輸入車
更新日:2022.02.04 / 掲載日:2022.02.01
ジープ ラングラー アンリミテッド/気になる中古車【試乗判定】

文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年3月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2022年1月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌でも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
大ヒットした5ドアモデルが正常進化して、さらに身近に
ブランドを牽引する存在へと成長した

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、ジープの人気モデルであるラングラーアンリミテッドが登場です。お借りした車両は2020年モデルで、グレードは「スポーツ」、走行距離は2万1000kmとなっています。
九島●前回に続いて俺好みのクルマが続くなあ。色も黒で、これは試乗が楽しみだ。
竹岡●ラングラーって、ジムニーやランドクルーザーの仲間でSUVというより本格クロスカントリー車じゃない。なのにアンリミテッドのおかげで、いまやブランドをひっぱる人気モデルになっちゃった。
九島●現行モデルはマニア的にはJL型って言うんだけど、コンセプトは先代JK型が人気だったから正常進化。よくアンリミテッドはJK型から始まったって解説があるけどそれは正確ではなくて、TJ型(96年~06年)のモデル末期にホイールベースを延長した3ドアの「アンリミテッド」というグレードが追加されたんだよ。5ドアで独立したモデルとして登場したのは先代からだけど。
竹岡●へー、そうだったんだ。それにしても先代のラングラーアンリミテッドは大ヒットになったよね。
九島●そう、しかも世界中で大ブレイクした。もともとゲレンデとかディフェンダーみたいな本格的なクロスカントリー車は、不整地での走破性を高めるためにホイールベースや前後オーバーハングを短く設計するのね。特にホイールベースが長いと、車体の底が地面に当たって動けなくなるから。
竹岡●でも、使い勝手を考えたらやっぱりリアドアが欲しいよね。そうそう、今ジープで売れてるのはラングラーとレネゲードなんでしょ。
九島●そうなんだよ。かつてジープといったらチェロキーだったのに。
竹岡●チェロキーはヘッドライトが丸くないから。ほとんどのユーザーは未舗装路なんていかないし、デザインで選んでるんじゃないかな。もちろん、屋根やドアを外して雪のなかでグルグルまわって遊ぶオジサマもいらっしゃるけど(笑)。
九島●ある意味でコスプレだよね。
編集部●では改めてラングラーアンリミテッドの概要を説明させていただきます。現行型が登場したのは2018年11月で、2L直4ターボを搭載するベーシックな「スポーツ」と3.6LV6を搭載する上級モデルの「サハラ」という組み合わせでした。翌年「サハラ」にも2L直4搭載モデルを設定し、さらにオフロード性能を強化した「ルビコン」を追加しています。また、19年11月の改良では、自動ブレーキが標準装備になり、「スポーツ」のエンジンが3.6LV6に変更されています。
竹岡●「ルビコン」は、ファッションで選ぶ人と性能で選ぶ人とでユーザー層が極端に分かれるよね。
九島●そうだね。「ルビコン」は標準タイヤもブロックがサイドウォールまでカバーする本格的なタイプで見た目からオフロード感満載だし。ちなみに僕は3ドアの「ルビコン」しか興味ありません(笑)。
竹岡●雪のなかでクルクルまわるタイプの人だもんね(笑)。
編集部●ではそろそろ試乗のほうをよろしくお願いします。
竹岡「より一般的になったけどジープらしさは健在」
九島「ジープの世界を気軽に味わえるのが魅力」

DETAIL CHECK
人気を反映して中古車相場は高騰、だがそれでも手に入れる価値はある

編集部●試乗が終わりましたので、まず感想から伺います。
九島●インテリアが進化したよね。インフォテインメントや安全装備が一般的なクルマと同じレベルになった。デザインなんかは開発にFCAが関わるようになって、ジープらしさがより強調されて、上手に今風になっていると思うよ。
竹岡●一般的なクルマしか乗ったことない人でも普通に使えるレベルで使いやすくなった。前までは乗りにくいどころか、小柄な私だと運転ができないレベルだった。乗り心地や高速走行での運転しやすさを含めてだいぶ一般的に受け入れられるクルマになったし、それでいて悪路性能は落としてないもんね?
九島●そうだね。ラングラーは全モデルでジープが定める悪路走行の社内基準をクリアしてる。たとえホイールベースの長いラングラーアンリミテッドでもSUVとは別格。手動式の副変速機を備えるのは伊達じゃない。
竹岡●ラングラーアンリミテッドって中古車相場が高いんでしょ。
編集部●はい。先代モデルであっても300万円半ば以上で買取りされるほど人気です。なので現行型は500万円からといった状況です。装備が充実したことで新車価格も上がりましたが、それ以上に今は売り手市場といった状況です。
九島●新車が手に入りにくいのも影響しているかもね。
竹岡●しばらく人気は続きそうだし、高くても手放すときに価値が残るんだったらいいんじゃないかな。
九島●オンリーワンの魅力があるクルマはそれが強いよね。

本格オフローダーでありながら快適、安全装備も充実している

副変速機を備える本格クロスオーバーでありながら、先代モデルから街乗りでの快適性を高めてきたラングラー アンリミテッド。現行モデルではインフォテインメント機能も充実し、先進安全運転支援装備も備わるようになった。
ファミリーユースをも可能にする後席ドアと広い後席空間

アンリミテッド最大の特徴が後席への簡単なアクセスを可能とするリアドアと広い後席空間。2列目シートのヘッドレストはシートアレンジの際に簡単にたためるようになっている。またルーフは重いが取り外し可能だ。
リアシートを倒すことで約2000Lもの荷室空間が出現

ラゲッジスペースは横方向はあまり広くないものの、深さと高さがあるため使いこなせばなかなかの収納力を誇る。分割可倒式リアシートを畳めば、約2000Lものスペースが生まれる。またリアゲートは横開き式となっている。
新世代の直4ターボエンジンと定評ある3.6LV6の2本立て

パワートレインは2L直4ターボ(272馬力)と自然吸気の3.6LV6(284馬力)の2種類で、トランスミッションはともに8速AT。19年11月の改良から「スポーツ」も3.6LV6エンジンを搭載するようになった。

試乗判定レビュー
竹岡 圭
ポジショニング[10点]
ジープ中のジープというと、やっぱりラングラーですよね♪ 生きて帰って来られることが重要なタイプのマシンなので、ここまでの性能が必要なことは皆無という方が、特に日本ではほとんどだと思うのです。ですが、それでもそんな性能を有しているということが、このジープらしいスタイリングと共に大切なのだと思います。絶対的王者の1台。
装備[10点]
屋根も取れちゃう、ドアも取れちゃう、なんていうクルマはほとんどないですから、そういった意味では唯一無二の性能を有していると言っていいですよね。現にオフロードコースを楽しんでいる方もたくさんいらっしゃいます。でも普通に日常使いで過不足なく使える性能も十分備わっているのがいいところ。ファッションでも実用でもいけます。
走り[9点]
このエンジンを搭載したモデルは、運動性能的には満点だと思うのですが、個人的に私の体格だとだいぶポジションは取りやすくはなったものの、日常で使うには視界的にも操作的にもあと一歩というところでありまして……(涙)。でも、階段も登っていけちゃうレベルの強靭さは流石とうなずけるところですし、なんたって頼りがいを感じますよね!
九島辰也
ポジショニング[10点]
日本では昨年ランドクルーザーのフルモデルチェンジが大いに話題となったが、輸入車でいうとラングラーがそれに当たる。このアンリミテッドは、歴史あるラングラーの悪路走破性と市場が求める使い勝手を融合させたモデルで、当然ながら人気は極めて高い。ファッションアイコンでもあるし、どんな道であっても力強く走破する力がある。
装備[10点]
ラングラーの祖先であるウィリスは、軍用車として設計されたこともあってシンプルで頑強であることがメインで、快適装備なんてものは考えられていなかった。それが先代JK型あたりからずいぶんと快適装備が充実するようになり、現行JL型ではチェロキーかと思うくらい装備も充実。一方で屋根が簡単に外れたりする特別さは残っている。
走り[9点]
これまで歴代数多くのラングラーを乗りまわしてきた経験からすると、別物というほど現行モデルの走りは進化している。基本骨格であるプラットフォームの剛性が高いので、サスペンションはやわらかくセッティングでき、乗り心地がよくなったのだ。日常使いであれば2L直4ターボでも十分だが、オフロードを視野に入れるならV6がオススメ。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
輸入車を購入する大きな魅力がライフスタイルを変えてくれること。そういった視点で考えたらラングラーアンリミテッドは最高の相棒になりそう。空前のアウトドアブームという世相にもぴったりハマります。かつてのラングラーは本格的すぎて、ドライバー以外は乗っているのが大変でしたが、現行型になって乗り心地を含めかなり一般化しました。
装備[10点]
スペシャルな存在感と使いやすさのバランスが現行型ラングラーアンリミテッドの大きな魅力です。ダッシュボードには純正でディスプレイオーディオが備わり、簡単にスマホが接続可能。自動ブレーキだって装備されています。それでいながら頭上を見渡せばロールケージが張り巡らされていたりして特別感も満点。友達もきっと喜ぶはず。
走り[9点]
今回は運転席に加えて後席でも走りを体験することができたのですが、速度が高まると騒音が大きくなって会話しにくくなること以外はかなり快適で驚きました。路面から突き上げるような衝撃もないですし、左右に揺すられる動きもほとんどなし。これならファミリーカーとしても使えるのでは? 見切りがいいので街中でもストレスなく扱えました。
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