中古車購入
更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.29
全方位死角なしスズキ スペーシアは買いだ!!
長い間にわたって便利に使える軽自動車

NA圧倒的アドバンテージの燃費性能
【本記事は2013年4月にベストカーに掲載された記事となります。】「スペーシアは突出した機能は備えていない。長い間にわたって便利に使える軽自動車をめざした」と開発者はいう。ライバル車のタントにはボディの左側にワイドなスライドドア、N BOXでは抜群に広い室内があるが、スペーシアで目立つのは29.0km/LのJC08モード燃費だけ。燃費は時間を経れば追い付かれ、長期的なウリにならない。そこで「突出した機能はないのか」と尋ねた返答が先のコメントだ。突出した機能がない代わりに、長い間にわたり便利に使えるのがスペーシアだという。真偽を確かめるべく試乗を行なった。
CHECK1 動力性能、ハンドリング、乗り心地

NAのパワー&トルクは52ps、6.4kgm。ややパワー不足だが、エンジン回転を高めにキープするとよく走る
まずはノーマルエンジンを搭載した売れ筋のX。足まわりはボディの傾き方を抑えるスタビライザーを装着し、タイヤは14インチを履く。最初に気付いたのは乗り心地が硬いこと。時速50km前後までは、路面の細かなデコボコを伝える。影響したのはタイヤの設定だ。燃費重視で転がり抵抗を減らすべく、エコタイヤのダンロップエナセーブEC300を装着し、指定空気圧は280kPaまで高めた。通常は190~220kPa前後だから、乗り心地が硬くなって当然だ。N BOXやタントのほうが重厚感があって快適に走れる。その半面、操舵に対する動きの鈍さは感じない。操舵角度に忠実に回り込み、少し速度を高めても旋回軌跡を拡大させにくい。こうなると旋回速度が高まって不安を感じるが、曲がっている途中でアクセルを閉じたり、ブレーキを踏んでも挙動を大きく乱すことはなかった。これはスペーシアの注目点。ライバル車は安定性を確保すべく後輪の接地性を重視して、速度を少し高めて曲がると旋回軌跡を拡大させる。車両を曲げることを抑えて安定させたが、スペーシアではこの妥協をあまり感じない。動力性能もスペーシアが優位だ。Xの車両重量は850kgだから、タントに比べて80kg、N BOXよりは100kg軽く、実用回転域の加速に余裕がある。ただし、登坂路や高速道路では力不足を感じる。
ターボT

64ps、9.7kgmというパワー&トルクのターボエンジン。コンパクトカークラスに匹敵する加速力をみせる
続いてターボのT。操舵性や乗り心地はNAと変わりなく、64psの動力性能は軽量ボディとの組み合わせで、1.3Lのコンパクトカーと遜色ない。JC08モード燃費も26.0km/L。NAの動力性能に不満ならターボを検討したい。
CHECK3 居住性、使い勝手、シートアレンジ

軽自動車の新星はライバルを超えたのか!?
CHECK3 居住性、使い勝手、シートアレンジインパネなど内装の造りは、上質ではないが不満もない。前席はパレットに対してバックレストを60mm拡大。肩まわりのサポート性もいい。座面は柔軟。サイズ、座り心地ともに満足できる。ただしライバル車との差はつきにくい。後席はアレンジが多彩。床面へ落とし込むように畳めばボックス状の荷室になり、自転車も積みやすい。折り畳みに加えて前後スライドも左右独立式だ。後席の左側にチャイルドシートを装着した時、前に寄せれば信号待ちの時などに親が子供のケアをしやすい。右側は後端まで寄せると、足元が広がって大人も座れる。左右両方を前側に寄せれば、車内の後部に子供用の自転車を積む空間も得られる。N BOXでは、後席の座面を持ち上げて車内の中央に背の高い荷物を積めるが、スライドの機能はない。タントはスペーシアと同じアレンジが可能だが、後席は座面の柔軟性が乏しく、大人の着座に適さない。スペーシアの座り心地も快適とはいえないが、タントよりは座面がしなやかで不満を感じない。
背の高い軽自動車でありながら走行安定性もいい。

市街地を約1時間連続走行して燃費を計測。スペーシアのアイドリングストップが効果的
収納設備は豊富。グローブボックスの内部にボックスティッシュを収めると、その上部のトレイに設けられた開口部からティッシュペーパーを取り出せる。フロントオーバーヘッドコンソールにもボックスティッシュが収まり、この状態でグローブボックス内部に別売りのユーティリティボックスを装着すると、前述の開口部を使ってゴミ箱としても機能する。スペーシアは多彩なシートアレンジと後席の座り心地を両立させ、背の高い軽自動車でありながら走行安定性もいい。突出した注目点はないが、機能のバランスが取れている。開発者のコメントは誇張ではなかった。