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更新日:2020.01.07 / 掲載日:2017.07.25
【三菱】4気筒でも6気筒に負けないパワーと静粛性を実現したサイレントシャフトの効果とは

goo-net編集チーム
三菱自動車工業の持つ数々の技術の中でも革新的な技術として、未だ語り継がれているのが、「サイレントシャフト」です。
その名の通り静粛性などを意味する技術です。
4気筒エンジンでも、6気筒エンジンに匹敵するパワーと静粛性を実現させたエンジンの構造です。
三菱が特許を取得したオリジナル技術であり登録商標です。
サイレントシャフトの開発の背景
高度経済成長化の中、当時の三菱重工業は自動車生産に軸足を置いていく方針を決めます。
しかし、既存の生産ラインでは、他社との決定的な違いがありました。
当時、主流になっていたコンパクトなエンジンがメインであり、スポーティカーや高級車へ搭載する高性能な6気筒エンジンの生産ラインがありません。
そこで、当時の技術者たちが既存の生産ラインを活かし、6気筒エンジンに匹敵するサイレントシャフト機構を持つエンジンの開発に全力を挙げました。
サイレントシャフトとは
サイレントシャフトは、「ランチェスターの法則」で有名な英国のランチェスターが、20世紀初頭に発明したランチェスター・バランサーの一種です。
三菱はこの技術に改良を加え、2本のシャフトの位置を上下に互い違いにし、エンジンの振動など打ち消すことで、振動と起振モーメントを抑制するメカニズムになっています。
具体的には、サイレントシャフト自体が逆向きの振動を発生することでエンジンの振動を打ち消す、完全バランスを達成した技術です。
サイレントシャフトのメリット・デメリット
サイレントシャフトにはたくさんのメリットがある一方でデメリットもあります。
【メリット】
・小さな車でも高級車のような静粛性を実現、(4気筒エンジンでも6気筒エンジン並みの振動と静かさ)
・燃費が良い(6気筒エンジンと比較して熱効率が良い)
・コストがあまりかからない(6気筒と比較して部品点数が少ない)
【デメリット】
・駆動力をクランクシャフトやタイミングチェーンなどから得るため、動力ロスが生じる
・サイレントシャフトはクランクシャフトの2倍の速度で回転するため、モータースポーツ等の負荷の大きい長時間の高回転域では焼き付きの可能性が高まる
・使用状況によってはエンジンオイルの交換サイクルが早くなる
サイレントシャフトの第1号車は、1974年12月発売の軽自動車「ミニカ」の、直列2気筒エンジンでした。
以降、従来のエンジンと差別化を図るために80年代の未来派エンジンという意味合いを込めて、エンジン名称の末端に80を追加し「サターン80」「アストロン80」として、ラインナップを増やしていきました。
その後、フィアット(イタリア)、サーブ(スウェーデン)、ポルシェ(ドイツ)などへ特許を寄与し、欧州車も広く採用しました。
現在でもさまざまな自動車メーカーがバランスシャフトを用いたエンジンが実用化されており、三菱自動車のサイレントシャフトはエポックメイキングな技術と言えるでしょう。