カーライフ
更新日:2025.08.05 / 掲載日:2025.08.05
ドゥカティ ムルティストラーダで大人の6輪生活を体験【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス、ドゥカティ
イタリア車好きの方はご存知でしょうが、イタリアには“モーターヴァレー”と呼ばれるエリアがあります。主となるのはエミリア=ロマーニャ州で、そこにはマラネッロやサンタアガタ、モデナなどがあります。言わずもがな、フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティの本拠地です。もっと言えばパガーニもすぐそばですし、ダラーラやアルファタウリもこのエリアに属します。
広域で考えれば、ミラノのアルファロメオやトリノのフィアットもそれほど遠くはありません。足を運ぶのであれば、横移動する感じです。州はまたぎますが、北イタリアにはこういったブランドが集中しています。文字通りの“モーターヴァレー”です。
その中心となるエミリア=ロマーニャ州を治める行政の中心地ボローニャに、ここで紹介するドゥカティがあります。モトGPやスーパーバイクで有名な2輪メーカーです。発祥は1926年ですから来年100周年を迎えます。老舗ですね。
現在は、アウディグループの一員として存在を光らせています。2012年にアウディ傘下になり、その後グループ内のスーパーカーカテゴリーを担当するランボルギーニのコントロール下で活動し、コラボモデルなどを登場させています。イメージ的に相性の良さそうな両ブランドかと。そんな位置関係ですから、我々カーガイも知っていて損のないブランドと言えるでしょう。4輪メーカーに近い2輪ブランドと言えます。

彼らのラインナップの中でここ数年注目を浴びているモデルがあります。ムルティストラーダ(MULTISTRADA)です。英語に言い換えれば“マルチストリート”。「道を選ばない」といった意味になると思います。今回はその中の上級モデルV4 Sに試乗したので、その詳細をお伝えしたいと思います。
特徴はスタイリングで、流行りのアドベンチャータイプをドゥカティらしく解釈しました。なので、グランドツアラーとして長距離を快適に走らせたりオフロードの走破性を備えながら、スポーツ志向のライダーも納得の運動性能を見せます。鋭い加速や安定したコーナリングがそうです。実際にその動きを体感しましたが、そこはやはりドゥカティなんだと納得しました。コーナーで倒し込んだ時の反応の良さやそこからアクセルを開いていった時の加速と挙動の安定感は抜群です。数々のレーシシーンで活躍してきたノウハウがそこに注入されています。カーマニュファクチャラー同様バイクメーカーも「サーキットは走る実験室」です。

簡単にスペックをご紹介すると、エンジンは彼らの自信作と言える1158ccのV4ユニットを搭載します。最高出力は170ps/125kW、最大トルクは124Nmで、V4らしい心地よい振動とサウンドをライダーに伝えます。2025年モデルは燃費の向上とともにエキゾーストシステムに手を入れサウンドをさらに良くしたそうです。みなさん知っていますか? 今時の高性能バイクには気筒休止システムが搭載されていることを。今回はその制御システムを見直し、さらなる燃費の向上と排出ガスの低減を行いました。
また、ムルティストラーダは車高が変わるのもポイント。速度に応じてシートの高さを自動調整します。リアショックのプリロードを制御する手法で、シート高は-15mm/-30mmの2段階で下がります。これで信号待ちの足つきも心配なし。しかもV4Sの日本仕様は標準で-30mmのローフォームシートと-15mmのローサスペンションが装備されていますからお得です。
走行中は50km/hを超えるとプリロードは標準値に上がるので、車高は高くなり乗り心地が良くなります。ロングツアラーに適しているのはこんなポイントも含みますね。


そんなムルティストラーダV4 Sの価格は350万円オーバー。それなりのプライスなので、ヨーロッパでは若者よりも大人たちにウケています。ガレージに流行りのSUVやスーパースポーツ系の四輪車を並べている方の相棒として選ばれていると聞きました。実際に走っているとそんな雰囲気を感じました。我先にと走るのではなく、街中では全体の流れを俯瞰して捉えられます。そしてスピードを出せる場所ではそれなりにアクセルを開く。そんな大人の余裕を感じさせる一台でした。ムルティストラーダは、まさに大人の6輪生活の良き相棒といったところです。
