輸入車
更新日:2022.03.04 / 掲載日:2022.03.04
ポルシェ 718ケイマン/気になる中古車【試乗判定】

文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年4月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2022年2月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌でも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
レーシングカーから名前を受け継いだケイマン
ブランドを牽引する存在へと成長した

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、ポルシェのミッドシップスポーツカー、718ケイマンが登場です。お借りした車両は2019年モデルで、グレードはベースグレード、走行距離は3万2000kmです。
九島●スポーツカーは駐車場に止まっているだけでも絵になるね。
竹岡●私たちは仕事柄いろいろなクルマに乗れるけど、それでもやっぱりポルシェは特別。これは前から言っている話なんだけど、「60歳になったらポルシェオーナーになりたい」という夢があるの。
九島●それって凄く格好いい夢だね。女性が颯爽とスポーツカーを乗りこなすなんて映画のワンシーンみたい。
編集部●さて、まずは718ケイマンについて、ポルシェを代表するモデルである911との違いを解説いただけますでしょうか。
九島●最大の違いはエンジンの搭載位置だね。911では2+2のシートレイアウトを実現するために、エンジンを後輪車軸より後ろ寄りに搭載するRR(リアエンジン・リア駆動)を伝統としている。それに対してケイマンは、エンジンが後輪車軸よりも車体中心側に搭載されるミッドシップを採用しているんだ。重いエンジンを重心近くに搭載することで、性質的により運動性能が高く仕上がるってわけ。
竹岡●ケイマンのほうが、911よりもスポーツカーとしては純粋だっていう見方もできるよね。その代わりリアシートがない分、カバンとかちょっとした荷物を置くのも助手席になっちゃうけど。
九島●ポルシェにとってはケイマンが911より速くなってしまうのは困る(笑)。だから、環境規制をクリアする意味も込みで、ベースモデルのエンジンが6気筒の自然吸気から4気筒ターボになったんだ。「718」っていうのは、50年代後半から活躍したレーシングカーに由来するらしいけど、それはまあ後付けだよね。
編集部●ありがとうございます。718ケイマンが日本に導入されたのは2016年4月で、2L水平対向4気筒ターボの「ベースモデル(300馬力)」と2.5L水平対向4気筒ターボの「S(350馬力)」でスタート。翌年には2.5Lターボを高出力化し、標準装備を充実させた「GTS(365馬力)」を追加しました。
竹岡●それで718シリーズは4気筒なんだって思っていたら、4L水平対向6気筒の「GT4(420馬力)」が出てきたんだよね(笑)。
九島●そうなんだよ。「GT4」は限定車だからまだ理解できたんだけど、自然吸気の4L6気筒を積む「GTS4.0(400馬力)」が出てきたから混乱したよ。まぁそういうところもポルシェなんだけど。
編集部●そして2020年には、2Lターボで走りに磨きをかけた「T(300馬力)」が追加されます。718ケイマンはモデルライフを通じて何度か改良は受けていますが、いずれも小変更ですので、中古車を選ぶ際には基本的にはグレードを意識することになりそうです。
竹岡●わかりやすくていいね。
編集部●それではそろそろ、試乗のほうをよろしくお願いします。
九島「入門用だなんて言わせない完成度の高さ」
竹岡「ポルシェのラインアップで最もスポーティな存在」

DETAIL CHECK
運転が感動的に楽しいピュアスポーツカー

編集部●さて、試乗を終えられたふたりに感想をうかがいましょう。
九島●文句なしによかった。タイトなコックピットはまさにスポーツカー的だし、アナログのタコメーターも気分が盛り上がる。それから、とにかくボディがしっかりしているよね。だから走りに一体感がある。ただ、インターフェースが最新世代のものと比べると古いんだよね。
竹岡●そうね。今の911と比べるとスイッチの数も多いし、安全運転支援技術も正直それほど充実してない。でも、それをわかったうえでも運転する楽しさが上まわるかな。これぞスポーツカーって感じで。
編集部●2Lターボの感触はいかがですか? 4気筒であることを残念がる人もいるようですが。
九島●4気筒であの音が出せるのはたいしたもんだよ。
竹岡●うんうん。十分速いし、スポーツカーらしいエンジンだよ。
編集部●今日の試乗車は年式的にもそんなに古くありませんでしたが、気になるところはありましたか?
竹岡●ないね。しっかりしてたよ。
九島●中古車市場はどうなの?
編集部●それが、出始めのモデルでも600万円くらいで、相場としては800万円台が中心です。
九島●さすがに安くないね。でもこれってロレックスみたいなもので、新車も人気でなかなか買えないから中古車が高騰してるんだよね。
竹岡●なんてったってポルシェですから。たしかに値段は高いけど、その分リセールもいいし。718ケイマンはボディサイズも絶妙だし、純粋に走りを楽しむならポルシェのなかでもいちばんじゃないかな。

タイトにまとめられたコックピット

純正インフォテインメント「PCM」やアダプティブクルーズコントロールなどのドライバーアシストを採用し、使い勝手の面でもタイプ981ケイマンから大きく進化した。ステアリングにはドライブモード変更のスイッチを備える。
余計なものはまったくない運転に集中する空間

純粋なスポーツカーとして作られている718ケイマン。そのためシート背後には荷物スペースなどは用意されない。パワートレインをできるかぎり車両中心近くに配置することで、運動性能を高めるという設計思想だ。
フロントボンネットの下にラゲッジルーム

フロントボンネットの下には150Lのラゲッジスペースが用意されている。これがあるとないとでは使い勝手に大きな差が生まれる。形状もスクエアなため、サイズによっては旅行鞄やスーツケースを複数個収めることができる。
エンジンはリア荷室に隠れて見ることができない

大きく開くテールゲートのおかげでアクセス性に優れるリアラゲッジスペース。容量は275Lだが、2段に分かれているためあまり大きな荷物を積むことはできない。この下には2Lのフラットフォー・ターボエンジンが搭載される。

試乗判定レビュー
竹岡 圭
ポジショニング[10点]
ポルシェのラインアップのなかで、いちばんのピュアスポーツって考えると、やはりミッドシップのケイマンになるんですよね。ボクスターは屋根開きだから、ボディ剛性はケイマンのほうが上。911はRRだから、純粋な運動性能というと、やはりMRのクローズドボディのコレなんです。ベースモデルは軽快感も高く、素直に楽しめるモデルに仕上がってます。
装備[9点]
ポルシェは自分なりに走りを楽しんでくださいという、スポーツカーブランドなので、いわゆるADAS機能は近年まで重視していませんでした。なので、その部分の装備という意味では、ライバルと比べると少ないのは否めないと思います。ただその分ピュアなので、そこを楽しむほうがよいマシンです。ボタンが並ぶコンソールは好み次第ですね。
走り[10点]
絶対的な速さというと上を見ればキリがないですが、操る楽しさという意味ではベースグレードでもお釣りがくるくらい。スポーツカーを主軸にしているブランドのスポーツモデルってこういうことね! と、少し走っただけで感動すら覚えるレベルです。PDKのダイレクト感もたっぷりで、シャキッとしたスポーツカーらしさを全方位で存分に楽しめます!
九島辰也
ポジショニング[10点]
スポーツカーとしてピュアなミッドシップレイアウトを採用している718ケイマンは、911がラグジュアリーな方向性を強めていくなかで、ブランドのスポーティイメージを牽引する存在でもある。911の弟分という紹介のされ方をするが、それはあくまでポルシェのなかでの話で、世界中のブランドがこのクルマをターゲットにする実力の持ち主。
装備[8点]
装備そのものよりも、気になるのは設計年次の古さ。具体的には、スイッチが数多く並ぶセンターコンソールやインフォテインメントまわりだ。いずれも最新型ではタッチ操作を取り入れ、スイッチ類は整理整頓されすっきりしたインテリアを実現している。またポルシェはオーダー内容で細かな仕様が異なることが多いので、現車をよく確認すること。
走り[10点]
4気筒を搭載することを前提に、過去のレーシングカーから「718」というネーミングを採用したケイマン。当然、6気筒に慣れ親しんだファンから厳しいチェックがあることを前提に開発をしてきたことだろう。エキゾーストサウンドやパワー感は十分スポーティな仕上がり。コーナリング性能はさすがミッドシップで一体感がたまらない。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
世に「スポーツカー」を謳うクルマは数多くありますが、718ケイマンこそ誰もが認める本格スポーツカーでしょう。日常での使い勝手よりも運動性能を優先したミッドシップレイアウトはもちろん、低重心の水平対向エンジンや高剛性ボディなど、その設計は一流。そうした評価を受けて中古車市場での人気は非常に高く、相場は高値安定です。
装備[9点]
試乗車は「ベースグレード」で、ナビやACCといった装備はすでに十分備わっていました。これが「S」になると排気量が2.5Lになり、「GTS」ではPASMスポーツシャシーやスポーツエグゾーストといったアイテムが標準装備になります。「T」は、「ベースモデル」に走行系のオプション装備を追加し、ナビなどを簡略化したものとなります。
走り[10点]
718ケイマンの走りは、まさにスポーツカーのお手本そのもの。すべてががっしりと頑強で、なおかつ精度高く作られていることが街乗りでも伝わってきます。操作に対する正確性が高く、ドライバーの意図するとおりにクルマが動くのは快感。2L4気筒ターボはサウンドも勇ましく、ミッドシップのおかげでパワー無駄なく路面に伝えてくれます。