300馬力エンジン搭載　エリシオン・プレステージ　スポーツカーも思わず道を開ける　もはやミニバンとは思えぬ強烈な走りに驚愕！！　史上最強のミニバン

【本記事は2007年3月にベストカーに掲載された記事となります。】エリシオンプレステージってのは、そんなクルマだ。「300馬力というのは、ものすごく重要だったんです」というのは、エリシオンプレステージの開発を担当した高野喜彦LPL。「正直言って、国交省の型式認定試験の時に295馬力だったりしたら、このクルマの意味がない。それくらいの気持ちで作りました。300馬力のミニバンなんて、いかにもホンダらしいでしょ」と高野LPL。キッチリ300馬力で認定を受けられるよう、特に排気系などは徹底的にチューニングをしたのだという。最高出力300ps／6200rpm、最大トルク36.0kgm／5000rpm。エリシオンプレステージに搭載されるV6、3.5Lエンジンは、レジェンドとスペック的にはまったく同じである。レジェンドのエンジンをそのままエリシオンに積んじゃった、のだ。「正確にはまったく同じ、ではないんです。カタログに記載される数字的そのものは同じなんですが、例えばアクセル開度に対するスロットルの開き方など、チューニングはけっこう変えています。レジェンドではスムーズさがアピールポイントになっていたので、アクセルに対してリニアにスロットルが開くようなチューニングですが、エリシオンではダイナミックさというか、パンチのある加速を味わっていただきたいので、そのようなチューニングにしています。エリシオンは車重が1940～2010kgと重たい、ということも関係しています。車重を感じさせない動力性能を味わっていただけると思います」と高野LPL。

それじゃあ、というわけで、そのご自慢の「力」をとくと試させていただきましょう！！ウヒョヒョヒョヒョ～。速いッスよ、これ。なんつーのかな、ドカン！！ という速さではないんだけど、「静かに速い」、といった感じ。速いんだけど、これが下品じゃあないのだ。エスティマが「ガツン！！」とした速さなのとは対照的。べつにエスティマが下品だと言っているのではありませんよ。いかにもホンダのエンジンらしい、回して速いタイプのエンジン、と言ったらわかりやすいだろうか。6800回転のレッドゾーンまで軽やかに吹け上がっていく感覚は、ちょっとしたスポーツカーライク。ただし、一般道でこのエンジンの気持ちよさを味わうのはいろんな意味で危険が伴う。最も真価を発揮するのは高速道路の追い越し加速だろう。ということで、数字でチェック！！まずは0→100km／h加速なのだが、8秒07というタイムをマークした。これ、ものすごいタイムです。「こりゃあ凄いぞ」と思ったエスティマ3.5Lが8秒26、MPVターボが8秒92ですから。ドカンとした速さを感じさせないクセに、エリシオンプレステージはエスティマよりも速いタイムをたたき出してしまったのでありました。パワーウェイトレシオでもエスティマより不利なんですけどね。ゼロヒャク8秒台前半というのは、2.5～3Lクラスのセダンなみ。ちなみに同じエンジンを搭載するレジェンドは7秒12、アウディA6の2.4だと8秒71である。

つづいて50→80km／h加速計測。なんと、3秒57というタイムをたたき出した。これまたご立派！！ としか言いようのないタイム。エスティマ3.5Lが4秒17、MPVターボが3秒69だったことを考えると、エリシオンプレステージはかなり速い、と言うことができる。MPVは中低速からターボが効いてトルクが太く、中間加速に有利だな、と感じていたのだが、MPVに勝る中間加速性能を見せつけるとはちょっとビックリ。街中はもちろん、高速道路でも2.5～3Lクラスのサルーンに後れをとるようなことはないし、このクラスからの乗り換えでもストレスを感じることはないだろう。ミニバンにこれほどの動力性能が必要なのか！？ という気がしなくもないが、とにかくエリシオンプレステージの動力性能はインパクトがある。ただ、この押し出しの強いフロントマスクで後ろから迫ってきたら、正直ちょっと怖いです。ロードスターなんて、踏みつぶされちゃいそうですよ、実際。このパフォーマンスに合わせて225／50R18タイヤの装着、サスペンションチューンの変更、サスペンション取り付け部剛性のアップなど、ハンドリング面でのレベルアップにも手抜かりはない。ミニバンと言うよりも、高級サルーンに乗っているような感覚だ。

室内を見て最もノーマルエリシオンと違っているのがセンターコンソールの存在だ。引き替えにウォークスルーができなくなってしまうのだが、センターコンソールを設置した理由がふるっている。「ガンガン走ると左足で身体を支えたいでしょ。センターコンソールがないとどうにも落ち着かない。センターコンソールがあると踏ん張れるでしょ！？」（高野LPL）ですと。このほかにも、例えばメーターの書体をイタリック体にしたり、センターコンソールに木目調パネルを採用するなどで、標準エリシオンとの差別化を図っている。パッと見た時の豪華な雰囲気が上手く演出されている。車格的に真っ向ライバルとなるアルファード（皇帝の愛称があるらしい）が、豪華さや上級感というものよりもファミリーユースでの使い勝手、居住性を重視しているのに対し、エリシオンは「ちょっと特別な空間」を感じさせてくれるインテリア。特にブラックの本革内装だと豪華な印象がより高い。これは、インパネに多用されている木目調パネルの質感や、シートの形状、質感などによるところが大きい。アルファードが皇帝ならこっちは帝王か！？

「エリシオンの一バリエーションというのではなく、まったく別のクルマ、という感覚で開発に取り組みました」と高野LPLが言うように、なるほど、このエリシオンプレステージというクルマ、標準タイプのエリシオンとは見た目にも（いい意味でも悪い意味でも）、走りの面でもまったく違うクルマだった。最も安いSGでも357万円、上級グレードのSZだと433万6500円。安いクルマではないが、月販目標700台と強気の販売計画を掲げている。

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