輸入車
更新日:2022.07.04 / 掲載日:2022.07.04
フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアント/気になる中古車【試乗判定】

文●竹岡 圭、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
※中古車参考価格はすべてグーネット2022年6月調べ。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年8月号の内容です)
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
カーライフのサポーターとしてTVやラジオなどでもおなじみの人気自動車ジャーナリスト。全日本ラリーにも参戦経験を持つ。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
噛むほどに味が出る偉大なる定番モデルのワゴンボディ
ハッチバックよりもちょっと上質な立ち位置

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、世界を代表するスタンダードカーであるVW ゴルフが登場です。お借りした車両は通称「ゴルフVII」と呼ばれる7代目のワゴンボディで、名称はゴルフ ヴァリアント。グレードは「TSIコンフォートライン」。走行距離は2万4000kmです。
竹岡●昔からゴルフに対するイメージは決まっていて、もうね「優等生」。付き合うだけなら、おもしろみのある個性が強い人がいいかもしれないけど、長くずっと一緒にいるなら、ゴルフみたいなクルマが安心感があって落ち着けるんだよね。
編集部●たしかに。乗ると不思議と気持ちが落ち着くクルマです。
竹岡●食べ物で例えると「白いご飯」。嫌いな人いないでしょ? あったかい白いご飯(笑)。
編集部●むしろごちそうです(笑)。そういえば、竹岡さんはかつてゴルフVのオーナーで、引っ越しをゴルフ1台でまかなってしまったとか。
竹岡●そうなのよ! 当時、ゴルフのレースに出るのに普段から練習になればってGTIを買ったんだけど、まさかあそこまで万能なクルマだと思わなかった。シートを倒したらタンスまで運べたからね!
編集部●今日の試乗車はヴァリアントですから、もっと積めますよ。
竹岡●間違いない。これは一緒に暮らしたら間違いなく便利だよ! それにしてもゴルフVIIって結構モデルライフが長かったよね。ゴルフV(2004年)からTSIエンジンやDSGが採用されて現代ゴルフの基礎を作って、それをゴルフⅥ(2009年)で熟成させた。もうこれ以上はないだろうなって思っていたら、今度はゴルフVII(2013年、ヴァリアントは2014年)がMQBプラットフォームで走りのレベルを一気に引き上げた。
編集部●あのときは業界を「ゴルフショック」が駆け巡りました。いろいろなメーカーのエンジニアから感想を聞かれたのが印象的でした。
竹岡●先に出たポロはまだちょっと荒削りだったんだけど、ゴルフでは見事によくなっていて驚いた。
編集部●そういう技術を磨き続けてどんどんよいものにしていくっていうのも欧州車の魅力ですよね。
竹岡●今日の試乗車はほぼモデルライフの末期に製造された個体でしょ。だから私も楽しみなんだ。
編集部●ゴルフVIIは2021年に新型「Ⅷ」に切り替わるまでに、2017年にマイナーチェンジを受けています。内容は、装備の充実がメインで、特に先進安全装備がレベルアップし、歩行者にも対応。渋滞時の停止と再発進にも対応するようになり、利便性が上がりました。
竹岡●外観はLEDヘッドライトになったこと、内装はメーターが液晶になったことが大きな変更点と。
編集部●はい。ヴァリアントでいいますと2017年5月以降を後期モデルと考えてください。
竹岡●後期型のグレード構成は、ベーシックな「TSIコンフォートライン」と豪華な「TSIハイライン」、スポーティな「TSI Rライン」。そしてディーゼルは「TDI」と。
編集部●はい。それではそろそろ、試乗に参りましょう。
「美味しい白ご飯みたいに、いつまでたっても飽きることがないクルマ」

DETAIL CHECK
付き合いが長くなるほど、どんどん好きになるタイプ

編集部●試乗から戻ってきましたので、走りの感想を伺います。
竹岡●文句のつけようがありません。運転しやすいし落ち着く(笑)。前に乗っていたゴルフVも、しっかり作り込まれているから、時間がたつほどに発見があって、気がついたら愛着が深くなっていたけど、きっとこのクルマもそうだと思う。
編集部●乗った瞬間から、クルマを信頼できるなって感じました。
竹岡●初期のものは発進時にDSGのギクシャクがあったんだけど、それもほとんど気にならない。フットワークもいいし、熟成されてた。
編集部●ADAS系も必要にして十分で、これから何年も愛用できそう。
竹岡●そうだね。ゴルフVIIは内燃機関自動車の集大成みたいな完成度。やっぱりゴルフはすごい! それで、中古車相場はどうなってるの?
編集部●人気モデルですし、販売期間が長かったので物件数はかなり豊富にあります。とにかく安くというのでしたら、総額100万円から探せます。今回試乗していただいた後期型に限っても、総額200万円以内で程度のいい中古車が買えますよ。
竹岡●それってすごいことだよね。これだけ完成度の高いクルマがそんな価格で手に入るんだから。だとしたら、このクルマを買ったら、ちょっとカスタムしてもおもしろいんじゃないかな。このままだと見た目がちょっとだけ地味じゃない? ホイールを変えたり、ルーフキャリアを付けたりして、自分らしくカスタムしたらもっと好きになると思う。タイヤもオフロード用にしてみたりね。
編集部●そういうカスタムは今風ですし、楽しそうですね!

シンプルで飽きのこない室内、後期型は先進安全装備も充実

オーソドックスでありながら素材や組み付けによって上質感を演出するコックピット。デジタルメーターやインターネット接続型のインフォテインメントシステムも搭載。後期型は先進安全装備もさらに充実した。
シートがよく長距離でも疲れにくい快適なインテリア

見晴らしがよく、居心地のいい室内空間。シートは背もたれの調整がダイヤル式なのが若干煩雑。だが形状が適切でクッションに厚みがあるため長距離ドライブでも快適に過ごせる。ヴァリアントは後席膝前にも余裕がある。
後席を倒さずともたくさん積める見事なラゲッジルーム

ゴルフ ヴァリアントのハイライトであるラゲッジルーム。標準の状態で605Lと抜群の広さを誇る。さらにリアシートを倒せば最大で1620Lまで拡大可能。ちなみに国産ワゴンのレヴォーグが561Lだから、その広さがわかるだろう。
質実剛健でクセのない扱いやすいパワートレイン

試乗車のTSIコンフォートラインで1.2Lターボで最高出力は105馬力と実用性重視。それでもDSGを駆使すれば走りもしっかり楽しめる。さらなる余裕を求めるなら1.4LターボエンジンのTSIハイラインかRラインがオススメ。
試乗判定レビュー

竹岡 圭
ポジショニング[10点]
VWゴルフといえば、世界のミドルサイズハッチバックの定番。そして欧州といえば、ヴァリアント=ワゴンモデルが上級車種の定番。結果、上級の基本中の基本モデルなんです。その名に恥じない完成度の高さ。華美さはないんだけれど、乗れば乗るほどよさがにじみ出てくる、飽きのこない逸品。大切な人に堂々と自信を持ってオススメできます。
装備[10点]
華やかではないけれど、安っぽくはない。シンプルで質の高いものが整然と並んでいる心地よい空間です。この時代までのVWは、どのモデルに乗り換えてもパッと操れることを踏襲したデザインが採用されているので、すぐ使いこなせる気軽さがあります。マイナーチェンジ後は、最新安全サポート技術もバッチリなのでロングドライブもラクです。
走り[10点]
あえて謳わないレベルの細かい改良を最後まで加え続ける、つまり進化し続けるのも特徴。最終モデルに近いものはかなり熟成が進んでいます。特にゴルフVIIはプラットフォームからガラリと変わったため、正直後期型のほうが洗練度高し。素直でわかりやすいカッチリしたハンドリングと、長距離疲れ知らずの裏切らない乗り心地は文句ナシですね。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
説明の必要がないくらい有名かつ評価が高いゴルフ。そのワゴンボディということで、微妙な外し加減もシャレています。コンパクトサイズだから街乗りしやすく、後席を倒すことなく605Lもの荷物を搭載しますから、最近人気のアウトドア趣味にも最適でしょう。特に高速道路を多用する使い方をするのであれば、人気のSUVより快適です。
装備[10点]
造形はシンプルに、それを丁寧に作り込むことで、時間を超える価値を作り出そうとしたのがゴルフVII。その考え方が正しかったのが、長いロングライフや売れ行きに現れています。マイナーチェンジで追加されたトラフィックアシストによって渋滞時の停止と再発進にも対応。レーンキープアシストの搭載により、操舵支援も行われる。
走り[10点]
ハッチバックよりも車重が重い分、1.2Lターボでは穏やかな印象が大きいものの、それがクルマのキャラクターと合っているので気になりません。むしろ、高速道路での静粛性の高さなどは好印象。また、前走車に追従するクルーズコントロールは、ステアリングアシストの精度も高く、軽く手を添えていればかなりの範囲をサポートしてくれました。
[VOLKSWAGEN R VARIANT]ゴルフファミリーきっての武闘派モデル

310馬力(前期は280馬力)を発生させる2L直4ターボエンジンに4WDを組み合わせたスポーツワゴン。強力なパワートレインを制御すべく、シャシーも鍛え上げられ、その走りは小さな怪物というべきハイレベルなもの。



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