車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.07 / 掲載日:2014.12.25
【徹底紹介】BMW 3シリーズ

時代の流れを的確に掴み変革を成し遂げた6代目

2012年初頭に日本市場に投入されたF30・3シリーズは、多くの革新を盛り込んでいた。そんな6代目が誇る新技術の中でも大きな物議を醸したのは心臓。「BMWといえば直6」のイメージを強く抱くファンにとっては、4気筒2Lを搭載する新「328i」の存在は、容易に受け入れられるものではなかった。
直噴+ツインスクロールターボを核とする「ツインパワー・ターボテクノロジー」により、新世代4気筒はE90時代の「325i」を大きく超える245馬力/35.7kgmの性能を実現。その面では「328i」を名乗る資格は十分だったのだが、多くのファンは、BMWの自然吸気直6ならではの絹のように滑らかな回転フィールや、中高回転域で奏でる官能的なサウンドが「過去」のものになることを惜しんだのだ。
とはいえ、BMWの今のスローガンは「エフィシェント・ダイナミクス」。レスシリンダー&ダウンサイジングは、BMWがこれからの時代に最適な戦略として選んだものなのだから、すでに方向性は決していた。

そこで3シリーズのラインアップを見れば、現存する直6ユニットは「アクティブハイブリッド3」や「335i」が積む3Lターボのみ。それにとどまらず、12年春に追加した2L 4気筒クリーンディーゼル搭載の「320d」が大好評を博しているのだから、時代の流れが大きく変わったことを思い知らされる。
少なくとも、BMWがF30で実践した改革は、時代を的確に捉えていたと言っていい。それは、デザイン改革にもあてはまる。「バングル」から「ホーイドンク」に政権が変わって、BMWデザインはスポーティさやエレガントさを、より明解に表現する方向へと変化。「BMWらしさ」にこだわるそんな新世代の造形も、多くのファンの支持を集めている。
プレミアムDセグメントにおける3シリーズの存在感は不動だが、強さと安定感の理由は、信念を変えることなく、時代に応じて正しい進化を続けてきたからにほかならない。
文●森野恭行 写真●GooWORLD
お問い合わせ●BMWカスタマー・インタラクション・センター TEL:0120-269-437
Detail
BMW 320d Mスポーツ(8速AT)
全長×全幅×全高 | 4625×1800×1430mm |
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ホイールベース | 2810mm |
トレッド前/後 | 1525/1540mm |
エンジン | 直4DOHCディーゼルターボ |
総排気量 | 1995cc |
最高出力 | 184ps/4000rpm |
最大トルク | 38.7kg m/1750-2750rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/5リンク |
タイヤサイズ前 | 225/45R18 |
タイヤサイズ後 | 255/40R18 |
新車価格
3シリーズセダン(8速AT) | 427万円~785万円 |
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3シリーズツーリング(8速AT) | 449万円~796万円 |
3シリーズグランツーリスモ(8速AT) | 523万円~805万円 |
発売:2012年1月
HISTORY
2012.01 | 3シリーズセダンを発売 6代目3シリーズが登場。当初は2L 4気筒ターボエンジンの328iのみの設定。「スポーツ」「モダン」など4仕様から選べた。 |
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2012.04 | 「320i」を発売 エントリーモデル320iを追加。328iと同じ2L 4気筒ターボを積むが、前者は245馬力なのに対し、こちらは184馬力。 |
2012.07 | 「アクティブハイブリッド3」を発売 3L 6気筒ターボにモーターを組み合わせたハイブリッドモデル。0-100km/h加速5.3秒と、動力性能も一級品である。 |
2012.08 | 「320i xDrive」を発売 「320d ブルーパフォーマンス」を発売 高い走行安定性を誇る320iの4WDモデルが登場。また同月に2L 4気筒のクリーンディーゼル仕様も追加設定された。 |
2012.09 | 「Mスポーツ」を設定 3シリーズツーリングを発売 専用の外観やサスを搭載する「Mスポーツ」を追加。さらに先代から積載容量を拡大したステーションワゴンも新登場。 |
2012.12 | 「320iツーリング」を発売 当初は320dと328iの2タイプだったツーリングに、新たにエントリーモデル320iも追加設定。ユーザーの選択肢が増えた。 |
2013.04 | 「320i xDriveツーリング」「335iツーリング」を発売 先に追加された320iツーリングに4WDのxDriveが加わった。同時に3L 6気筒ターボを積む最上級モデル335iも新設定。 |
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2013.06 | 3シリーズグランツーリスモを発売 クーペのようなエレガントなスタイルと4ドアモデルの実用性を兼ね備えた新モデル。エンジンは全部で3機種を設定。 |
2013.08 | 一部改良 通信モジュールを利用してドライバーの利便性を向上する「BMW SOSコール」および「BMWテレサービス」、歩行者検知機能付きの「衝突回避・被害軽減ブレーキ」を全車標準装備。 |
サイズアップで室内はゆとりが増し質感も大幅に向上

6世代に渡り成長を続けてきた3シリーズ。E90からF30の世代交代では、ホイールベースを50mm、全長を85mm拡大している。より立派に見えるようになった理由のひとつがそこにある。また、後席のニールームにも15mmの余裕を加えた。居住空間は今や、二世代前の5シリーズと肩を並べるほどのものだ。
さらにパッケージ面では、右ハンドル車における特別な日本市場対応も見逃せない。ドアハンドル形状を変更することで、全幅を左ハンの1810mmから1800mmに縮小しているのだ。立体式駐車場を利用する人や、車庫証明などの寸法制約がある人にとっては、とてもありがたい配慮。E90時代からのよき伝統が継承されたのは喜ばしい。
インテリアに関しては、デザインの機能性やスポーティさが進化し、質感に磨きがかけられたのが見どころだ。セダンやツーリングでは、「スタンダード」、「スポーツ」、「モダン」、「ラグジュアリー」、「Mスポーツ」の5つのトリムを展開するが、仕上がりはどれも魅力的。さらにはオプションも充実しているのだから、選択に困ってしまうほどだ。
ちなみに、今回の撮影モデルは「Mスポーツ」。ルーフトリムを含めて内装をブラックで統一し、スポーツシートやMスポーツ専用レザーステアリング、アルミニウムトリムを標準で採用する。パドル付きの8速スポーツATが標準というのも、「Mスポーツ」の大きな魅力と言える。
インパネ中央上部の見やすい位置に8.8インチのワイドディスプレイを置く。
8速ATのセレクターは洗練された操作感の電気式。
アップデートを重ねるiDriveのコントローラー。
荷室容量は480L。4対2対4分割の可倒機構をハイブリッド車にも採用。
320dは燃費基準+20%を達成。日本のエコカー減税にも積極的に対応する。
クリーンディーゼル搭載の「320d」の人気は絶大。
専用スポーツサスを採用するMスポーツは、前後異サイズの18インチタイヤを標準で履く。当然、ランフラットだ。
伝統のFRコンセプトを守りつつエコ技術や電子制御を導入

フロントエンジン・リヤドライブの方式は、3シリーズが守りとおしてきたよき伝統。これをベースに、高度な電制4駆メカを搭載する「xDrive」も展開する。駆動メカに関しては、F30の世代でATが6速から8速へと進化したのも見逃せない点だ。また、走行モードを切り替えられる「パフォーマンスコントロール」の導入や、「335i」のメカを基本にモーターとバッテリーを加えた「アクティブハイブリッド3」の設定も、注目すべき進化点と言える。
ツインスクロールターボのガソリンも、可変ジオメトリーターボのディーゼルも、「直噴+ターボ」が核となる技術。冷却性を考えて、空冷インタークーラーをフロントの理想的な位置に置く。
ディーゼルエンジンを得てさらに幅を広げた走り

3シリーズのステアリングを握ると、思わず顔に笑みが浮かぶのは、「走る・曲がる・止まる」の動きが気持ちよく決まるから。根源にあるのは、BMWが磨き続けてきたFRの駆動レイアウトと、その能力をフルに引き出す高度な設計だ。50対50に近い前後重量配分にこだわるのも、BMWの信念であり流儀なのだ。
そして快感をもたらすエンジン。今の主役はクリーンディーゼルだが、単なる高効率に終わらせないのがBMWらしい。184馬力のパワーは「320i」と横並びだが、トルクは「328i」を大きく突き放し、「335i」(ツーリングやGTに設定)に肉迫する38.7kgmを発生。
大きなトルクの波に乗った豪快な加速フィールや、高速クルーズでみせるゆとりや高度な静粛性が、「ディーゼル派」のBMWファンを増やす大きな要因となっている。ディーゼルはうるさくて、眠たいという印象が強いが、BMWの4気筒2L直噴ターボユニットはレスポンスもよく、4000回転を超えてもスムーズかつ元気に回るのがいい。
アイドリングや低速域の加速時には「カラカラ音」が気になるが、ペースに乗れば「これがディーゼル!?」と驚くほど静かだから、快適性に重きを置く人をも納得させられる。高人気がうなずける出来だ。
鋭い回頭性と安定した旋回姿勢が「Mスポーツ」の高い能力を物語る。オプションのアダプティブMサスは、「走り」と「快適性」の能力をともに引き上げるための有効なアイテムだ。
スポーティな走りのツーリングユーティリティーに優れるGT
ツーリングは2代目E30の時代から存在する定番モデル。容量495~1500Lの荷室を備えるワゴンにもかかわらず、セダンとほぼ変わらない「駆け抜ける歓び」を提供してくれる。そして、大柄な背高5ドアボディを持つGT(グランツーリスモ)は、5シリーズに匹敵する広くて快適なキャビンと、ツーリングに負けない積載性を兼備するマルチパーパスな新顔。重厚な乗り味もGTの特色だ。なお、この世代からクーペ系は「4シリーズ」へと移行した。
ツーリング
グランツーリスモ
スポーツセダンとしての本命はMスポーツ
走りの気持ちよさと経済性を高次元でバランスさせているのが「320d」だ。長距離走行の機会が多い人には、とくにクリーンディーゼルをお薦めする。でも、車両価格を含めたバリュー度や、軽快感ある走行フィールを好む人には、ガソリンの「320i」や「328i」のほうが向いている。グレード選択は「お好みで」が基本だが、3シリーズをスポーツセダンと捉えるなら本命は「Mスポーツ」だろう。アダプティブMサスやバリアブルスポーツステアリングなどのオプションは、よく考えて価値判断をしたい。
中古車市場データ
中古車市場データ
デビュー年式では200万円代の物件も若干流通しているが、全体的に見ると年式別で相場に差は少ない。ハイブリッドモデルはまだ高値。また、グランツーリスモの流通量が少ない。