車の歴史
更新日:2025.07.19 / 掲載日:2025.07.19
コンパクトSUVの草分け、トヨタ RAV4ヒストリー【名車の生い立ち#15】

2025年5月、新型トヨタ RAV4がワールドプレミアされました。初代の登場から31年という歴史を持つSUVですが、その生い立ちを振り返ってみると紆余曲折がありました。それでも新しい時代へ向けた提案を見せてくれそうな新型RAV4には期待が寄せられ、2025年で最もホットなモデルといっても過言ではありません。今回は、トヨタRAV4が歩んできた31年の歴史を振り返ってみましょう。
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カジュアルなSUVの魅力を世に広めた立役者、初代RAV4

昨今のSUVは、もはやブームという言葉で片付けられる存在ではなくなりました。かつてはセダンがファミリカーの基本形だったように、現在はSUVがそのポジションに置かれて久しく、一過性のブームを超えて世界のスタンダードとなっているからです。しかしその歴史といえば、それほど長くありません。1980年代、日本ではオフロード性能を重視したクロスカントリーがプチブームになっていましたが、現在のような乗用車がベースのものは1990年代に入ってから普及しており、その歴史はわずか30年あまり。その黎明期、1994年5月に登場したのがトヨタ RAV4でした。

1994年といえば村山内閣の発足や円高が加速した年。またエンタメの世界では、新型ゲーム機「プレイステーション(ソニー)」、「セガサターン(セガ)」が発売された年でもあります。そんななか、トヨタは新型コンパクト4WDとして、「RAV4 L」と「RAV4 J」をリリース。当時はSUVという言葉はまだ一般的ではなく、RVと呼ばれていました。広告にはタレントの木村拓哉氏が起用され、年齢性別問わず多くの人にアピール。「L」と「J」の2タイプが設定されるのは販売店の違いによるもので、前者はトヨタカローラ店、後者はトヨタオート店からの販売となりました。どちらも最大の特徴はボディサイズにあり、全長3695mm、全幅1695mm、全高1655mmというコンパクトなボディは当時のRVとしては異例。同時代のトヨタのコンパクトカー、スターレットの全長が3740mm(ソレイユ)でしたが、それよりも短いクルマだったのです。それゆえライバルも不在で、強いていえばクロスオーバー風トールワゴンの三菱 RVRが存在していた程度でした。

エンジンは、2.0L 直4の「3S-FE」を搭載。ハイメカツインカムを謳い、当時としては高性能な135馬力/18.5kgmというスペックは十分以上。足まわりは4輪独立式サスペンションを採用し、16インチのマッド&スノータイヤを装着するなど、可愛らしい見た目とは裏腹にSUVらしい装備も充実していました。特にMT車のセンターデフには機械式デフロック機構を備え、オフロードでの高いトラクション性能を確保。悪路走破性を備えていたことも特筆すべき点。当初は4名乗車の3ドア仕様のみでしたが、翌年には5名乗車の5ドア仕様である「RAV4 J V」と「RAV4 L V」も登場しました。こちらは全長4105mmに拡大され、広い室内と快適性を確保。ファミリー層にもしっかりと訴求するクルマとして、着実に販売台数を伸ばしていったのです。
21世紀に向けて全てをリニューアルした2代目

トヨタ RAV4の発売を皮切りに、90年代後半から多くのメーカーがSUV市場に参入してきました。その代表となるのが1995年発売のホンダ CR-V。RAV4と同じくコンパクトSUVですが、こちらは5ドアのみでボディサイズはひと回り大きい。さらに1997年にはスバルからフォレスターが登場。低車高のスポーティな走りでSUVの新しい価値観を提案しました。21世紀が目前に迫り、ライバルが続々と生まれるなかでトヨタも次なる一手を打たなければなりません。そこで2000年5月に登場したのが、2代目RAV4。開発コンセプトは「21世紀をリードする都会派高性能SUV」で、プラットフォームも完全にリニューアルされました。

全長は、3ドアが3750mm、5ドアが4145mmと先代と比べて大型化。ホイールベースは80mm延長され、大人がしっかり座れる室内空間を実現しました。なかでもシートがサイズアップしたことに加え、フロントシートには240mmのスライド機構と45mmのリフター機構を採用したことで、乗員の体格に合わせた調整が可能に。これは、海外市場を強く意識したからこその改良点といえます。一方外観は、端正な見た目の先代から一転し、曲線と直線を融合させたモダンなフォルムや大径タイヤ、ショートオーバーハングによって力強く若々しいイメージとなったことも見逃せません。パワートレインは、新開発直噴2.0L「1AZ-FSE」と1.8L「1ZZ-FE」を搭載。パワーと燃費を両立し、2.0Lモデル(MT車)は10・15モード燃費で15.0km/Lを実現しました。
海外市場を意識してさらに大型化された3代目

2000年代の半ばになると、多くのメーカーがグローバル化に乗り出します。特に北米市場のシェアが大きく、日本市場にぴったりとフォーカスを合わせたモデルは徐々に減っていきました。トヨタとて例外ではなく、RAV4はグローバル市場に向けたミドルクラスSUVというポジションに変わっていったのです。2005年11月にフルモデルチェンジを受けて3代目になったRAV4は、3ドアを廃止しボディサイズをひとまわり大型化。販売店別の「L」や「J」といった表記をやめて車名は全て「RAV4」に統一されました。見た目こそ先代モデルに似ていましたが、プラットフォームは全て一新。全長(5ドア)は180mm拡大されて4335mm、ホイールベースは70mm延長されて2560mmに。また、海外市場向けにロングボディも設定され、こちらは全長4600mmに達しました。

ボディサイズが大きくなったとはいえ、出発点がコンパクトSUVゆえライバルと比べて極端に大きくなったわけではありません。むしろやや窮屈だった先代までのネガが消え、快適性がグッと増したのです。リアシートはスーパチルトダウン機構を備えた6:4分割可倒式となり、ラゲッジのフロアがフラットになったことと相まって実用性もアップ。ファミリーカーとしてのニーズにもしっかりと応えました。パワートレインは、排気量が拡大されて2.4Lの「2AZ-FE」を搭載。ボディサイズの拡大に合わせ、走りもパワフルになりました。さらに「S-VSC+アクティブトルクコントロール4WD」は路面を選ばない安定した走りを実現し、クルマとしての完成度はまさにグローバル水準といっていいものとなりました。
日本市場から撤退へ。海外専用モデルとなった4代目

グローバル化が進んだ3代目RAV4は、元々は都会向けの小さな4WDというコンセプトからかけ離れてしまい、ライバルとの差別化が難しくなったこともまた事実でした。これに加えて、2010年代半ば頃から日本ではコンパクトSUVブームが到来。マツダ CX-3や日産 ジューク、トヨタ C-HRのようなもっと手頃なサイズのSUVが脚光を浴びたのです。コンパクトSUVといえばかつてRAV4の主戦場でしたが、グローバル化によりボディは大型化。よりによってRAV4はその波に乗ることができなかったのです。
一方その裏では次期型RAV4の開発が進んでおり、2012年11月のロサンゼルスショーでワールドプレミアされました。全長4570mmボディに当時のトヨタのデザインアイコンだった「キーンルック」を取り入れたエクステリアは、スポーティで躍動感のあるもの。しかし、日本での販売の主軸は安価なコンパクトSUVに移ったこと、上級SUVは売れ筋の新型ハリアーの登場が控えていたこともあり、なんと4代目RAV4の国内導入は見送られてしまったのです。なお、最大のライバルだったホンダ CR-Vも2016年のマイナーチェンジのタイミングで日本市場から一時撤退。よりコンパクトなヴェゼルがその受け皿となりました。
カッコイイデザインで再出発!国内人気が戻った5代目

2019年4月、新型トヨタ RAV4が日本で発表されました。日本での販売が見送られた4代目の登場以降も3代目は併売されましたが、ここに来て待望の新型が日本でお披露目されたのです。5代目RAV4の最大のトピックといえば、そのタフなデザイン。これまでは都会的なイメージが強かったのに対し、新型はSUVらしい力強さやアクティブさを感じさせるものに。特に「アドベンチャー」と呼ばれるグレードは、専用フロントグリルやフロントスキッドプレート、19インチアルミホイールなどを採用。当時のSUVはヨーロピアンで都会的、お洒落……と形容されるものが中心のなか、あえて真逆のアプローチをしたのが功を奏し、新生RAV4は日本のファンに好意的に受け止められました。

5代目RAV4のスゴさは、見た目だけではありません。プラットフォームにはTNGAをベースとし、エンジンは2.0Lと2.5Lハイブリッドを設定。駆動方式は2WDと4WDを設定し、洗練されたドライブフィールも高く評価されました。安全面では、「トヨタセーフティセンス」を全車標準装備。これには、歩行者検知&自転車検知を可能とする衝突回避軽減ブレーキ、レーダクルーズコントロールなどの先進技術が数多く搭載され、安全性も盤石に。クルマとしての性能を大きく高めたこともトピックといえるでしょう。なお、ホンダ CR-Vも復活し、スバル フォレスターや日産 エクストレイルなどのライバルたちも好調な販売となり、群雄割拠のSUV戦国時代はさらに加速していきました。
車載OS「Arene」の導入で新領域に踏み出した6代目

2025年5月、トヨタは新しいRAV4をワールドプレミア。6代目となる新型は、「Life is an Adventure」を開発コンセプトに掲げ、アクティブな生活を予感させる内容が盛り込まれました。まず注目なのが、パワートレイン。今回は全て電動化モデルとなり、PHEV(プラグインハイブリッド)とHEV(ハイブリッド)の2機種を設定。特に前者はバッテリーの大容量化により電気のみで150kmもの距離を走行可能。また、塊感のあるエクステリアも見どころで、SUVらしいルックスを保ちつつ上質で高級感のあるスタイルとなりました。

また、「Arene」と呼ばれる車載OSを導入したことも大きな目玉。これは、ソフトウェアづくりのプラットフォームとなるもので、これを核に新世代マルチメディアや先進安全装備「トヨタセーフティセンス」が展開されるとのこと。ソフトウェアのアップデートを行うことで、クルマが日々進化するという試みは、今後のスタンダードになるのは間違いありません。初代発売時もコンパクトSUVという新しいジャンルに挑戦したトヨタですが、アプローチは違うもののそのスピリッツは最新のRAV4にも健在なようです。発売は2025年内の予定とのこと。この上なく進化した次世代RAV4の走り、期待が大きく膨らみますね。