車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.30 / 掲載日:2015.08.27
【徹底紹介】フォルクスワーゲン ゴルフ

新世代プラットフォーム 採用により全方位で進化

1974年に誕生した初代ゴルフは、「FFレイアウト+2BOX」のハッチバックスタイルを、コンパクトカーの世界標準にした歴史的傑作。以来、ゴルフは世代交代のたびに、実用車が進む方向を示してきた。
2013年に投入された7代目の「VII」も、これまでどおりにコンパクトカーのお手本となる力作で、見どころを満載する。まず目がとまるのはスタイル。「V」から「VI」の変身は、実質はビッグマイナーだっただけに、新型の進化の幅は大きい。
ゴルフとしては、デザインチーフがワルター・デ・シルヴァに変わってから初のモデルで、シャープな直線基調の造形と精悍なマスクを特徴とする。だが、中身の進化はルックス以上。大胆なモジュラーコンセプトを具現化した新世代プラットフォーム、「MQB」を導入することで、すべてを一新しているのだ。「MQB」の成果のひとつは軽量化。安全性やボディ剛性を強化した上で、ボディ単体で23kgの減量を達成した。加えて主力の1.4Lユニットは、ブロックを鋳鉄からアルミに変更。ここでも20kgほどの減量を実践する。

そして、パッケージも一から見直し。要点は60mmのホイールベース延長だが、後輪を後退させるのではなく、前輪を43mm前方に移動させてプロポーションバランスを修正。視覚的にノーズが長くなったように見えるのはそのためだ。「VII」はスポーティでカッコいい。それが、多くのファンが抱く感想だろう。
なら、パワートレーンはどうだろう?日本導入時の心臓は1.2Lと1.4LのふたつのTSI(直噴+過給機)ユニットだが、「MQB」の導入にあわせて再設計されたEA211シリーズに変わっている。前作のEA111シリーズと比べて効率をより改善するだけでなく、省スペース設計としたのが見逃せない点。
で、大きな関心を呼ぶのはハイテク安全メカの充実。前方衝突の回避および軽減を行う「フロントアシストプラス」を新搭載。車速30km/h未満なら停止する能力を持つ自動ブレーキの「シティエマージェンシーブレーキ」は、その目玉の機能だ。また、車線逸脱を抑止する「レーンキープアシスト」も設定する。「VII」の進化はまさに全方位。ゴルフはまたも、「新・世界標準」を提示した。
文●森野恭行 写真●GooWORLD
お問い合わせ●フォルクスワーゲン カスタマーセンター TEL:0120-993-199
Detail
フォルクスワーゲン ゴルフ TSIハイライン(7速AT・DSG)
全長×全幅×全高 | 4265×1800×1460mm |
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ホイールベース | 2635mm |
トレッド前/後 | 1535/1510mm |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1394cc |
最高出力 | 140ps/4500-6000rpm |
最大トルク | 25.5kg m/1500-3500rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/4リンク |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ディスク |
タイヤサイズ前・後 | 225/45R17 |
新車価格
ゴルフ TSIトレンドライン(7速AT・DSG) | 264万円 |
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ゴルフ TSIコンフォートライン(7速AT・DSG) | 285万6000円 |
ゴルフ TSIハイライン(7速AT・DSG) | 322万2000円 |
ゴルフ GTI(6速MT/6速AT・DSG) | 389万円/391万円 |
ゴルフ R(6速MT/6速AT・DSG) | 539万円/540万4000円 |
ゴルフヴァリアント TSIコンフォートライン(7速AT・DSG) | 287万9000円 |
ゴルフヴァリアント TSIハイライン(7速AT・DSG) | 346万7000円 |
ゴルフヴァリアント Rライン(7速AT・DSG) | 367万1000円 |
ゴルフR ヴァリアント(6速AT・DSG) | 559万円 |
モデル主要変遷
2013.06 | 7代目ゴルフを発売 1.2L 4気筒ターボ「TSIトレンドライン」と「TSIコンフォートライン」、1.4L 4気筒ターボ「TSIハイライン」の3仕様を設定 |
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2013.09 | ゴルフGTIを発売 2L 4気筒ターボのスポーツモデル「GTI」。220馬力の最高出力を誇るエンジンに専用の足まわりや外観を組み合わせる。 |
2014.01 | ゴルフヴァリアントを発売 ステーションワゴンのヴァリアントが登場。先代と比べて荷室は20%アップの605Lを実現。後席を倒せば1620Lに達する。 |
2014.02 | ゴルフRを発売 ゴルフの高性能モデルが「R」。280馬力の2L 4気筒ターボに6速DSGと4モーションを組み合わせる。外観も専用仕立て。 |
2014.07 | 「TSIハイライン」の装備を充実化 ハッチバックとヴァリアントの「TSIハイライン」にスマートエントリー&スタートシステム「キーレスアクセス」を標準装備。 |
2014.09 | ヴァリアントに「Rハイライン」を設定 1.4L 直4ターボの「TSIハイライン」をベースに専用バンパー、専用17インチホイールなどを装着した「Rハイライン」を追加。 |
2014.09 | 限定車「GTIパフォーマンス」を発売 最高出力が10馬力高い専用チューンのエンジンを搭載。専用開発のデフロックなどシャシーも特別仕立て。販売台数は500台。 |
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2014.11 | 限定車「エディション40」を発売 専用色ライムストーングレーメタリックや専用デザインの17インチアルミ、アルカンターラ&ナパレザーシートを特別装備。 |
2015.01 | 限定車「プレミアムエディション」を発売 通常ではオプション設定のVW純正インフォテイメントシステムやバイキセノンヘッドライトなどを標準装備する限定車。 |
2015.04 | 限定車「ラウンジ」を発売 「TSIコンフォートライン」をベースとした限定車。バイキセノンヘッドライト、専用ファブリックシートなどを特別装備。 |
2015.05 | ゴルフRヴァリアントを発売 従来ハッチバックのみの設定だった「R」がヴァリアントにも設定された。280馬力の2L 直4ターボと6速DSGを搭載する。 |
2015.06 | 「ゴルフGTI」「ゴルフR」にMT車を設定 従来はDSGのみの設定だった「GTI」と「R」に6速MTが選べるようになった。また「R」のボディカラーが一部変更された。 |
サイズアップで室内空間を拡大 質感も磨き上げた

快適なドラポジが自然と決まるコックピット。
まず感じるのは質感のレベルアップ。全面にソフトパッドを採用したダッシュボードや、シルバーまたはピアノブラックの加飾パネルが目を引くところで、「VI」と比べてさらに車格がひとつ上がった印象がある。
でも、進化点はそれだけではない。ペダルやシフトレバーのレイアウトを見直し、ステアリングの調整幅を拡大することで、ドラポジをさらに理想に近づけた。リラックス気分で運転ができ、長時間走行でも疲れが少ないのは、人間工学に忠実なコックピット設計のおかげでもある。
電動パーキングブレーキを採用も進化のひとつだが、その効果は収納性を高めたセンターコンソールにも及んでいる。流行を追うのではなく、実質のメリットを持つものを積極的に採り入れる姿勢がゴルフらしい。
後席については、レッグルームを15mm、ショルダールームを30mm拡大したのがポイント。「VI」もファミリーカーとして十分な空間を有していたのだから、「余裕が増した」と考えればいいだろう。
なら、外寸はどうなったのか?4265×1800×1460mmのスリーサイズは、「VI」と比べて55mm長く、10mm幅広く、25mm低い設定だ。ホイールベースの延長により最小回転半径も5mから5.2mに拡大したが、実際にステアリングを握れば「ちょっと大きくなったかな」と思う程度。初代以来の伝統である運転のしやすさを、7代目もきちんと継承しているのがわかる。
「ハイライン」はコンフォートシートが標準で、本革張りパワーシートも選択可の設定だ。
先代比30L増の380Lの容量を確保。6対4分割可倒式の後席を倒せば1270Lまで拡大できる。便利なアームレストスルーも採用する。
TSIエンジンとDSGという高効率パワートレーンを継承
「直噴+過給機」のTSIを継承するが、ツインチャージャーは整理され、1.4L版もシングルチャージャー(ターボ)のみとなった。組み合わされるのは、DCTの流れをリードするDSGだ。高い伝達効率と、トルク伝達の途切れのない早い変速が自慢で、2L版には湿式クラッチの6速、他は乾式クラッチの7速を搭載する。
低負荷時(トルク85Nm以下)に2気筒を休止して燃費節減をするのがアクティブシリンダーマネージメントのACT。
「MQB」となり衝突安全性も向上。だが、より大きな関心を集めるのは、レーダーを使うプリクラッシュの技術だ。
すべてのグレードで高いレベルの走りを披露

1.2Lと1.4Lのゆとりと快適性の差は、高速クルーズでは明確なものとなる。ここいちばんの加速や高い快適性を求めるなら1.4Lが適任。
いかなる場面でも、安心してステアリングを握っていられるのがゴルフの魅力。急な挙動変化をみせないシャシーや、電動式とは思えないほど自然なフィールをもたらすパワステが光るところで、いずれのモデルも走りのバランスは優秀だ。
「VII」では、1.2L TSI搭載車のリヤサスが4リンク(マルチリンク)式からトーションビーム式に変更されたのが話題となったが、それが走り味の決定的な格差を生んでいるわけではない。4リンクサスに17インチ45タイヤを履く「ハイライン」は、ハンドリングの正確性がひとつ上の領域にあり、オプションの「DCC」(電制可変ダンパー)をプラスすれば乗り心地の快適度とのバランス点も高められることはたしか。
とはいえ、トーションビームサスに、16インチ55タイヤ(コンフォートライン)や15インチ65タイヤ(トレンドライン)を組み合わせた1.2L TSI搭載車の仕上がりもよく、相変わらずファミリーカーの模範といえる走りを提供する。
心臓に関しては、車重が60kg増すヴァリアントとのコンビでも、1.2L TSIの性能は「これで十分」と断言できる。とはいえ、余裕があり、扱いやすさにも優れるのは1.4L TSIのほう。速さや静粛性の面から見ても、やはり格上の印象がある。
大容量ラゲッジのワゴン版とスポーツモデルの「R」を用意
ワゴンのヴァリアントは欠かせない存在。リヤオーバーハングを310mm延長して、605~1620Lの大容量ラゲッジを実現したのがポイントだ。そして高性能モデルも充実。220馬力/35.7kg mの2L TSIを積む「GTI」と、280馬力/38.7kg mの2L TSIに4モーション(4駆)を組み合わせた「R」を展開する。
ゴルフヴァリアント
ゴルフR
「VII」はワゴンルックもスポーティな印象。下は最速の「R」。「VII」はハッチだけでなく、ヴァリアントでも選択できる。強力な心臓と専用パーツで武装したルックスが魅力だ。
MT仕様やEVモデルも追加され さらなる進化が期待される
バリュー度が高いのは「トレンドライン」。充実の快適装備とアダプティブクルーズコントロールが標準の「コンフォートライン」なら、満足度はより高まる。でも、ゆとりや快適性を重視するなら、心臓に余力がある1.4L TSI搭載車。上級指向なら「ハイライン」、スポーティ指向ならヴァリアントに設定の「Rライン」が向く。で、先鋭的なエコ派が注目するのがEVのeゴルフだ。そこに、「GTI」と「R」のMT車が加わり、今後はオールトラックやクリーンディーゼルの追加も予想される。大きく拡張する「ゴルフの世界」に期待が膨らむ。
中古車市場データ
中古車市場データ
登場から2年が経過し、新型のゴルフの流通量が増加している。一部の車両は200万円以下の予算で購入できるが、予算の目安は250万円から。「R」モデルは500万円近い価格だ。