輸入車
更新日:2023.02.21 / 掲載日:2023.02.21

【マセラティ グレカーレ】妖艶な魅力を放つスポーティなSUV

文●九島辰也 写真●澤田和久、内藤敬仁

 マセラティがレヴァンテに続く第二弾となるSUVをリリースした。グレカーレ(Grecale)である。これは地中海に吹く北東の強い風のこと。彼ら得意の“風の名前シリーズ”となる。ミストラル、ギブリ、ボーラ、メラク、カムシン、そしてレヴァンテもそう。マセラティは古くから世界中のからゆるエリアに吹く風の名前をモデル名にしている。ただ風をモデル名にするのはマセラティの専売特許ではない。VWパサートも貿易風のドイツ語だったりする。どうしてヨーロッパ人は風を意識するのであろう。その意図はよくわからないが、イメージがいいのは確かだ。

人気を博したレヴァンテに続くSUV第2弾

グレカーレ GT

 名前はともかく、このクルマは同じステランティスグループのジョルジオ(GIORGIO)プラットフォームを採用する。つまり、すでにそれを利用しているアルファロメオ・ステルヴィオの兄弟車だ。AWDであってもRWDを基本形としたFRパッケージングは軽量・高剛性を目的につくられた。走りを楽しくするためと、クアドリフォリオのようなハイパフォーマンスエンジンを搭載しても対応できるためだ。と同時に、ホイールベースを伸ばしたり縮めたりすることを前提に設計し、あらゆるサイズに対応する。その意味では今回のグレカーレでの採用は想定内で、今後さらに広がっていくのは時間の問題となる。まぁ、BEV専用とは別の話ではあるが。

グレカーレ GT

 エンジンは2種類で、2リッター直4ターボ+マイルドハイブリッドの300ps/330psと3リッターV6ツインターボの530psが用意される。後者の最高速度は時速285キロ、0-100km/h加速はなんと3.8秒だから驚く。数字からでもマセラティらしい走りが期待できそうだ。それもそのはず、V6のベースはMC20のユニット。レーシーな走りを前提とする。

 そしてそのパワーユニットを載せるグレードは3つで、“GT”、“モデナ”、“トロフィオ”となる。“トロフィオ”はレヴァンテでも使われるハイパフォーマンスモデル用の名前だが、あちらはV8、こちらはV6という違いだ。

ライバルはポルシェのマカン

グレカーレ GT

 今回試乗したのはエントリーモデルのGTで、1000万円を切るプライスタグを付けた競争力のあるグレードとなる。800万円後半はライバルのポルシェマカンを意識した価格設定と言えそうだ。値段もパワーもマカンTとマカンSの間を埋めるようなポジションにある。

 ではその印象だが、グレカーレとのリアルな対面はこれが2度目でも、インパクトの強さは変わらない。MC20をイメージさせるヘッドライトを持つフロントマスクとトライデントのロゴのマッチングは絶妙だし、トリプルサイドエアベントはマセラティらしさを強くアピールする。ヨーロッパのレースシーンの歴史を深く知る者にとってワクワク感は止まらない。それにSUVであっても妖艶な面構成はお見事だ。

スポーティでありつつ上質さを感じさせる走りのフィーリング

 走りはというと、前回もそうであったが軽快な身のこなしが前面に出ていて、走らせて楽しいといった仕上がりを感じた。V6もしくはV8を積んだレヴァンテと違い、直4エンジンの鼻先の軽さが強調されている。きっと軽めのパワステの設定もそれを助長しているだろう。

 さらにいえば、およそ2ヶ月前に乗った時より走行距離が伸びていたことでクルマ全体の動きが滑らかに思えた。思い起こせば前回は“おろしたて”ということもあり、まだ機関的にしっくりこなかった部分があった。やはり新車の場合1000キロ以上走らせてからじわじわと実力が出てくる気がする。

 乗り心地は硬めだが悪くはない。19インチなので大径といえるが、扁平率55タイヤが振動を吸収する。それに高級車としてのしなやかさも同時に備える。この辺はサスペンションのセッティングの話だが、やはり長年の経験から生まれるうまさを感じる。最近は路面状態によって細かなピッチングを発生させるクルマが多いが、その辺は見事にこなしている。

 パワーに関してはモーターがうまい具合にエンジンをサポート。出だし、中間加速でのアシスト量とタイミングがいい。なので2リッターエンジンという感覚はしばらく走っていると薄らいでくる。マセラティにしては珍しいマイルドハイブリッドだが、グループ内の経験値からいい塩梅にセッティングされた。

グレカーレ GT

 というのが今回の試乗。マセラティは2030年までに全てのモデルを電動化するといっているから、まずはマイルドハイブリッドが手始めになるであろう。ここから経験を積んでさらにマセラティらしい電動化が進むのは時間の問題だ。“電動化”という文字に昭和世代はネガティブな印象を受けるが、こんな感じで進めてもらえれば我々にも楽しめる走りが出来上がるに違いない。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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