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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.06
すこぶる心地いいワゴン 日産ウイングロードがちょっぴり豪華になって魅力一新
先代のウイングロードはデフレ時代に最も適応したワゴンだった

個性的なフロントマスクとは対照的にリアは存在感が薄い!?
【本記事は2006年1月にベストカーに掲載された記事となります。】先代のウイングロードはデフレ時代に最も適応したワゴンだったと思う。ワゴンといえばレガシィのひとり勝ちといわれるなか、「もうちょっと安価でカジュアルなワゴンがあってもいんじゃない?」というのがウイングロードの主張。飛び抜けてスポーティな走りや高級感はないけれど、気軽に乗れていろいろな使い方が楽しめるそのコンセプトがデフレ時代のニーズにぴったりマッチ。特に、“メタルのオモチャ”というキャッチフレーズで道具感を強調したマイチェン以降さらに販売を伸ばし、モデル末期でも高い人気をキープしていたのはご存じのとおりだ。そのウイングロードのモデルチェンジだが、日産が注目したポイントは想定ユーザーの心境の変化だ。さすがに景気回復とともにそろそろデフレも終わりつつあり、いつまでも“便利なだけの道具”じゃユーザーに満足してもらえない。例えば、ライバルのホンダがエアウェイブでガラスルーフを前面に押し出しているように、これからはプラスアルファの魅力が欲しい……。変化しつつあるワゴン市場のトレンドを読んで、新しいウイングロードはまさに先代のよさを継承しつつ、ひと皮むけたニューモデルへと生まれ変わろうとしているわけだ。そういう目で新型ウイングロードを見ると、まず注目される点はデザインと質感だ。スタイリングは最近の日産車のトレンドであるティーダ/ノート系の“ちょっとツリ目”っぽい精悍なマスクが印象的。また、サイドウィンドウ上端のラインがリアドア以降キックアップするラインも特徴的だ。全体に先代末期のメタリックなツールというイメージをより洗練させて質感を高めたといった感じ。ライバルのフィールダーやエアウェイブがちょっと“アッサリ系”デザインであるのに対し、ちょっとアクが強めだがより存在感のあるスタイリングといえる。Q さてここでクイズです賛否両論あるとは考えられるが、ウイングロードのエクステリアデザインは、デザイン決定から生産開始までどのくらいの期間だったでしょうか?A 正解はこちら!最近各メーカーともデザイン決定から生産開始までかなり短縮され、特にトヨタ、日産はその傾向が顕著。ウイングロードの場合、ノートに続き※デジタル開発V3Pをフル活用することで10.5カ月の短期間だったという。ウイングロードは流行の変遷が激しく、気移りの激しい若者をターゲットとしたクルマだけに、ユーザーの心をつかむためにはそれが生命線だったという。ちなみに従来なら18カ月かかっていたというから驚き。※試作車をいくつも製作する従来の方法とは異なり、コンピュータを使ってシミュレートすることにより、試作車の数も減り、開発時間が大幅に短縮できるようになった
質感アップのインテリア

最近の日産車に共通してインテリアの質感の向上は目覚ましい。視認性、使い勝手に加え遊び心も充分あり
質感のアップはインテリアで顕著だ。先代ウイングロードのインテリアは、“道具”っぽさということで正当化しないとチープさが気になったが、新型はその点では横綱級のカローラフィールダーと勝負してもほぼ互角といっていい仕上がり。使い勝手という点でも、後席リクライニング、テールゲート側からリモコンで倒せるフォールディングシート、水洗いできるラゲッジボードなど、先代から継承した“使える機能”が盛りだくさん。ただの“道具”から、“質の高い道具”へときちんと進化している。
エンジンは1.5Lと1.8Lの2本立て

ウイングロードのエアロは1.5L、1.8LともRX系に設定され、前後、サイドのエアロのほかリアのルーフスポイラーを装着することができる(ノーマルは設定なし)
新しいウイングロードのプラットフォームは、マーチ以来の日産Bプラットフォームの発展型だから、走りっぷりについてはまぁ予想どおりという感じだ。エンジンは1.5LにHR15DE、1.8LにMR18DEという2本立てのラインアップ。ミッションは4WDモデル(例のモーターアシストのe.4WDだ)を除きエクストロニックCVTが組み合わされる。ただ、ライバルに比べてやや劣っていると感じたのは、電動パワステの出来。初期段階に比べると進化、熟成されてきているが、トヨタ、ホンダなどに比べるとまだまだといった感じ。エンジンは最近の日産車に共通の特性で、トップエンドのパワーを追いかけず低中速の実用域のドライバビリティに注力している点は好感が持てる。ただし、CVTの特性としてフル加速時にはほぼパワーピーク回転数を維持するため、ノイズの大きいエンジンは静粛性がちょっと気になる場合アリ。Q さてここでクイズです鈴木直也は実際にドライブして1.5Lと1.8Lのどっちがいいと感じたでしょうか?A 正解はこちら!1.5LのHR系はやや非力ながらトップエンドまでわりとスムーズで、乗員にとってストレスの少ないエンジンに仕上げられているのに対し、1.8LのMR系はトルクフルなかわり5000rpmを超えるとややノイジーで、ホンキで全開領域を多用するとけっこうウルサイというのが正直な印象だ。コストパフォーマンスの点を考慮しても、お薦めは1.5Lのほうといえるだろう。
ユーティリティ、使い勝手、実用性の高い車

ラゲッジの床面は撥水加工がされているので汚れを気にせず使えるが、若干荷物が滑る傾向にある。アンダーラゲッジはクラス最大の容量を誇る!
同じクラスのワゴン、エアウェイブ、カローラフィールダー、インプレッサに対しては、最新モデルということもあり、圧倒的な評価の高さを得たウイングロード。そのアドバンテージは、ユーティリティ、使い勝手、実用性の高さにある。Q さてここでクイズですひとクラス上、日本のワゴンの代名詞的存在であるレガシィツーリングワゴン(2.0i)に対してはどうなのか?A 正解はこちら!よくできた4WDのメリットが生かされた走りという点でレガシィ優位は崩しがたい。走破性だけでなく、ハンドリング、サスセッティングなど、ターボのGT系ではなく、ベーシックレガシィともいえる2.0iでもそのポテンシャルは高い。さらに、コストを度外視して作った感のある質感の高さは、やっぱりピカイチ。しかし、ウイングロードを使い勝手、ターゲットユーザーがハッキリしていることによる飛び道具の設定など、レガシィにはない魅力を備えているのも事実。そう考えると、クラスは違うが全体的に大健闘といえる結果になっているといえそう。
レガシィと比較

ラゲッジの床面は撥水加工がされているので汚れを気にせず使えるが、若干荷物が滑る傾向にある。アンダーラゲッジはクラス最大の容量を誇る!
クラスは違うが、両者の対決はなかなかおもしろくなってきた。そこでもう一発!Q 最後のクイズですウイングロードがe.4WDなのに対しレガシィはフルタイム4WD。排気量も500cc違う。価格差の49万1400円(レガシィは2.0i、ウイングロードは15RXFOUR)を高いととるか、妥当ととるかは、個人差があると思われるが、BCとしてはこんなに価格差があるのか、というのが正直なところ。では、実際にウイングロードがレガシィに勝っている部分はどこでしょうか?A 正解はこちら!ボディサイズでは不利なウイングロード。ラゲッジの容量は、リアシートを一番下げた状態(乗員スペースを最大限にとった場合)では、350L(最もシートを前にした状態で412L)と、レガシィの459Lに対し劣勢だが、アンダーラゲッジの容量はレガシィが23Lなのに対し100L(4WDは51L)で圧勝。それから、シートのリモコンフォールディング機能をもっているが、レガシィがリアシートのみなのに対し、ウイングロードはフロントシートも可能となっている点で勝ち。そしてリアシートは、ともにリクライニングするが、ウイングロードはスライド機構もあるので、使い勝手という点ではウイングロードの勝ち!まだある。燃費&エコ度はウイングロードが★★★★、燃費基準は+5%に対し、レガシィは★★★の+5%どまり。乗り心地もウイングロードが優勢。若者をターゲットに買い得感を前面に打ち出したワゴンのウイングロードだが、ワゴンとしてはかなりの実力派といえる。月販目標は3500台というが、当面はそれをかなりオーバーする人気をみせることは確実だと思う。シャカリキになって動力性能やハンドリングを追求するクルマではなく、気持ちよさ、使いやすさを追求してきた姿勢は評価できる。
ワゴン受難時代にあってウイングロードは勝ち抜くことができるのか?

ラゲッジの広さ、使い勝手のよさはウイングロードの魅力。高さ、幅ともワゴンとしてトップレベルの実力を持つ。海に山に遊びに使うには最適の一台
ワゴン受難時代にあってウイングロードは勝ち抜くことができるのか?なぜ、ワゴンが売れていないのか? それはレガシィツーリングワゴンの販売台数の減少が大きく、現行モデルは評価も高いのだが、メインのターボモデルの価格アップなどがかなり影響している。それから、オーバー2Lクラスワゴンの衰退。その代表格がステージア。現行ステージアは初代に比べると大きく販売ダウンし、次期モデルは存在しないという情報もあるほど。ワゴンが流行した背景には、ワゴン=バン、商用車というイメージがなくなったこと、日本人の気質の2つが要因。同じセダンタイプを購入するなら、より使い勝手のいいワゴン、と選ぶ人が増えた。もちろん流行に流されやすいという面で、流行っているから、と購入していた人も多い。さらにセダンのスポーティバージョンがワゴンというイメージも根強くある。しかし、ミニバンを2列シート車として使う人が増えている今、使い勝手の面でワゴンはミニバンに駆逐されてきた。ただ、一度ワゴンを購入し、使い勝手のよさに対しその魅力にはまっているユーザーも多く存在。(編集部)ウイングロードの賢いところは、ワゴン市場の横綱であるレガシィのことをまったく意識しなかったことだ。かつて、レガシィに挑戦したライバルはすべて返り討ちにあったが、それは要するにカルディナ(すでに戦意喪失といった雰囲気)やアベニールなどがレガシィに“走り”で勝負を挑んでいたから。4WDシステムをはじめとする、あのコストのかかったメカニズムや富士重の本気度を考えたら、まぁ走りでレガシィに勝つのは容易なこっちゃない。結果として、スポーツワゴン市場にはひとり勝ちのレガシィだけが残ったわけだ。いっぽう、ウイングロードはワゴン本来のユーティリティをより若者向けにカジュアルに表現した。コストはだいたい150万円くらいまで。それでもけっこうカッコよくて使い勝手のいいワゴンができますよ、それも貧乏くさくなく、という主張だ。これはレガシィとはまったく対極にある発想と提案が盛り込まれている。クルマに熱くなる若者が減るにつれて、トレンドはスポーツワゴンからカジュアルワゴンへシフトしつつある。その風をいち早く読んだウイングロードは、どうやら新しいワゴン市場の勝ち組みとなりそうな気配だ。(鈴木直也)