どっちのジェイドがアナタ好み！？

【本記事は2015年7月にベストカーに掲載された記事となります。】ジェイドは先代までのオデッセイやストリームなど、低全高の乗用ミニバンを統合した新車種。これがホンダの公式見解だ。しかし先にデビューしたジェイドハイブリッドに試乗したときにはその公式見解にあまり納得できなかった。そもそもジェイドは2013年から中国市場に投入されているグローバル戦略車。日本市場向けに最新の1.5Lハイブリッドを搭載したのは、燃費関心度の高い市場特性を考量した結果だった。しかし、このパワーユニットでフィットハイブリッドより200kg以上重い車重を引っ張るのは荷が重い。ホンダセンシングなどの先進安全装備もあるし、豪華仕立てのインテリアや170mmもスライドする余裕の後席レッグスペースも面白い。でも、実際に乗ってみるとゆったり鷹揚な乗り心地が特徴のダンナ仕様、そんな印象だった。ところが、今回追加投入されたジェイドRSは乗ってビックリ、かなりキャラクターが違う。端的にいって、走りがずっと活発になってクルマがイキイキしてる感じ。これなら、ストリームやオデッセイアブソルートの後継といわれても納得と感じた。

いうまでもなくこのRS、最大の違いはそのエンジンにある。ジェイドRSに搭載されているのはステップワゴンでデビューした1.5Lダウンサイズターボだが、そのドライバビリティが秀逸。200kg重いステップワゴンをスイスイ走らせているだけに、1510kgのジェイドRSになるとスイスイがビュンビュンに変わる。ハイブリッドで気になったもっさり感がまったくない。スペック的に見ると、これはちょっと不思議。1.5Lターボのスペックは150ps／20.7kgm。エンジン単体で見ればハイブリッドより出力で15％、トルクでは30％勝っているものの、モーターのアシスト分（29.5ps／16.3kgm）を考慮すればむしろ逆転。なのに、走りだしからグイッとくるトルク感は過給ならではの力強さ。トルクカーブはステップワゴンより全体的にリニアに設定されていて、高回転域まで引っ張ったときの伸びも気持ちイイ。さらに、シャシーも最近のホンダ車の中でベストと言いたい仕上がりだ。

ステアリングは反応が正確でかつ追従性抜群だから、ほとんどロールも感じさせず狙ったラインにピタリと乗る。ハイブリッドではここまでライントレース性のよさや正確なフットワークを実感しなかったのだが、どうやら大幅にサスセッティングを変更した結果らしい。具体的には、専用ダンパー、前後スタビ強化、バネレート変更、リアに高機能ブッシュ、リアジオメトリー変更、ステアリングレシオのクイック化など……。ほとんど全面変更じゃないですか！？さすがに、ここまで徹底したチューニングをするとハンドリングは納得の仕上がり。「ダテに背の低いプロポーションを採用しているわけじゃない！」低重心の利点を遺憾なく発揮した満足感がある。唯一、燃費性能はハイブリッドに分があるけれど、それ以外については「だんぜんジェイドはRSがお薦め」というのが試乗後のぼくの見解だ。

ジェイドRS vs. レヴォーグ1.6GTダウンサイジングターボの最新対決レヴォーグ1.6GTは約280万円。4WD分高いと考えると、ジェイドRSの253万円と同価格帯のライバルといえなくもない。先入観としては、レヴォーグの方がだんぜんスポーティ。エンジンは20psもパワフルで、シャシーも明確なスポーツセッティング。ジェイドのルーツは乗用ミニバンだから「走りはセダンとスポーツカーくらい違うんでしょ？」そう考えがちだ。しかし、直接乗り比べて見た結果は、「いや、そんなに違わない」これが正直な感想だ。まず、実用域だけで見ると、ジェイドの1.5Lターボの健闘が光る。対して、レヴォーグの1.6ターボは、上まで回して本領を発揮するタイプ。ハンドリングもそう。攻め切るならレヴォーグだが、ジェイドは常用域の切れ味が気持ちイイ。日常を重視するなら、ぼくのお薦めはジェイドRSですね。

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