カーライフ
更新日:2023.04.10 / 掲載日:2022.07.08
知らなきゃ損する? 令和のクルマ 常識・非常識
最新ドライブ事情がまるわかり!

昨今、自動車業界には急速な変化の波が押し寄せ、それに伴い、ドライバーが普段当たり前のように行っているさまざまな行為や従来の常識が通用しないことも出てきた。今回は、これまでと変化したドライブに関する新常識や、今の時代だからこそフォーカスされるカーライフ全般の関心ごとについて紹介していきたい。
昨今のドライブ事情にまつわる常識・非常識
事故を誘発するような悪質な運転、「あおり運転」が話題だが、事例や判例などが増えてきたことで、その原因や避け方もわかってきた。ここで改めて、昨今の道路事情について考えてみよう。
常識・非常識①
制限速度100㎞/h超の高速道路がある
じつは制限速度120㎞/hの高速道路はすでに存在している。新東名高速道路と東北自動車の一部で数年前から運用されているのだ。
東名高速は全線開通してから、すでに50年が経過した。開通当時は100㎞/hも出せないクルマが多かったが、クルマの性能は急激に進化し、最高速度、安全速度とも圧倒的に高まった。また、走行台数が増えたことで渋滞を減らす必要性も生じたことから、渋滞を減らし、快適性と安全性を高めるために、運用が開始された。
引き上げ前は不要論もささやかれていた同施策だが、実際に引き上げられた今では、否定的な意見は見られなくなった。実際に走ることもせずに「スピード上昇=反対」という短絡的な考えは、今や非常識といえよう。
現状、交通量は東名より並行する新東名のほうが多くなり、両高速での渋滞回数が激減しているのも事実(国交省データ)。速く走りたいクルマが、安全な速度圏内で、しかるべき速度で走れることになれば、あおり運転や渋滞の減少にもつながるというものである。
現在、新名神の亀山西JCT〜草津JCT区間も6車線化拡幅工事中で、いずれ最高速度の引き上げも行われる見通しだ。

常識・非常識②
いつでも緊急通報ができる状況にしておく
近年の新車には、緊急通報ボタンが付いていることが多いが、これを押すだけでオペレーターに接続され、緊急通報することができる。まさに昨今のあおり運転問題をふまえた装備といえよう。
そこで「そんな機能が付いているクルマに乗ってなきゃ意味ない!」と決めつけるのは非常識。なぜなら、スマホを持っているなら代用できるから。ある程度新しいスマホなら「緊急通報」機能が備わっているはずだ。
もちろん同機能を使ったことがあるという人はそう多くないだろう。だからこそ、「運転中、とっさに」使うため、事前に使い方を知っておいて損はない。ただし、同乗者がいるなら操作してもらうべきだし、自分だけなら、安全な場所に停車してから操作することを心がけてほしい。

常識・非常識③
高速の上り坂では速度をキープする
高速道路を走っていると、突然目の前に上り坂というシチュエーションに遭遇することがある。このとき、多くのドライバーが意識的にも物理的にも速度を落としがちになる。
この速度低下が渋滞の原因になるということは昔からいわれてきたことだが、道路公団の広報活動やネットでの情報拡散により、ここ数年で一気に認知度が広がった。
しかし、実際に高速を走行していると、上り坂で速度低下するクルマはまだまだ多く見られる。とはいえ、上り坂で速度を落とさず走ることは、わかっていても難しいことなのだと諦めてしまうのは非常識である。
上り坂だからといって不用意にのんびり走っていれば、あおり運転を誘発することもある。交通の流れを意識して、なるべく速度を気にしながら走りたいものである。

常識・非常識④
走行中はなるべくウォッシャー液を使わない
タレントの梅宮アンナさんが、昨年末、自身のSNSに投稿した「走りながらウォッシャー液を使ったらいけない」という内容が、ネット上で物議を醸した。
走行中に前方車がウォッシャー&ワイパーを使用したことで、後方にいた梅宮さんのクルマがそのウォッシャー液を浴びたことに苦言を呈した形だ。これに対し、「ピカピカにした愛車が濡れたらガッカリする」という賛成意見と、「走りながらのウォッシャーは禁止されていない」という反対意見が飛び交った。
たしかにウォッシャー自体は視界を確保するために必要なことで、走行中の使用は道交法に違反することではない。しかし、愛車を綺麗にしている人にとって、非常に残念なことであり、それを悪意と受け取るドライバーがいるのも事実。
フロントガラスが汚れてしまい、緊急的に必要な場合は問答無用に使用するべきだ。しかし、余裕があるなら周囲の状況をよく見て、というのが常識的な考えではないだろうか。特に後方の近い距離にクルマがいる場合はやめたほうが、無用なトラブルを避けるにはいいかもしれない。

常識・非常識⑤
最低速度違反という違反も存在する
安全運転をしてさえいれば、あおり運転に遭遇することはないのかというと、それは現代の常識とはいえない。たとえば、「ゆっくり走っていただけであおられた」という経験があるというドライバーは多いはずだ。
そもそも道路交通法の第一条に「交通の安全と円滑を図り」と明記されている。前方車がよほど速くなければ、流れの円滑化のために、同程度の速度で走ることが望まれるし(制限速度内で)、高速道路なら法定最低速度が設定されている。
ただしトラブルでゆっくり走らざるをえなかったり、どうしてもゆっくり走りたいなら、後続車の邪魔にならないようにするべきだ。車線が2車線以上あるなら車線変更すればいいし、1車線ならクルマを安全に止められる路肩を見つけて停車して後続車を先に行かせればいい。
スマートな運転が、あおり運転防止にもつながる。もちろんあおるドライバーがすべて悪いのだが。

識者に話を聞きました! 追越車線キープがあおり運転や渋滞を生み出すって本当ですか?

日本とドイツの高速道路を比較して、最も違うことはいったいなんだろうか。もちろんあちらは全体の約半分が速度無制限で、残りの大部分が130㎞/hだから、平均速度がまるで違うが、実際に走っていてもうひとつ、大きく違う点がある。それは、車線変更の回数だ。
アウトバーンを走るドライバーは、頻繁に車線変更を繰り返す。あらゆるクルマはキープライト(日本でいうキープレフト)が義務付けられていて、たとえ200㎞/h出していても、右車線が空いていたら、そちらに戻るべく車線変更しなければならない。とにかく追越が終わったらすぐに右車線に戻らないと違反になるし、それがドライバーの最低限のマナーと思われているから、大型トレーラーなどの低速車を除いて、すべてのクルマが頻繁に車線変更を繰り返している。
一方、日本の高速道路では、車線変更が大幅に少なく、同じ車線を走り続ける傾向がある。混雑している場合は自然の成り行きでそうなるが、混んでいなくても、なかなか左車線に戻ろうとしないクルマがいる。そもそも日本では、片側3車線の高速道路では、左側2車線はどちらも「走行車線」なので、真ん中の第二車線を走り続けるのは、違反にもならないのだが(ドイツでは違反)。
回数の違い=練習量の違い。日本人は車線変更が苦手だ。車線変更は怖いし面倒臭いと感じている。なので、余計に車線変更をしなくなる。
が、追越車線を延々走り続けるのは交通違反(通行帯違反)だし、渋滞を発生させるし、あおり運転も生んでしまう。
高速道路の自然渋滞は、必ず追越車線から始まる。道路が混雑し始めると、多くのクルマが少しでも速く進もうと、追越車線を走りたがる。自然、追越車線の車間距離が短くなり、ちょっとした勾配の変化などによって速度が落ちると、それをきっかけに次々とブレーキが踏まれ、渋滞が始まってしまうのだ。
悪質なあおり運転は、言うまでもなくあおるドライバーが悪いのだが、速度が落ち、前車との車間距離が大きく空いているにもかかわらず追越車線に居座っていると、あおりを誘発する可能性がある。
とにかく、漫然と追越車線を走り続けていいことはひとつもない。たとえ苦手でも、練習だと思って車線変更しようじゃないか!



「答えた人」道路交通ジャーナリスト 清水草一
ジャーナリスト歴30年を数える大ベテラン。自動車評論家としての活動のほか、高速道路に関しても、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』『高速道路の謎』など著書多数。
カーライフにまつわる常識・非常識
ここまで「あおり運転」を中心としたドライブにまつわる話について紹介してきたが、ここからはそれ以外のカーライフ全般にまつわる新常識を解説していこう。昨今、社会的にも注目を集める話題とは?

あせってEVに乗り換える必要はない
欧米では各メーカーの電動化への動きが活発化しているが、日本はいまだにピュアEV(BEV)は数種類しか販売されていない。東京都などで電動化しようという働きかけも見受けられるが、日本全体がそうなると考えるのは非常識。なぜなら、日本には海外にはない優秀で魅力的なハイブリッドカーが揃っているから。まだエンジン搭載車を選び、その魅力を味わう時間は十分ある。
流行りのコーティングが守るもの
ガラスコーティングが空前のブームだ。最近は新車だけでなく中古車販売店でも、コーティングメニューを用意する店舗が増えていることは、もはや常識。コーティングはボディに皮膜を作って、汚れにくくするので、施工後は水拭きだけで新車のようなツヤが出てくる。これからの時期、塗装を劣化させる夏の紫外線からも守ってくれる。この対費用効果も新常識といっていいだろう。
自転車は同じルールと考える
令和3年の自転車関連事故は前年より増加しており、すべての交通事故に占める構成比も増加傾向にある。ただ原則的に、自転車は「軽車両」と位置付けられていて、車道通行、飲酒運転や二人乗りはNG、夜間はライト点灯などが義務付けられている。クルマを運転する側としては、自転車を邪魔と思うのは非常識。むしろ「クルマ」だと捉えて、自分の身は自分で守ると考えることが新常識である。
止まらない燃料価格高騰への対策
コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などが要因で燃料価格が高騰している。3月には関係閣僚会合で元売り業者への支給上限拡充などの対策がまとめられたが、この13年ぶりといわれる石油製品の高値水準がすぐに緩和されるようなことはなさそうだ。しかし、もし次のクルマを考えているのなら、燃料代が安くてエンジンの魅力を味わえるディーゼル車を選ぶというのは、クルマ好きらしい選択だ。
安全運転支援機能の有無をチェック
安全運転支援機能の対応や範囲は、車種、年式ごとに異なる。同機能が過渡期であるため、マイナーチェンジごとに進化している状態だ。もし中古車で購入を考えているなら、必要な機能が搭載されているかしっかり確認するということはもはや常識。最近では、逆走警告機能付きレーダー探知機や急発進防止装置など、後付けの運転支援機能装置も販売されているのでチェックしてみよう。
愛車を盗まれにくくする方法がある
新型ランクルは盗難被害件数がトップのモデルとして有名だが、セキュリティ機能も付けられている。しかし、プロの窃盗団にかかれば最新の盗難防止装置もすぐに解除方法が見つけられてしまう。窃盗団は時間がかかることを嫌がるため、逆に最近は、ハンドルロックなどアナログ系アイテムが再注目されている。また、愛車の行方を追いかけられる電波発生装置の設置も新常識になりつつある。