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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.01
2012年モデル登場 止まらぬ進化ゆずらぬ王座 GT-Rついに550psへ!
GT-Rが再び進化する!

【現行型誕生】東京モーターショーで生産型が初披露。12月6日発売開始。480ps/60kgm、燃費8.2km/L。ベースグレードは777万円。
【本記事は2011年12月にベストカーに掲載された記事となります。】GT-Rが再び進化する! 2012年モデルの登場直前、再びチーフエンジニアの水野和敏氏から「ぜひデビュー直前のテストを見てほしい」と本誌に連絡アリ! さっそく仙台のスポーツランド菅生での最終テスト現場に飛んだ!’07年の10月、前々回の東京モーターショーでデビューした世界最高峰のスーパースポーツ、日産GT-R。昨年、初めてのマイチェンを迎えてエンジン性能を中心に大幅な進化を遂げた。しかし名物チーフエンジニアの水野和敏氏はこのクルマのデビュー以来何度も「GT-Rは毎年進化させる」と繰り返しており、この11月、公約どおりGT-Rは再び大幅な進化を遂げた。本企画ではその桁外れのパフォーマンスをじっくり紹介してみたい。
デザインやサイズは変更なし

【マイナーチェンジ】前後バンパー形状&吸気口変更、LEDデイライト追加、530ps/62.5kgmにアップ、燃費が8.5km/Lに向上、サーキット仕様のクラブトラックエディションと超豪華仕様のエゴイストを追加設定。ベースグレードは869.4万円に微増
◆デザインやサイズは変更なしまず最初にGT-Rファンが気になるのはこれだろう。昨年のマイチェンではフロントライト下にLEDライトが追加されるなどのデザイン変更が実施されたが、今回の年次変更(2012年型への切り替え)ではデザインについての変更はなし。ボディサイズも(前回のマイチェン時に全長が20mm延長されたが)全長4670×全幅1895×全高1370mmとなる。ホイールベースは2780mmで車両重量も1740kg。「一部専門誌ではジャーナリストを名乗る人が簡単に“GT-Rは重くてダメ”なんて書いているけど、勉強不足もはなはだしい。世の中には車重800kgで600馬力以上だすクルマなんてザラだけど、そういうクルマはじゃあGT-Rより速いのか? 0~100kg/hで3秒0台を出せるのか?」とは水野氏の言葉。タイヤのグリップ力とアスファルトのμを計算すると、最も加速力を発揮できる重量がこの1740kgという数値であり、これはダウンフォースを加味すればF1マシンでもGTマシンでも同じだという。また外観の変更はないがボディ内部には手を入れられている。エンジン出力の向上にともない、エンジンルーム後部、ダッシュパネル周辺を中心に剛性を強化しており、運転操作へのレスポンスと限界域での踏ん張り感が向上。さらに車体そのものが進化したことで、一台一台実施する車体の加振検査でボディ剛性と減衰性を検査するセンサー計測点を変更。より感度の高い部位へ高精度加速度センサーを追加して、検出能力を向上、より厳密な生産精度を追求した。
そしていよいよエンジン&パワートレーン

エンジンは吸排気の効率を向上させたことでリーン燃焼化しても馬力/トルクを向上。結果、省燃費かつ大パワー化に成功
◆そしていよいよエンジン&パワートレーン現行GT-Rがデビューした当時は480ps/60.0kgm、10・15モード燃費8.2km/Lというスペックだった。それが昨年のマイチェンで530ps/62.5kgm、燃費8.5km/Lまで向上。そして今回の小変更でこのスペックがさらに向上し、550ps/64.5kgm、燃費8.6km/Lを達成している(JC08モード燃費は8.7km/Lと、計測車で唯一10・15モード燃費より数値が上)。VR38DETTエンジンの改良点は大きく分けてふたつ。ひとつめはインテーク吸入効率の向上で、一基一基にインテークマニホールドとヘッドの合わせ工程を追加。インタークーラーのインテークダクトを樹脂化して、その断面を拡大することで通気抵抗を減少した。ふたつめは排気効率と制御の改良。まず排気効率の向上と軽量化のために、床下キャタライザーをコンパクト化。これにより通気抵抗が軽減している。またエキゾーストバルブの冷却性能を高めるために、金属ナトリウムを封入した新設計バルブを採用。併せてバルブタイミングと空燃比、着火時期の制御を改良した。これまでのエンジン改良は周辺補器類が中心だったが、今回の小変更ではエンジン本体に手が加えられているのが特徴。「進化には終わりがない。F1マシンは毎年コースレコードを更新しているが、それは現状に飽きたらず挑戦を続けているからにほかならない」とは前述の水野氏。進化が止まるのは機械が限界に達したからではない。人間が進化しようとすることをやめるからだ。水野氏はそう続ける。トランスミッションも併せて改良を受けており、シフトフォークのアーム設計とフライホイールハウジングのベアリング固定を強化。これによりシフトフィールと静粛性が向上した。またNISMOがモータースポーツ用としてラインアップしているディファレンシャル用オイル「MOTUL製NISMOコンペティションオイルタイプ2189E(75W140)」を全車に標準設定している。
サスペンションは世界初の左右非対称セッティング!

サスペンションは大きく変わった。左右非対称サスは圧巻
◆サスペンションは世界初の左右非対称セッティング!そもそも右ハンドル車はドライバーが前列右側に座ることになり、前輪を駆動するプロペラシャフトが中心より右側に位置するGT-Rの構造上、止まっている状態でも車両の重量配分は若干右側に傾いている。それを考慮してサスセッティングを左右で変更。「左右でここまで大胆に変えているのは世界初」と水野氏は言う。フロントはスプリングの左側バネレートをハードにセッティングし、リアは従来左右対称であったサスペンションアームを左側は上半角、右側は下半角を持たせて装着して、停車時にはアンバランスな輪荷重を走行中に均等化させている。これによりコーナリングの安定感や乗り心地に加え、ハンドリングも向上。ステアリングを切った時の滑らかさも向上しているとのこと。そしてブレーキは「日産カーボンセラミックブレーキ」を、プレミアムエディションとエゴイストにメーカーオプションで用意。装着時には、大幅なバネ下重量低減により軽快な接地性としなやかな乗り心地、さらにカーボンセラミックならではの上質で切れのいいブレーキの効き味を実現している(ローター、パッドのサービスパーツ価格も値下げしたとのこと)。
インテリアとスペックVに代わるスポーツ仕様

メーター内部のLEDを変更。内装はほとんど変わっていない
◆インテリアとスペックVに代わるスポーツ仕様インテリアについては目立った変更点は少ない。タコメーターのリング内側にブルーのイルミネーションを追加し、シフトポジションインジケーターのイルミネーションとコーディネートすることで、メーターの質感が向上していること、エゴイスト用の高剛性・高減衰により雑振動を打ち消すカーボンコンポジットのベースに装着するBOSEサウンドシステムを進化させたことの2点。いっぽう昨年のマイチェン時に設定されていたトップスポーツ仕様であるスペックVはすでに生産終了しており、これに代わるグレードとして用意されたのが「For TRACK PACK」。グレードとして用意されているわけではなく、パックオプションとして設定されているのがポイントだ。スペックVが1575万円だったのに対して「For TRACK PACK」は比較的安価に設定される予定で(詳細価格は11月3日時点で未発表)、・専用サスペンション・ブレーキ冷却用エアガイド(フロント/リア)・レイズ製アルミ鍛造ホイール・カーボン製エアダクト付きフロントスポイラー・2シーター化(軽量化)・運転席・助手席専用バケットシートといった専用装備が付く。特にポイントは専用バケットシートで、従来のようにドライバーを包み込む形状でサポートするのではなく、特殊なシートクロスのグリップ力でサポートする新開発ハイグリップファブリック・本革コンビシート。実際に触ってみるとモチモチした触感で気持ちよく、座ってみるとシート地が体にぴたっと吸い付くイメージ。従来のフルバケットに座ったさいに感じる息苦しさはなく、それでいてサポート力は変わらないのが凄いところ。最後に価格だが、ベースグレードであるピュアエディションと最高級グレードのエゴイストは価格据え置きの869万4000円と1500万300円、中間グレードのブラックエディションとプレミアムエディションはそれぞれ16万8000円アップして、947万1000円と961万8000円となっている。
開発ドライバー鈴木利男氏のショートインプレッション

GT-Rの進化は日産そのもの、ひいてはエンジニアたち自集にとっても進化の糧となる。全国のGT-R販売スタッフや整備スタッフが開発現場にやってきてその開発に携わることで、GT-Rというブランドは輝きを増していく
◆開発ドライバー鈴木利男氏のショートインプレッション─今回のマイチェンで最もポイントとなるのは?「やはりエンジンでしょう。乗ってみるとすぐわかります。街乗りのストップ&ゴーから限界領域まで、幅広くよくなっているのが特徴です」─パワー&トルクが増して乗りやすくなった?「そうですね。さまざまなシチュエーションで使いやすくなっています。使いやすいってことは速く走らせられるってことでもあるしね」─燃費もよくなったとか。「そうそう、燃費がよくなったことも書いておいてください。超高速領域では10%くらい向上しているそうです」─左右非対称サスペンションはどうですか?「左フロントを少し固めていて、レーシングマシンではたまにやっていたことですね。最近はあまりやらないけど。市販車でやったって話はもちろん聞いたことがありません。GT-Rでは、これまでテストで試しに変えてみたことは何度かあるんですけどもね」─今回は市販装着に踏み切りましたが。「いろいろな要因があるけど、よくなったってことです。ただこれは、効果については街乗りではあまり感じないんじゃないかな。サーキットで走って、限界領域で“お、これは変わったな”と思うでしょうね。そういう装備です」発表は11月7日、そして11月24日より全国で納車が始まるとのこと。GT-Rはまだまだ進化し続ける! 詳しい試乗記は次号をお楽しみに!