人気爆発のアクアに勝ってるコンパクトはあるか　アクア　炎の五番勝負　前評判どおりの人気で我が世の春を謳歌するアクア。が、その実力は人気と比例するものかを大検証！！

【本記事は2012年3月にベストカーに掲載された記事となります。】昨年12月末の発売ながら1月末の段階で累計受注12万台を突破したアクア。まさに爆発的人気といえるのだが、しかしそのアクア、強力なライバルが顔を揃えるコンパクトクラスにおいて、本当に頭抜けた実力を備えているのだろうか。そこで並みいるライバルのなかでも特に強力な6車を相手に、五番勝負を設定してみた。なかにはアクアに不利な勝負もあるが、そこは人気車が背負うべき業として、アクアには正々堂々戦い抜いていただきたい。さて、気になる結果は？

対決1　コレが弱くていいハズない！　走り　判定人／片岡英明真っ先に対決させるは、やっぱり「走り」。コンパクトだって気持ちのいい走りはイマドキ当然です。さてアクアの走りはどうなるか？ 判定は片岡英明氏にお願いしたぞ！アクアは日常の走行シーンで豊かなトルク感を味わえる。モーターの後押しと相まってクラスを超えた滑らかな加速を実現した。また、軽量ボディが功を奏し、発進直後から気持ちよくスピードを乗せていく。一般的な走行シーンでは1.5Lエンジンのヴィッツやフィットを凌ぐほど軽快な走りを見せつける。

このアクアに肉薄するのがデミオのSKYACTIVだ。スタート直後の瞬発力はちょっと物足りないが、そこから先は軽快な加速を披露する。ただし、フィットやスイフトなどと比べてガソリンタンクは小さめだ。1.2Lの排気量だが、副変速機付きCVT採用で、軽快な走りを実現しているのがスイフト。実用燃費も思いのほかいい。唯一、3気筒エンジンを積むマーチも軽快な印象だ。ハンドリングは、アクア、スイフト、デミオの3車が上位。とくにアクアのツーリングパッケージは軽快な印象だ。僅差でフィットが後に続く。操舵フィールの気持ちよさは、アクアとデミオが一歩上をいっている。デミオのSKYACTIVはハンドリングと乗り心地の妥協点は高いが、エコタイヤで安定性は今一歩。同じエコタイヤ装着ながらバランス感覚のよさでアクアが優位に立つ。

対決2　価格以上のものがほしい　質感　判定人／片岡英明お次は質感。安価であればあるほど喜ばれるコンパクトのカテゴリーだが、あまりに質感が低くては興ざめ。質感の高いコンパクトはドレ？ 判定は同じく片岡英明氏だ。トヨタ車はアクアにしてもヴィッツにしても廉価グレードはインテリアが安っぽい。インパネやトリムは樹脂の打ちっぱなしで、クラス相応のレベル。また、上級グレードでもメーター中央の液晶画面はオプションと割り切った。ただし、シートは大ぶりで気持ちいい。シート表皮もそれなりに頑張った。質感でライバルを大きく引き離しているのはスイフトだ。ヨーロッパ車に迫る質感で、パーツ類の合わせにも気を遣っている。これに続くのがフィットハイブリッド。基準車よりメーターなどにカネがかかっているし、見栄えもいい。フィットはちょっと物足りないが、マーチやデミオより1クラス上の印象を抱かせる。ヴィッツはコストダウンがわかるのがツライところだ。上級グレードはパッドを張り込んでいるが、アクアと比べると車格が低いように感じられる。デミオも同じようなレベルだったが、マイナーチェンジを機に加飾パネルなどを充実させ、質感を高めた。メーターも見やすい。マーチはカワイイ系のデザインで、トイ感覚だから質感は二の次。ヴィッツ同様に軽自動車と大差ない質感にとどまっている印象だ。

対決3　使えるコンパクトこそ正義　ユーティリティ　判定人／渡辺陽一郎車体は小さくても荷物が積めなくては不評を買ってしまうコンパクト。そんなチョットかわいそうなコンパクトのなかでユーティリティに優れるのは？ 判定は渡辺陽一郎氏だ。最も使い勝手がよいのは、ノーマルエンジンのフィット。ハイブリッドと違って専用電池を持たないぶん、荷室が広い。後席を畳んだ時の積載性はライバル車を圧倒する。居住性も7車のなかではフィットが一番快適。後席に座っても腰が落ち込みにくく、身長170cmの大人4名が乗車した時の後席の膝先空間は、他車よりも握りコブシ半分は広い。頭上にも余裕がある。したがって1位はノーマルエンジンのフィット、2位は荷室が少し狭まるフィットハイブリッドだ。これに続くのはアクアとヴィッツで、居住性、荷室の広さともに互角。ただしアクアは天井がヴィッツより55mm低く、同等の居住性と積載性を得るために全長は110mm長い。空間効率の違いにもとづきヴィッツを3位、アクアを4位にする。5位以降はいずれも後席、荷室ともに狭く、使い勝手は重視していない。その上で順位をつけると5位はスイフト。マーチやデミオに比べて後席に座っても腰が落ち込みにくく、座面にもボリューム感がある。天井の高さとリアゲートの角度にもとづき、荷室も若干広い。そして6位がデミオ、7位は後席の座り心地で差をつけられたマーチになる。

対決4　価格と完成度のせめぎ合い　コストパフォーマンス　判定人／渡辺陽一郎激戦区のコンパクトのジャンルでは、価格と完成度が常にせめぎ合う。そのバランスが最もとれているモデルはどれか、渡辺陽一郎氏に判定してもらった。勝者ははたしてどのモデルか？アクアS（179万円）とフィットハイブリッド標準仕様（159万円）の装備は、内容は違うが同レベル。20万円の価格差が残る。動力性能はアクアが1.8L並み、フィットハイブリッドが1.6L並みだが、後席の居住性や荷室の使い勝手はフィットが上まわる。燃費はアクアが優れるが、20万円の差額を埋めるには至らず、フィットハイブリッドが割安だ。ただ、それ以上に買い得なのがノーマルエンジンのフィット13G・Fパッケージ（129万円）。装備差を補正してハイブリッドより20万円安く、10・15モード燃費も24.5km／Lと悪くない。デミオ13SKYACTIV（140万円）も買い得。横滑り防止装置やアルミホイールが付き、買い得感はノーマルエンジンフィットのやや下程度。スイフトXGアイドリングストップ（134万円弱）は内外装や運転感覚は上質だが、後席と荷室の機能が低い。それでもアクアやフィットハイブリッドよりは買い得。ヴィッツ1.3Fスマートストップパッケージ（135万円）、マーチ12X（120万円弱）は、質感を含めて不満は多いがフィットハイブリッドの下に入る。最下位はアクア。アクアのコストパフォーマンスはけっして高くない。

対決5　カッコよさだって重要　デザイン　判定人／前澤義雄誰だってカッコ悪いよりはカッコいいクルマに乗りたいに決まっている。そこで最終対決となるココではデザインで評価してみたい。判定はお馴染みの前澤義雄氏にお願いした。アクアのデザインとなると近年稀に見るスグレモノで、このなかじゃあダントツだ。派手さや強烈な個性はないが、ベストバランスのプロポーションに巧みなメリハリを利かせた面の構成と全体を生かした部品の配置などレベルの高いデザインだ。2位のデミオはネライのレベルと個性の魅力は高いが、惜しいかな、リアピラー下部周辺のバランスの悪さがどうしても足を引っ張る。3位のフィットは、初代のデビュー以来基本的には印象は変わらずいまだに古さを感じさせないのはミゴト。だがハイブリッド仕様は立派さを狙ったグリルの重さで4位に。5位のスイフトは初代の気楽さをシッカリと改良した結果がフツーのコンパクトハッチのひとつとなった感がある。6位のマーチは、デザインのレベルの問題もさることながら印象の安っぽさが貧相なルックスとなっているな。最下位はヴィッツ。企んだであろうモダンさ、スポーティさ、上質さなどが、デザインのネライやデザイナーの意欲などエモーショナルな感覚に支えられていないから、単なる理屈で構成された鉄板細工となり何も訴えてこない。以上の理由から1位はアクアだね、ヤッパシ。

総合　アレもコレもとこなすオールマイティなのは？　TEXT／編集部　総合評価は非常に迷わされることになった。残念ながらヴィッツとマーチは早々に上位にくる可能性はなくなったのだが、フィットとアクアが五番勝負のうち、それぞれふたつの勝負で1位を獲得してしまったのだ。　前号でアクアとフィットハイブリッドを比較した際に、国沢氏もその判定で迷ったというが、今回は総合力でさらに上をいくというノーマルガソリンエンジンのフィットも入るだけに、ますます勝負の行方は混沌としてしまった感じだ。　が、コンパクトに求められる要素として、今回はあえて勝負の項目に加えなかったランニングコストも含めて考えると、僅差だがアクア優勢としていいと思う。アクアは実は装備関係のコストパフォーマンスは高くないのだが、あのデザインに惚れてしまうと、そのへんは目をつぶってしまうユーザーも多いと思われる。というわけで今回の対決の勝者はアクア。その爆発的人気は伊達ではなかった、としたい。

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