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更新日:2025.12.27 / 掲載日:2025.12.27
気になるEV、PHEV 1週間徹底試乗レポート![マツダ CX-80 PHEV]

文と写真⚫︎ユニット・コンパス ※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
自身も「ホンダe」オーナーである編集部 大塚が、さまざまな電気自動車に乗って何を感じるのか? 今回は初めてPHEVをシチュエーション別にテストしていきます。テーマはもちろん「徹底的にユーザー目線」で!
前回の記事はこちら▼
通勤から週末の遠出までを1台で完結させる、マツダ流PHEVの現在地

今回試乗したのは、マツダ CX-80 PHEV Premium Modern。CX-80は、マツダのラージ商品群に属する3列シートSUVで、そのなかでもPremium Modernはプラグインハイブリッド(PHEV)の上級仕様に位置づけられます。これまでこの企画では電気モーターのみで走行する100%EV(電気自動車)を中心に紹介してきましたが、今回は初めて、エンジンとモーターを併用するPHEVモデルを取り上げます。EVならではの静粛性やスムーズさに加え、エンジン車の航続性や使い勝手も併せ持つPHEVが、実際の生活シーンでどのような価値をもたらすのだろうか。

CX-80は、マツダのSUVラインアップにおけるフラッグシップとして、走りの質と上質さの両立をテーマに開発されたモデルです。縦置きエンジンに対応する新世代ラージプラットフォームを採用し、FRベースによる前後重量配分の最適化と高いボディ剛性を確保。全長約5mの大型SUVでありながら、自然で扱いやすいハンドリングを実現しています。CX-60と同系統のプラットフォームをベースにホイールベースを延長することで、後席の居住性も向上しており、多人数乗車時の快適性や高速走行時の安定感にも優れています。

PHEVモデルには、2.5L直列4気筒ガソリンエンジンと高出力モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを搭載。システム最高出力は327馬力、最大トルクは50.1kgmに達し、3列シートSUVとしては十分以上の余裕ある動力性能を備えています。発進や市街地走行ではモーター主体のEV走行を活かし、静かで滑らかな走りを実現。一方、長距離移動や高速道路ではエンジンとモーターが自然に協調し、航続距離や力強さの面でも不安を感じさせません。日常使いからロングドライブまで、シーンに応じて最適な走りを引き出せるのが、このPHEVならではの魅力です。加えて、質感の高いインテリアや充実した先進安全装備も備え、CX-80がフラッグシップSUVとして位置づけられている理由も随所に感じられます。その総合力を、1週間の試乗を通してじっくりと確かめていきます。
【通勤テスト】自宅~勤務先の片道約25km(往復約50km)をテスト! 普段使いの電費や乗りやすさをここでチェック! ~まずは引き渡しで第一印象を~

自宅から都内の勤務先まで、片道約25km(往復約50km)の通勤ルートを想定してテストを実施。都市部の一般道と高速道路が半々という実走環境で、CX-80 PHEVが日常の“移動道具”としてどれほど使えるかを検証した。
編集部 大塚「まず目を引いたのは、CX-80のデザインですね。実車を前にすると、写真で見る以上にプロポーションがよく、堂々としていながらも品のある佇まいだと感じます。派手に主張するタイプではありませんが、近づくほどに造形の美しさが伝わってきます。“大人のかっこよさ”をしっかりと感じさせるSUVですね」
CX-80のデザインコンセプト「Graceful Toughness」は、タフなSUVでありながら、より豊かで優雅な存在感を放つ3列SUVというもの。無駄な装飾を排し、ボディの面構成や光の反射だけで存在感を表現するというマツダの掲げる「魂動デザイン」を実現しています。周囲の環境を美しく映し込み、そこにある空間をもより心地よく上質に変えてしまうような優雅さは、このデザインの成果ですね。また、ロングノーズで後輪寄りのキャビンレイアウトは、FRベースのラージプラットフォームならではで、力強さと洗練が共存。サイドを直線的に伸びるシルバーのモールは、最後部Dピラー部分でより太く力強い造形となっていて、3列目にゆとりのスペースがあることを外観からもアピールしています。全体的にサイズを超えた室内空間の豊かさと力強く安定感のある佇まいが印象的です。また、グレードごとに異なる加飾やホイールデザインが用意されています。
通勤の足として、扱いやすさはどうでしょうか?

編集部 大塚「ボディサイズの大きさから、取りまわしに若干不安がありましたが、走らせてみるとその心配は無用でした! 通勤路や駐車時など道幅やスペースが限られた場面でも扱いやすく、ドライビングポジションの良さも相まって、大型SUVにありがちな持て余す感じがありません。さらに、PHEVはどうしても荷室が狭くなるイメージがありましたが、十分なラゲッジの広さが確保されていて、実用性にも驚かされました。じつによく考えられているなと」
全長4990mm×全幅1890mm×全高1710mmという堂々としたボディサイズながら、CX-80 PHEVが扱いやすく感じられる理由は、人間工学に基づいたドライビングポジションと、車両挙動の自然さにあります。最小回転半径は5.8m(CX-8と同じ)と、約5m級の3列SUVとしては標準的な数値ですが、ステアリング操作に対する反応が素直でクルマの動きが把握しやすいため、数値以上に取りまわしの良さを実感できます。また、縦置きエンジンに対応したラージプラットフォームとによる前後重量配分の最適化も、運転のしやすさを支える大きな要因といえるでしょう。さらにPHEVでありながら実用性を犠牲にしていないラゲッジスペースもCX-80の魅力です。3列シート使用時でも258Lの容量を確保し、日常使いには十分。3列目を格納すれば687L、さらに2列目まで畳むことで最大1971Lまで拡張でき、家族旅行やキャンプ、アウトドアギアの積載にも余裕で対応します。フロア下収納を含め、乗員数や用途に応じて柔軟に使える点も、大型SUVとしての完成度の高さを感じさせます。

【寄り道テスト】会社からの帰り道、買い物やちょっとした寄り道での、使い勝手やワクワク感をチェック!

編集部 大塚「PHEVならではの魅力は、電気だけで走れるEVモードと、バッテリー残量が少なくなってもエンジンを併用しながら走り続けられる安心感の両立にあります。我が家は住宅街なため、早朝の出勤時に音や振動を抑えられるEVモードは非常に重宝しています。近距離の移動は電気主体でカバーしつつ、長距離移動や充電環境が限られる場面でも不安なく使えるのが嬉しいですね。EVの快適さとガソリン車の安心感をうまく融合させた、PHEVならではの使い勝手の良さを実感できました」
CX-80 PHEVは、プラグインハイブリッド車として外部電源からの充電に対応しており、自宅や充電設備のある施設ではバッテリーを満充電にして、EV走行を主体とした使い方も可能です。モーターのみで走るEVモードでは、エンジン音や振動を抑えた静かで滑らかな走行を楽しめます。一方で、バッテリー残量が少なくなると、エンジンとモーターを最適に協調制御しながら走行を継続。エンジン走行を軸にしつつ、減速時の回生エネルギーなどで効率よく発電・充電を行うため、電力を使い切った後も航続距離を気にせず走れる安心感があります。この「充電できるEV的な日常使い」と「給油でどこまでも走れるエンジン車の自由度」を両立している点こそが、EVにはないPHEVならではの魅力ですね。

編集部 大塚「今回も家族でキャンプへ行ってきました! CX-80 PHEVがあれば、キャンプ場での電源確保という点でも心強く、必ずしも電源付きサイトを選ばなくても対応できそうです。我が家のようにキャンプを楽しむ家庭にとっては、使い方次第で自由度がぐっと広がる装備だと感じました。アウトドアの楽しみ方を一段引き上げてくれる、そんな可能性を感じました」

CX-80 PHEVは、蓄えた電力を住宅全体に供給するV2H(Vehicle to Home)には対応していませんが、車両の電力を取り出して使えるV2L(Vehicle to Load)に対応しています。専用のアクセサリーを用いることで、車両の駆動用バッテリーからAC100V、150Wの電力を供給でき、キャンプなどのアウトドアシーンはもちろん、災害時の非常用電源としても活用できます。PHEVならではの特徴として、バッテリー残量が少なくなってもエンジンを併用しながら発電・充電を行えるので、状況次第では給電を継続できる点も見逃せません。これは、バッテリー容量や充電環境に強く左右されるEVとは異なり、ガソリン車の機動力を活かしながら電動化のメリットを取り入れるというPHEVならではの利点です。日常からレジャー、そして万が一の備えまで、クルマの役割を広げてくれる存在なのです。
【お出かけテスト】ロングドライブでの電費や、快適性などを同乗者の意見も交えてチェック!

編集部 大塚「EVに乗っていると、何か物足りないなぁと感じることのひとつがエンジン音だったりするのですが、このPHEVではロングドライブ中に自然と耳へ入ってくる音を楽しめました」
このクルマは、モーターと4気筒ガソリンエンジンの2つを動力源としています。モーター走行時は高い静粛性を保ちながら、アクセルを踏み込むとエンジンが始動し、エンジンならではのトルクが立ち上がっていく。そのとき、ドライバーの印象が「切り替わる」感覚が重視されています。マツダは、静かすぎて無機質になりがちなモーター走行の音をあえて良しとせず、「いまどれくらい加速しているのか」「どれほどのトルクが出ているのか」といった情報を、音からも自然に感じ取れるよう意図的に調整しています。アクセルを踏み込んでエンジンが稼働すると、4気筒エンジン本来の音に加え、吸気音などを周波数調整して重ねることで、よりビート感のあるサウンドを演出。回転数が高まるにつれてトルク感を伴う音が強まり、そこにモーターの力も加わることで、頭打ち感のない伸びやかな加速とともに、ドライバーの高揚感を高める設計といえますね。

編集部 大塚「室内の雰囲気も魅力的です。キャンプ場まで妻と子どもを乗せて移動しましたが、後席の居心地は想像以上で家族からも大好評。子どもはいつも以上にぐっすり眠っており、車内の高い静粛性や上質な乗り心地が、運転している自分にもはっきりと伝わってきました。後席のリクライニングや、しっかりとしたアームレストも快適性を高めてくれるポイントですね。特に印象的だったのは、後席にもベンチレーション機能が備わっていること。国産車はもちろん、輸入車でもまだ少ない装備だけに、満足感は高いですね」

CX-80は、インテリアの質感にも強いこだわりが感じられます。PHEV Premium Modernでは、日本独自の美意識を反映した素材使いが特徴で、プリントや樹脂ではなく、温かみと表情を備えた天然木のメープル材をインテリアパネルに採用しています。視覚だけでなく触感からも上質さが伝わる仕立てです。後席の快適性にはとくに配慮されており、フルオートエアコンに加えてシートベンチレーション機能を備えることで、暑い季節でも乗員全員が快適に過ごせる環境が整えられています。リクライニング機構やアームレスト、多彩な室内照明なども相まって、移動中のリラックス性は非常に高い印象です。さらにUSBポートやワイヤレス充電にも対応し、スマートフォンやタブレットを使う場面でも不便を感じません。PHEVモデルならではの装備として、専用アプリによる事前空調設定にも対応しており、出発前から車内を快適な温度に整えられる点も実用的です。3列目シートは分割可倒式となっており、多人数乗車から大きな荷物の積載まで柔軟に対応可能。加えて、後席に子どもや荷物を置き忘れた際に注意を促すリアシートアラートなど、安全面への配慮も行き届いています。CX-80 PHEVは、単に大きなSUVという枠にとどまらず、幅広いシーンで快適かつ安心して使える1台といえるでしょう。
~試乗を終えて~

編集部 大塚「今回のCX-80 PHEVの走りはEVのような鋭い瞬発力を前面に出したものではなく、全体としてはガソリン車に近い、どっしりと落ち着いたフィーリングだと感じました。EV特有の刺激的な加速感を期待すると印象は違うかもしれませんが、日常から長距離まで安心して使える、懐の深い走りを大切にしたクルマだと思いました。今後、CX-60もテストしてみたいですね!」

CX-80 PHEVが目指す電動化は、俊敏な加速感を前面に押し出すものではなく、「走りの質」と「使い勝手」を高めることにあります。2.5Lガソリンエンジンとモーターを組み合わせたPHEVシステムは、発進時や低速域ではモーター主体で走行し、静かで滑らかな動きを実現。一方、速度域が上がるにつれてエンジンが自然に関与し、余裕のある力強さと安定感を両立させます。その制御の中核を担うのが、Mi-Drive(マツダ インテリジェント ドライブ セレクト)です。ノーマル、スポーツ、EV、オフロード、トレーラー牽引といった各モードに応じて、アクセルレスポンスや駆動力配分、エネルギーマネジメントまでを統合的に制御。ドライバーは複雑な操作を意識することなく、走行シーンに適した挙動を自然に引き出せます。さらに、i-Activ AWDによる安定した駆動制御や、i-Activsenseの先進安全技術が常に車両状態を見守り、大型SUVでありながら安心感の高い走行フィールを支えています。CX-80 PHEVは、エンジン車を基軸に電動化の利点を丁寧に積み重ねることで、快適性と信頼感を高めた1台と捉えることができます。
今回のまとめ
〇EV走行時の静粛性と滑らかな発進加速
〇バッテリー残量に左右されにくい安定したパワー感
〇大型SUVでありながら自然な操縦性
〇通勤からレジャーまで対応できる汎用性の高さ
△車両価格が高く、初期投資は大きい
△車重があるため、充電環境がないと燃費面で不利
△ボディサイズに慣れが必要な場面がある
今回の充電データ
| 出発時SOC | 約80% |
| EV走行距離 | 約35~40km |
| 寄り道後SOC | 約40% |
| 充電方式 | 普通充電想定 |
| 日常使用におけるEV走行完結率 | 高い |
| 貸与期間中走行距離 | 281km |
| 電費 | 4.5kwh |
| 燃費 | 13.6km |
【今回のテストモデル】マツダ CX-80 PHEV Premium Modern

| 全長 | 4990mm |
| 全幅 | 1890mm |
| 全高 | 1710mm |
| ホイールベース | 3120mm |
| 車両重量 | 2240kg |
| 乗車定員 | 6名 |
| 駆動方式 | 4WD |
| エンジン | 2.5L 直列4気筒 |
| エンジン最高出力 | 138kW(188ps) |
| エンジン最大トルク | 250Nm |
| バッテリー総電力量 | 17.8kWh |
| バッテリー種類 | リチウムイオン電池 |
| モーター最高出力 | 129kW(175ps) |
| モーター最大トルク | 270N・m(27.5kgf・m) |
| 一充電走行距離(モーター) | 67km(WLTCモード) |
| タイヤサイズ 前後 | 235/50R20 |
車両本体価格(標準): 719万9500円(消費税込み)
オプション:今回のテスト車両はメーカーオプション非装着(ノーオプション)

リポータープロフィール:自他共に認めるクルマ好き、キャンプ好き、ウインタースポーツ好きにして、気になることは徹底的に調べるのがモットー。今回は企画を成立させるために、ローンを駆使して自らEVを購入。これからEVにまつわる諸問題に体当たりしていきます! プロトコーポレーション 執行役員/2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。
