車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.07 / 掲載日:2013.09.26
【徹底紹介】BMW 1シリーズ

劇的な進化を続けるもブレることのない理念
世界の上級2ボックスカーが覇を競うCセグメントにおいて、BMW1シリーズは異彩を放つ存在だ。決定的違いは駆動方式で、このクラスで唯一のRWD(後輪駆動)を採用する。空間効率やコスト面での優位性を持つFFではなく、走りの質感やスポーツ性に優れたFRをあえて選ぶという戦略に、BMWの伝統と強いこだわりが表現されている。
そんな1シリーズの原点は、93年に誕生した3シリーズ・コンパクト(E36/5)。まだ3シリーズ派生のコンパクトハッチという位置づけで、ボディタイプは2代目のE46/5においても3ドアのみの設定だったが、BMWは見事にCセグ市場攻略の突破口を開くことに成功する。

で、その後を継いだのが、04年に投入した本格Cセグモデルの1シリーズだったというわけ。与えられた使命は、BMWのモデルレンジとユーザー層の裾野拡大で、順を追ってクーペやカブリオレも追加された。そうしたBMWの末弟の支持者のなかには、コンパクトだったかつての3シリーズオーナーも少なからず含まれていたが・・・それもまたBMWの目論みどおりだったと言っていい。
そして11年秋には、初代(5ドアのコードネームはE87)から、2代目となるF20へと発展。よりダイナミックに、さらにスポーティになったルックスや、質感を大きく高めたインテリアが注目を集めたが、パワートレーンの大変身も見逃すことはできない。BMWが「ツインパワーターボ」と呼ぶ先進の直噴+ターボユニットと、クラス初の8速ATを導入することで、走りと環境性能の大幅な進化を実現してみせた。
さらに12年秋には、「史上最強の“1”」と言えるM135iも登場!
Cセグ市場における存在感を、F20・1シリーズは一段と高めた。
文●森野恭行 写真●佐藤亮太
お問い合わせ●BMWカスタマー・インタラクション・センター TEL:0120-269-437
Detail

BMW M135i(8速AT)
全長×全幅×全高 | 4340×1765×1430mm |
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ホイールベース | 2690mm |
トレッド前/後 | 1510/1535mm |
エンジン | 直6DOHCターボ |
総排気量 | 2979cc |
最高出力 | 320ps/5800rpm |
最大トルク | 45.9kg m/1300-4500rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/5リンク |
タイヤサイズ前・後 | 225/40R18・245/35R18 |
新車価格
116i(8速AT) | 308万円 |
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116i スポーツ/スタイル(8速AT) | 318万円 |
116i Mスポーツ(8速AT) | 338万円 |
120i(8速AT) | 367万円 |
120i スポーツ/スタイル(8速AT) | 387万円 |
120i Mスポーツ(8速AT) | 397万円 |
M135i(8速AT) | 549万円 |
HISTORY
2011.09 | 1シリーズをフルモデルチェンジ 洗練された内外装のデザインと居住性を高めた室内、環境性能をアップした2代目1シリーズ。136馬力の116iと170馬力の120iを設定。いずれも1.6Lターボ+8速ATを搭載する。 |
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2012.05 | Mスポーツを発売 M社が開発した専用装備が与えられる「Mスポーツ」が設定された。専用外観パーツ、スポーツサスペンション、スポーツシート、専用の内装トリムなどが与えられている。 |
2012.08 | M135iを追加 M社が手がけるスポーツモデルの新シリーズ「Mパフォーマンス」が登場。その第1弾となるのが「M135i」で、3L直6エンジン+8速ATを搭載。最高出力は320馬力を誇る。 |
2013.02 | 特別限定車「ファッショニスタ」を発売 116iをベースとした370台の限定車が登場。ホワイトのキドニーグリル、室内にはホワイトのアクリルガラストリムを採用するのが特徴。リヤビューカメラなどの装備も充実している。 |
走りの爽快感と機能性が両立する秀逸な設計
E87からF20への世代交代では、全長を95mm、全幅を15mm、ホイールベースを30mm拡大するなど、ボディはやや大きくなった。だが、5.1mの最小回転半径はそのままで、「コンパクトで扱いやすい」という1シリーズの美点は維持されている。
それでいて、足元空間を20mm拡大した後席の快適度は確実に高まり、ラゲッジ容量も330Lから360Lに拡大しているのだから、パッケージの進化はあきらか。直6も積むFRモデルらしいロングノーズを見ると、「実用性は期待できない」と想像するかもしれないが、2代目1シリーズは家族ユースにも対応する能力を持っているのだ。
そして、質感向上や装備の充実度アップにも、新型の進化を見て取ることができる。このクラスの競争は激しいが、1シリーズの実力は一線級。3シリーズなどからのダウンサイジングユーザーも、十分に満足できるクオリティと言っていい。
モデル展開は116i、120iともに、基準となるモデルに「スポーツ」、「スタイル」、「Mスポーツ」を加えた全4タイプの構成。「スポーツ」はライトなスポーティ感覚、「スタイル」はファッショナブルな演出、「Mスポーツ」は本格指向のスポーツ性をウリとする存在で、どのモデルも個性的な仕上がりだ。「スポーツ」と「スタイル」は、116iを例にすればベース車の10万円高という手頃な価格設定も光るポイントで、コスパの高さも注目に値する。

コクピットは上級BMWと共通のハイセンスなイメージ。各部の質感も、プレミアムコンパクトにふさわしい高度なものだ。M135iやMスポーツはスポーツシートやMスポーツレザーステアリングを標準装備。
ラゲッジ容量は360~1200L。写真の4:2:4分割シートバックはオプションで、通常は6:4分割となる。
M135iは8.8インチディスプレイとHDDナビを標準装備。
グレーペイントのドアミラーや左右出しのテールパイプが、M135iの精悍なイメージを一段と強調する。
M135iは前225/40、後245/35サイズの18インチタイヤを標準で履く。BMWだから・・・言うまでもなくランフラットタイヤだ。強力な専用ブレーキシステム(前は4ピストン式)にも要注目!
個性豊かなパワーユニットは環境性能も向上させている
116iと120iが積むのは、基本設計を共有する1.6L直噴+ツインスクロールターボユニット(N13B16A型)。なのに、116i用が136馬力/22.4kgm、120i用が170馬力/25.5kgmと性能に差があるのは、過給圧コントロールのチューニングを変えているためだ。中高回転域のパワー感や伸びのよさにこだわる人にはやはり、スポーティな性格を持つ120iがお薦め。とくに「スポーツモード」を選択したときには、爽快な加速フィールを楽しませてくれる。
ちなみに、オートスタート&ストップ機構、ブレーキエネルギー回生や、エアコンも省エネ制御とする「ECO PRO」モードを全車標準装備。「駆け抜ける歓び」を追求しつつ、環境対応もしっかり行うのが、今のBMW流なのだ。
自慢の8速ATを116i、120i、M135iの各モデルに展開。走り味をスイッチで選択できるドライビングパフォーマンスコントロールも、F20で導入された注目のハイテクだ。
ライバルを凌駕するハイレベルな操縦性

F20には、走りの感動を呼ぶ要点がいくつもある。まずは「直噴+ツインスクロールターボ」の新世代エンジンと、このクラスでは贅沢な8速ATのコンビが紡ぎ出す洗練された加速フィールで、ひとクラス上の上質感と快適性を味わわせてくれる。
そしてお次は、先代から大きく改善された乗り心地。18インチを履くM135iでも直接的なゴツゴツ感を伝えることはなく、Mスポーツサス+17インチのコンビを選択したモデルでは「ランフラットタイヤを履くとは思えないほど、しっとりとしていて快適」と表現できる乗り心地を提供してくれるのだから、乗り味の上質さや快適度は本物だ。
で、接地感に優れる「いい足」は、操縦安定性のレベルアップにも貢献している。持ち前のキビキビしたフットワークを、洗練度を高める方向で進化させたのが注目点だ。フロント荷重が重めなM135iでも、「スパッ」とインに切れ込むシャープなハンドリングを実現しているのはさすがBMW! しかも、高速域の高度なスタビリティや、限界領域の高いコントロール性もバランスさせているのだからお見事と言える。
走りの資質はFRだからこそ到達できる高い領域にあり、その一点だけをとっても「1シリーズを選ぶ価値がある」と結論づけられるものだ。
ライバル勢も魅力を高めるが依然として揺るがない優位性
「速さ」や加速フィールの「スポーティさ」にこだわりが薄いのなら、リーズナブルな価格設定の116iをお薦めする。自然吸気1.6Lの旧116iとは違い、どんな場面でもかったるさを感じることはない。それが、直噴ターボと8速AT導入の最大の効能だと言える。でも・・・BMWらしいスポーティさにこだわるなら120i。ベース車以外には17インチタイヤが標準化されるのもポイントで、バリアブルスポーツステアリング(ロック・トゥー・ロック約2.1回転とクイック)やMスポーツサスをチョイスすれば、一段と冴えた走りを楽しむことができる。で、それでも満足できない人のためにはM135iがある。攻めるほどに感動を呼ぶ完成された走りは、本物指向のマニアをもうならせるものだ。
中古車市場データ
中古車市場データ
デビュー当時から人気の高いモデルだけあり、物件数は非常に豊富。2013年の相場の上限が高いのは、M135iが追加されたため。ボディカラーはホワイト、ブラックが多い。