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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.04

新型ワゴンR VS タント&ムーヴ 星取り表

ワゴンR

ワゴンR

【本記事は2008年11月にベストカーに掲載された記事となります。】9月22日に4代目へとフルモデルチェンジを果たしたワゴンR。モデル末期の時点でも月間1万台以上売り上げ、軽自動車販売台数トップの座を守り続けたこの「お化けグルマ」(by某ダイハツ営業マン)の新型はいかほどか?新型の月販目標台数はなんと驚きの1万8000台。CMでも「日本一売れているクルマ」をアピールしており、先代よりもさらに販売を伸ばす気マンマンだ。そんな新型ワゴンRを、ここではここ最近急激に売り上げを伸ばし2位の座をほぼ定位置にしているタント、そしてワゴンR登場以来の仇敵ムーヴ(3位)と比べてみたい。

走りはどう? 国沢光宏

ワゴンRスティングレー:上がタントカスタム、下がワゴンRスティングレー。どちらも流行りの「ワル顔」を持ち、男性ユーザーにアピール。フロントマスクの迫力だけ見ればワゴンRスティングレー一歩リード

ワゴンRスティングレー:上がタントカスタム、下がワゴンRスティングレー。どちらも流行りの「ワル顔」を持ち、男性ユーザーにアピール。フロントマスクの迫力だけ見ればワゴンRスティングレー一歩リード

ワゴンRの凄さは「実用燃費のよさ」である。今回イチオシのCVT仕様に乗って驚きましたね! だってCVTを思いきり攻めているのだ。普通、CVTのセッティングをする場合、ドライバビリティや振動&騒音などを考え、燃費ベストの回転数よりやや上を使う。回転を低くすればアクセルレスポンスが悪くなり、エンジン振動だって出てきちゃいますから。けれどスズキの開発陣は「燃費だぁ!」と気合い入れたのだろう。ユーザーや評論家先生から文句出ることを承知で、燃費を追求してきたのであります。実際、巡航時の回転数ときたら極めて低く、3気筒特有のゴロゴロ振動出る寸前(敏感な人なら感じる)。ちなみに加速感はエンジンのトルク特性などを変えることにより、なんとか気にならないレベルに収めてきた。さてさて、乗ると不快か? 意外にもそんなことありません。むしろエンジン回転数低いためECOなクルマという雰囲気。環境を大切にすると何かガマンしなくちゃならない。そのガマンが気持ちよいのだ。ジムで体を鍛えた時の疲れのようなもの。ワゴンRの新しさは、ECOを個性や文化として感じさせる点にあるのかもしれない。逆に考えると、開発担当者の意気込みが「味」になってるワケ。タントとムーヴは、この手の味を感じない。道具としちゃ秀逸だしなんの不満もないけれど、結果的に「無味無臭」になっちゃってると思います。クルマというのは道具でありながら、文化でもある。タントとムーヴは道具としての使い勝手を最優先したに違いない。CVTで燃費とドライバビリティを追求したものの、だからといってガマンは強いちゃいかんと考えたワケ。いっぽうワゴンRは「多少ガマンしなくちゃならなくても、燃費性能を追い求めた」のだ。ワゴンRのほうが飽きないし、ハンドルを握っているあいだ、ずっとクルマの存在を感じます。そうそう。今回のモデルチェンジでダイハツ勢に引き離されていた室内スペースも追いついた。ワゴンRのリアシート、成人男性が余裕で座れるくらい広いです。乗り心地はスズキとしちゃ珍しくブッシュのチューンを頑張った。良好な路面での乗り心地は、白ナンバーのコンパクトカーに匹敵するほど。個人的には先代ワゴンRのようなシャープさを好むけれど、一般ユーザーなら新型ワゴンRを好意的に評価するんじゃないか。

燃費はどう? 国沢光宏

あまりに燃費がよさそうだったため、試乗会の時に浦安周辺でチェックしてみた。するとどうよ! やっぱし良好! ノンターボのCVTは、流れのよい道だとコンスタントに17.0km/L前後というイメージ。たまに信号に引っ掛かる平均車速30km/h程度の走行モードでも15.0km/Lくらい走ってしまう。従来の軽自動車と比べ10%前後向上していると考えてよろしい。なんたってハイブリッドを除けば、新車で初めて2015年燃費基準を(極めてハードル高い)クリアしてきたモデルなのだ。さすがにターボ車はノンターボより10~15%程度悪くないものの、動力性能で納得しちゃう。低い回転域からトルクを出しており、1000ccに匹敵するトルク&パワー感を持つ。開発担当者に聞いてみたところ、高速道路の100km/h巡航ならノンターボモデルと同じくらいの燃費(今回計測できなかった)とのこと。ロングドライブの多い使い方なら、ターボ車を選ぶのもいいんじゃなかろうか。

使い勝手は? 渡辺陽一郎

ワゴンR:左がワゴンR、右がタントの室内。さすがに室内の広さではタントに一日の長あり

ワゴンR:左がワゴンR、右がタントの室内。さすがに室内の広さではタントに一日の長あり

ルーフの高い軽自動車のメリットに、居住性に優れた使い勝手のよい室内が挙げられる。難しいのは、居住性と使い勝手が二律背反の関係にあることだ。居住性を高めるには、室内の広さに加えて座り心地が大切。しかし、シートアレンジの使い勝手などを追求すると、サイズが小さくなったり座面のボリューム感が削がれやすい。ワゴンRは、この点を上手にバランスさせた。リアシートの座面を昇降する機能を備え、バックレストを前に倒せば簡単にフラットで広い荷室が得られる。そのいっぽう、座面のボリューム感も相応に確保した。ムーヴはワゴンRに比べて座面の沈み込みが抑えられ、座り心地は見劣りする。その代わり、リアシートのスライド量はワゴンRを95mm上まわる255mm。前後に座る乗員の間隔も、最大値はワゴンRより80mm長い1065mmだ。つまり座り心地ならワゴンR、使い勝手ではムーヴとなる。そしてタントは、ムーヴ以上に使い勝手を優先。スライド量は260mmで最長になり、前後に座る乗員の間隔も1135mmと広く、ムーヴを70mm上まわる。その代わり座面のボリューム感は乏しく、角度も水平に近いから大腿部の支えがもの足りない。乗降性はワゴンRとムーヴが拮抗するが、ホイールベースが90mm長いぶん乗員の足の取り回し性はムーヴが少し優れる。評価が難しいのはタント。軽自動車の主力価格帯におさまる標準ボディのLやXには、スライドドアの電動機能がない。タントのスライドドアはピラーの内蔵で重く、手動の操作は辛い。Xリミテッドなら電動式で使いやすいが、価格は132.3万円と高額だ。もともとスライドドアは軽乗用車のボディに合わず、高コストな電動ピラーレスにしないと使えないのだ。それでもタントは背が高いから車内で作業がしやすく、収納設備も豊富。ダントツの使い勝手が居住性の不利を補い、3車ではトップの評価になる。2番手はワゴンR。使い勝手はムーヴに劣るが決定的な差ではなく、座り心地にも配慮している。

デザインは? 前澤義雄

タントカスタム

タントカスタム

新型ワゴンRはシンプルななかにモダンさもあり、歴代ワゴンRの風合いを匂わせながらも新鮮な感じは、まあする。だが気になる点も。先代は、初代の骨太さ、2代目のシッカリとした完成度の高さに比べると厚み、深みに欠ける軽佻さが感じられたが、今度のモデルも多少先代の軽さが残ることがひとつ。そしてサイドビューでのウェッジでプロポーションを変えたのはいいが、ウエストラインがルーフラインと並行に共連れとなっており、リアエンドの腰高感だけが目立つ。まあワゴンRと同点ですな。ただスペースや性能・機能の向上でタントと同様売れ続けることは確かだろう。で、そのタントだが、初代はスペース命と割り切った潔さがハコの趣を面白くしていたが2代目となって変えあぐねたらしく小手先の変更で魅力を欠く感じだ、ってことで、ムーヴが相変わらず光るってあんばい。動きのあるプロポーションにメリハリを効かせた面の構成は、軽の厳しい規格との戦いの末にここまで高いレベルとなったのかと思う次第。

買い得度は? 渡辺陽一郎

この3車の買い得感を比べる場合、グレードの選定が難しい。ワゴンRは先代型の特別仕様車をFXリミテッドとしてグレード化し、これが極めて安いからだ。FXにエアロパーツなど17万円相当の装備を加え、価格アップを8万円弱に抑えた。ここまで安ければ売れ筋になるのは確実。価格は112万円少々だ。そうなるとムーヴは116万円少々のX、タントは108万円少々のLになる。ワゴンR・FXリミテッドの特徴的な装備は、エアロパーツ、アルミホイール、キーレスプッシュスタートだ。ムーヴXは4輪ABS、オートエアコン、キーフリーシステムなど。タントLはワゴンRと同じく4輪ABSがオプション設定で、ほかの2車が装着する電動格納式ドアミラーも省かれる。つまりタントはスライドドアにコストを費やし、108万円少々の安い価格を差し引いても買い得感では不利だ。そうなればワゴンRとムーヴの対決。ワゴンRに4輪ABSを加えれば、約115万円でムーヴとの価格は接近する。そのうえで比べると、ムーヴの優位性はエアコンのオート機能程度。対するワゴンRはエアロパーツとアルミホイールが加わる。結論をいえば、買い得感の順列はワゴンR、ムーヴ、タントになる。

俺が私が考えるワゴンRの○と× -1-

松下宏の○と×ここが○/今度のワゴンRは走りが格段によくなった。自然吸気エンジンの動力性能はダイハツの最新エンジンに及ばないが、乗り心地と操縦安定性のバランスや電動パワーステアリングのフィール、静粛性など、シャシー系の性能が大きく向上している。これらに関しては軽自動車の最新モデルらしく、クラストップといえる水準にある。強いていえば、乗り心地のフラット感でわずかにiに及ばない程度か。軽自動車トップではないが、ハイト系軽自動車ではトップクラスの23.0km/Lの燃費や環境性能なども○だ。ここが×/もの足りないのは強力なアピールポイントがないこと。居住空間の広さにしても、燃費性能にしても、完全にほかを引き離してトップというものがない。多くのユーザーにわかりやすくて伝わりやすいアピールポイントも必要な要素。片岡英明の○と×ここが○/最新のワゴンRは車格が上がったような気がする。デザインは垢抜けたし、インテリアの質感も2ランク高められた。また、走りの実力も大きくレベルアップしている。特によくなったのがハンドリングだ。操縦安定性と高速走行時の安定性が大幅に向上している。コーナリング時の接地フィールがよくなり、ロールしても不安感がなくなったのがいい。そして乗り心地もしなやかさを増した。ボディもしっかりしている。リアシートの快適性が向上した。ここが×/守りに入ったフロントマスクのデザイン。新鮮味に欠ける。それとABSを全車に標準装備しなかったこと。横滑り制御の採用も消極的だ。また、K6A型3気筒エンジンも常用域でコモリ音が耳につくなど、設計の古さを感じさせる。

俺が私が考えるワゴンRの○と× -2-

主要諸元

主要諸元

スズキ営業マンの○と×ここが○/CVTと組み合わせたことでクラストップレベルの燃費を実現し、それでいて買い得感の高いFXリミテッドというグレードを用意できたことが最大の○ですね。室内スペースの確保、特にリアシートの居住性がアップしたところも非常にいいと思います。リッターカーなみの広さを実現していますのでぜひ販売店で確かめていただきたいです。ここが×/あえてあげるとすればデザインにもう少し「新しさ」がほしかったところです。「これなら先代でもいいかな」と、中古を買ってしまいそう。ワゴンRオーナーの○と×ここが○/燃費がよくなったというのと低速トルクが厚くなって街中で使いやすくなったというのがいい。ぜひ乗って試してみたい。フロントマスクもパッと見、新しい感じがする。ここが×/後ろから見るとあんまり新しさを感じない。もうちょっと「新車だ」というのがわかりやすいデザインにしてほしかったかな。ライバルたちとはどう戦うのか?新型ワゴンR最後の検証は、ライバルであるダイハツとホンダのディーラーおよび関係者に話を聞き、ワゴンRの印象と競合になった場合の「攻め方」を聞いてみた。日本一のヒット車に、ライバルたちはどう挑む?ダイハツ営業マン/乗ったことはありませんが、先日ディーラーにお邪魔して見させていただきました。よくできているし、割安感には驚きましたね。4ATが安いのはわかるんですが、CVTを搭載してあの価格というのはちょっと驚きです。ただパッケージングに関してはムーヴやタントのほうが勝っていると思っているので、実際に室内に乗っていただければ我我のクルマのほうがいい、というのはわかっていただけると思います。ムーヴはスタイルもいいですし、「新しさ」というイメージもダイハツ車のほうが有利でしょう。お客様にもそうやって説明しています。ホンダ営業マン/カタログを拝見しました。実際に乗ってみないとなんともいえないんですが、だいぶよくなったみたいですね。乗り心地や実用燃費はどうなんでしょうか。スタイルやエンジンについては我々のほうが勝っているんじゃないかな、と思っています。ただまあ今のライフは確かにちょっと古いですから、11月に出る新型(本誌次号で紹介)ライフを楽しみにしていてください。デザインを見ていただければスズキさんやダイハツさんには負けないし、装備も価格もかなり頑張ってますからね。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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