車の歴史
更新日:2020.01.29 / 掲載日:2020.01.29
SUNNY 1200GX-5 (B110) 【3】

排気量拡大と共に5ベアリング化されたA12
直結の5速ミッションというレーシングな装備が備わる
B110サニーの最もホットなモデルとなるのがGX-5だ。「5」がなにを意味するのかといえば5速のマニュアルミッション。当時の大衆車はまだ3速や4速があたり前だった時代に5速ミッションを投入したのは、そのTSレースでの戦闘力を高めるためだったのは間違いないだろう。というのもB110サニーに採用された5速ミッションは非常にマニアックなもので、通常4速の減速比が1となり、5速はオーバードライブとなるのだが、B110のミッションは5速が直結の5速クロスミッションを標準装備していたのだ。
そんなトランスミッションを純正採用するGX-5だから、S54スカイラインやZ423Rといったレースのために用意された専用モデルと同じ括りとなりそうだが、そうでもないようだ。今回オリジナルの状態に近いGX-5を取材させてもらい、その装備を見てみると、GX-5以外のグレードと比べて豪華な装備が奢られているのである。たとえば外装ならリヤのコンビネーションランプの間にはガーニッシュが追加されていたり、リヤウインドーには熱線が入るなど、見た目の豪華さや、日常の使い勝手の向上を図る装備がGX-5専用として配備されたのだ。GX-5はミッションこそレースを意識したものであったが、それ以外はB110の最も豪華なグレードに仕立てられていた。
ちなみにGX-5は、翌年にフルモデルチェンジを控えた1972年にデビュー。モデル末期に登場したため、販売台数も少なかったようで現存数はかなり少ない。
GX系はSU型キャブの2連装着が標準となる。組み合わさるエアクリーナーボックスも並列に2つ並ぶキャブに合わせて横長の楕円タイプとなり、エンジン上部ではなく、エンジンの左側側面に配置されている。
少々ごちゃごちゃして見づらい位置にあるが、写真中央に写っているのが、機械式の燃料ポンプだ。デスビの位置との関連があるのだが、B110サニーのA12は燃料ポンプがこの位置となるそうだ。
デスビはエンジン前端の右側に位置する。ちなみにB110以降に登場したA14などはエンジン右側の中央部に配置されている。鈴木さんのGX-5のデスビには内部が見えるクリアタイプのキャップが装着されていた。
ラジエーターはノーマルでは真鍮製だが、鈴木さんのGX-5は社外品のアルミ製に交換されている。カップリングファンが効率よくエアを引き込めるように、ファンを囲むように成形された自作のシュラウドが付く。
発電機はダイナモではなく、現代のクルマの部品を流用したオルタネーターに変更。このオルタネーター、単に部品を付けただけでなく、鈴木さんの手でしっかりオーバーホールした上で装着しているそうだ。
ミッションはGX-5用の直結5速となる56A型ではなく、他車種用を流用した5速がオーバードライブとなるものに変更されている。載せ替えにあたり、ミッションメンバーを鈴木さんが自作しているそうだ。
燃料タンクはトランクのフロア下にレイアウトされる。左右のリーフスプリングの間、ほぼ全部がタンクとなるのでかなり横長な形状だ。タンクの左側面とリーフスプリングの間の隙間にマフラーが通る。
マフラーのサイレンサーは、車体後方が燃料タンクで占められているため、ホーシングよりも前方に設置されている。そのサイレンサーは錆穴の補修が幾度も施された年季の入った状態となっている。
リヤのホーシングはH145サイズのデフが収まるコンパクトなもの。A12のノーマルであれば十分な容量であるが、チューニングにより150PS以上のパワーを誇ったTSレース車両では、上級車種のものに変更して
軽自動車用のクーラー部品でB110サニー用を自作できてしまう、オーナー鈴木さんのガレージ拝見!

A12型エンジンに取り付けられた軽自動車用のエアコンコンプレッサーを付けるべく厚板の鉄板を切り出し自作したとうブラケット。クランクプーリーとのベルトラインや剛性の確保など、コンプレッサーのブラケットを自作するのはかなり難易度が高い。そんな作業も鈴木さんはすべて自宅ガレージでこなしてしまうそうだ。そのガレージを拝見すると、リフトやミニフライスとしても使用可能なボール盤などのうらやましい装備が配されている。工具や部品を入れる棚なども鈴木さんのお手製。メカいじりやモノ作りが好きな人には夢のような空間となっている。
ミニフライスにもなるボール盤。
金属製の棚はもちろん木製の引き出しなども鈴木さんのお手製だ。
中古部品を入手し自らオーバーホールしたオルタネーターのストック。
スペアのA型エンジン。