的にはレベル3と同じですが、緊急時にもシステムが自動対応するため、運転者の操作は必要ありません。
・レベル5:
全ての運転を自動化したもの。条件に関わらず運転に関わる全ての操作を自動で行います。
レベル4・5はどのメーカーも販売まで至っておらず、コンセプトカーの段階に留まっている状況です。
自動運転中、具体的にはどんなことまでならしてOK?
現行の道路交通法では、運転者は常にハンドルやブレーキをすぐに操作できる姿勢が求められており、スマホ操作やカーナビ画面の注視は禁止されています。しかし、今回閣議決定された道路交通法の改正案ではこの規定は適応されず、自動運転中にシステムが一定の条件を満たさなくなった場合、運転者がすぐに対応できるということを条件に、スマホ操作やカーナビ画面によるテレビ・映画などの視聴を容認する方針です。
また、レベル3の規定通り「直ちに適切に運転を引き継げる姿勢で」という条件付きですが、明確に禁止されていない項目としてパソコンによる作業や読書、食事などがあります。禁止されているのは「飲酒」「睡眠」だけなので、その他の作業は今のところグレーゾーンと言えるでしょう。ただし、明確に容認されていること以外を行っていて事故を起こした際は「安全運転義務違反」に問われる可能性があるので注意が必要です。
自動運転に伴い通常運転中の罰則を強化も
今回の法改正に伴い、従来の(自動運転以外の)運転中のスマホやカーナビ注視に対する罰則が強化される見通しです。携帯電話の使用等(保持)「5万円以下の罰金」が「6ヶ月以下の懲役または10円以下の罰金」に、携帯電話の使用等(交通の危険)「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」が「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」に変更され、反則金の限度額も大型自動車は1万円から5万円に、普通自動車は8,000円から4万円に、小型特殊自動車は6,000円から3万円にそれぞれ引き上げられます。
自動運転実用化に伴う問題点
メリットが多く挙げられる自動運転ですが、一方でいくつかの課題や問題点も残されています。
自動運転可能な条件が限定される
現時点で政府は2020年の自動運転実用化を目指していますが「高速道路で」という条件付きです。一般道での実用化は未だ現実的ではないと言えるでしょう。
運転の責任の所在が不明確
レベル1・2では運転中の責任は運転者が、レベル4・5ではシステムが負うことになりますが、緊急時の対応を運転者に委ねるレベル3では、実際に事故などが起こった時にどちらに責任が生じるのかが曖昧です。車内での運転者の様子を常時モニタリングするなど、新たな機能の検討が必要です。
情報取得整備やセキュリティが不十分
自動運転車が普及すれば、自動車や運転者だけでなく周囲の環境情報や道路情報、他の自動車から取得する情報などさまざまなデータを常に記録・モニタリングする設備が必要です。事故などの情報が瞬時に共有されるような整備が整わない限り、安全な自動運転は困難と言えるでしょう。
また、自動運転が実現化すればその分システムも高度化しますが、同時にパソコンなどと同様ハッキングされる可能性もあり、セキュリティ面の対策が今後の課題です。
2020年の実用化を目指す自動運転中にどのようなことが可能なのか解説しました。自動運転中はスマホ・カーナビ画面によるテレビや映画鑑賞をはじめ、その他の作業が可能となる見通しですが、あくまでも運転者が直ちに対応できる状態で行うことが基本です。
自動運転の実用化に対する問題点は未だ多く残されており、今後は自動運転の技術向上とともに、環境整備を行うことが最大の課題となるでしょう。