カーライフ
更新日:2024.07.20 / 掲載日:2024.07.20
ポルシェデザインの黒いクロノグラフ【九島辰也】
文●九島辰也 写真●ポルシェ
ポルシェが新しい時計を発表するといった話を聞いて、先日その発表会場へ足を運びました。「ポルシェの時計?」と聞くと一見わかりにくいですが、「ポルシェデザインの時計」であれば、腹落ちしますよね。ウォッチ業界ではメジャーですし、そのデザインクオリティの高さは定評があります。ミーハーやオタクとは違う、センスのいい人が選ぶ腕時計といった印象です。
でも、正直ポルシェデザインというブランドについて詳しい人は少ないと思います。ご本家ポルシェの語り部はたくさんいますが、そちらの話を雄弁に語る人はいません。もしかしたらポルシェについて持論がある人が多すぎるのかもしれませんが。
その点で、今回少しわかったことがあります。ポルシェデザインはブランド名であって、会社はポルシェ・ライフスタイル・グループということ。そしてその前身がポルシェ・デザイン・グループだということです。グループとしているのは、時計以外はブランド名が異なり、それを運営する会社が別にあるから。それらを統合管理するカタチでグループになっています。
ポルシェデザインを立ち上げたのは、ポルシェ創業の孫にあたるフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェ氏だそうです。1963年に911を生み出した人物ですね。でもって1972年にカーメーカーとしてのポルシェから独立し、高級ライフスタイルブランド「ポルシェデザイン」をスタートさせました。自動車業界とは別の道を選んだようです。近年今回のようにカーメーカーのポルシェと協業していますが、以前は接点がなかった気がします。ポルシェデザインは独自に時計ブランドとしてIWCとコラボしたりして成長してきました。
でも創業者ポルシェ博士の孫が独立してデザイン関係の会社を起こすというのは、ポルシェの歴史を知っていると正しい流れのような気がします。そもそも1931年にポルシェ博士が立ち上げたのは、自動車に関するデザインとコンサルティングの会社でした。その意味でこの家系は“理詰めのデザイン”に強い気がします。それをゼロから立ち上げる。そんな血筋なんでしょう。
話がだいぶそれましたが、今回の発表はコラボ時計が主役でした。お相手は時計専門のwebメディアとして知られるHodinkee(ホディンキー)。ニューヨークに本社を置く時計業界のトレンドセッターです。メディアとして新商品を紹介するだけでなく、ECサイトも運営しています。まぁ、とにかくサイトを覗いてみるとわかりますが、情報が満載です。
今回発表された時計の名前は「クロノグラフ1-Hodinkee 2024エディション」と言います。1972年にフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェ氏がデザインした「クロノグラフ1」のオマージュです。「クロノグラフ1」は当時シルバーやゴールドが一般的だったウォッチ業界では珍しいブラックを採用したことで話題になったとか。ここ数年ブラックも一般的になってきましたが、その頃を思うと相当斬新だったことでしょう。新型がブラックを基調にしているのはそんな理由です。
「クロノグラフ1-Hodinkee 2024エディション」は1970年代にたどり着いた未来を見据えたデザインの新解釈と最先端のテクノロジーで仕上げられました。ケースは軽量で耐久性のあるチタンを採用、ケースバックにはPorsche DesignとHodinkeeの文字、それとリミテッドエディション番号が入ります。世界限定350本ですから、それを分母にした数字ですね。細かい時計の機能はここでは省きますが、この本数から察するとあっという間に消えてしまうことでしょう。
ということで、今回はポルシェデザインの時計をキャッチアップしました。クルマ好きと時計好きは親和性高いですからね。911を長年乗ってきた身からしてもポルシェデザインなんかはウルトラ気になります。