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更新日:2025.11.11 / 掲載日:2025.11.11

【アストンマーティン】835馬力の征服者・ヴァンキッシュに乗る【九島辰也】

文●九島辰也 写真●アストンマーティン

 ボンドカーで知られるアストンマーティンですが、日本での人気はまだまだ伸び代があるような気がします。自身初のSUVとなるDBXオーナーとクラシックモデルを所有する友人はいますが、それ以外のモデルの話はあまり耳にしません。特に、007シリーズの中でダニエル・クレイグ演じるボンドが終わって以降、なぜか最新モデルの話題は無くなってしまったような。映画と実車が連動しているのですかね。

 それでも思い起こせばかなり脚光を浴びていた時期がありました。初代ヴァンキッシュの登場あたりがそうだったと思います。なんたって「征服者」というネーミングですし、その存在感には圧倒されました。デザイナーはもちろんイアン・カラム。ジャガーやアストンマーティンでカッコいいモデルを輩出してきた立役者です。ジャガーで言えば、その前任のジェフ・ローソンも個人的には大好きなデザイナーでした。

 二世代目ヴァンキッシュも人気は高かったと思います。イアン・カラムの後を引き継いだマレック・ライヒマンの作品で、スタイリングはより洗練され都会的になりました。2007年に先代が姿を消した後の2012年にデビューし、2018年に生産を終了しましたが、今見ても古さは感じません。

アストンマーティン ヴァンキッシュ

 そして先日、2024年イタリアで発表され今年日本上陸した三代目に試乗しました。最新のヴァンキッシュです。

 ここで気づいた方はいらっしゃると思うのですが、このモデルは連続して登場していません。常に間に6年前後の間隔が空きます。その理由はもう一つのフラッグシップ “DBS”があるからです。DBシリーズのスペシャルモデルとして歴史ある名前が、ヴァンキッシュと交互に使われています。

 ただ、これはマーケティング的にはあまり効果がないような気がします。どちらも価値ある名前なのはわかりますが、買った側からすれば「どっちが上なの?」となるからです。アストンマーティンクラスの買い物ですから、ユーザーは最上級モデルにこだわるのは当然でしょう。今後その辺がどうなるのか注目です。

 前置きが長くなりましたが、新型ヴァンキッシュは凄かった。見た目はカッコいいし、走りが安定しています。触れて乗って満足。クルマ好きなら憧れてしまう要素がたっぷり備わっていました。

アストンマーティン ヴァンキッシュ

 まずはそのスタイリングですが、アストンマーティンのアイデンティティをキープしながら迫力を出しています。流れるようなフォルムと、大きなグリルが見る者を圧倒します。存在感はバツグン。あえて長めにしたボディも迫力満点です。エアインテークの付いたボンネットも、リアディフューザーもいい感じ。ストンと切り落とされたコーダトロンカ的リアエンドは好みです。個人的に所有するアルファロメオスパイダーヴェローチェを思い出しました。

 エンジンは5.2リッターV12ツインターボを搭載します。マックスパワーは835ps。最高速度は時速345キロに到達します。文句なしの一級品です。で、このユニットは自社製であることに注目。かつて彼らの12気筒はフォード製V6を繋ぎ合わせてつくっていました。ドイツのケルンにあるフォードのエンジン工場近くに彼らは工場を構え、それを製作していたのです。ですが、このユニットは完全オリジナル。英国内にエンジン工場を持ち込みました。V8エンジンについてはご存知のようにAMG製となります。

 自社製という意味ではインターフェイスもそうです。ディスプレイやOSをAMGから取り寄せるのではなく、新たなチームを社内と作り、サプライヤーと共に開発しています。

アストンマーティン ヴァンキッシュ

 ハイパフォーマンスな走りを司るプラットフォームとシャシーもそうです。堅牢なフレームの実現とGTカーの領域を超える足まわりを完成させました。きっとこの辺はF1チームからのフィードバックがあるのでしょう。事実走りはこれまでのアストンマーティンとは異なります。

 具体的には安定した走りがそうです。ガバッとアクセルを踏んだ時のリアの挙動は安定していますし、高速でのレーンチェンジの足捌きは驚くほど素直。路面に張り付いたようにピタピタと走ります。ステアリング操作に対し、激しいヨーイングが発生することはありません。 とにかく安定しています。ヴァンキッシュはホイールベースが比較的長いので特にそう感じるのかもしれません。

 といった内容のヴァンキッシュは年間1000台以下の限定生産なので、なかなか手に入るのは難しそう。ただ、それを含めその価値は高くなる気がします。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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