中古車購入チェックポイント
更新日:2020.07.13 / 掲載日:2020.07.13
スバル レヴォーグ【ONE MAKE MARKET RESEARCH】

文●工藤貴宏
(掲載されている内容はグー本誌 2020年7月掲載の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2020年6月調べ。
かつて大ヒットした「レガシィツーリングワゴン」の後継車といえるステーションワゴン。日本ジャストサイズとするため、レガシィに比べるとひとまわり小さな車体とした実用パッケージングも特徴だ。
全長×全幅×全高:4690×1780×1490mm ●ホイールベース:2650mm ●トレッド前/後:1530/1540mm ●車両重量:1560kg ●排気量:1998cc ●エンジン:水平対向4DOHCターボ ●最高出力:300ps/5600rpm ●最大トルク:40.8kgm/2000-4800rpm ●サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン ●ブレーキ前後:Vディスク ●タイヤ前後:225/45R18 ●中古車参考価格帯:110万円~310万円(14年~20年 ※STIスポーツを除く)
走りも楽しめる実用的パッケージ
ツーリングワゴンのよいところは、なんといってもスポーティな運転感覚を含めた運転の楽しさと高い実用性を両立していることだ。
荷室は同じクラスであればセダンはもちろん、SUVよりも広くて積載性が高いのが一般的である。さらに、SUVではごく一部のモデルを除いて不可能な、ミニバン非対応(全高1550mm制限)の機械式立体駐車場に入庫できるのもメリット。優れたパッケージングが自慢だ。たくさんの荷物を積んでキャンプなどレジャーに出かけたり、ファミリーが家族分のスーツケースを積んで空港へ向かうのにも適している。
しかし昨今は、日本車のステーションワゴンは数を減らしている。そんななかで「日本向け設計」として、日本での扱いやすさを前提に作られたのがレヴォーグだ。車体サイズはホンダ「シャトル」やトヨタ「カローラツーリング」よりは大きく、マツダ「マツダ6ワゴン」やスバル「レガシィアウトバック」よりは小さな設計。荷室容量をしっかり確保しつつ、狭い道や駐車場などでも扱いやすいのだからバランスがいい。
ダイナミックな走行性能は、スポーツセダンとして名高いスバル「WRX S4」譲りだ。エンジンは全車4気筒ターボで排気量1.6Lと2Lの2タイプがあるが、後者は300馬力というハイパワーを誇り、高出力スポーツカーのような加速が自慢。運転好きに支持される理由がそこにある。
一方、実用面を見ると、たとえば荷室は、2014年まで販売していたレガシィツーリングワゴンの最終モデル(車体サイズはレヴォーグよりひとまわり大きい)よりも広く確保しているのだから心強い。
そのうえ、先進の安全性も自慢だ。
[エクステリア]躍動感のあるソリッドなスタイル

デザインのテーマは「スポーツツアラーとしての走りの性能と高い機能性」。「STIスポーツ」のフロントバンパーや2017年7月以前の「GT-S」に組み合わせるグリルなど、一部仕様は専用のアイテムを組み合わせる。後期モデルの「GT-S」は前期モデルに比べると専用デザインが少なくなった。
[モデルヒストリー]毎年の着実な進化で年々完成度を高める
スバルの真摯なクルマづくりを感じさせる特徴が、必ず毎年改良を施してクルマをしっかりと熟成させていくこと。レヴォーグも毎年4月頃(マイナーチェンジ時のみ7月)に改良が施され、年々進化。新しいモデルになるほどクルマとしての完成度が高まっている。
2014年4月:レヴォーグを発表

日本市場向けに企画した「レガシィよりもひとまわり小さなワゴン」としてデビュー。エンジンは全車ターボ付きで排気量1.6Lと2Lの2タイプ。トランスミッションはCVTだけの設定だ。主要グレードに先進安全支援システム「アイサイトver.3」も採用。
2015年4月:一部改良
死角となる斜め後方の車両を検知してドライバーに伝える仕掛けなどを設定。静粛性を高め、一部仕様はサスペンションも改良。
2016年4月:一部改良
リアシートにプリテンショナー機構を搭載し、側面衝突対応の補強材を追加するなど、事故時の安全性を向上。静粛性も高めた。
2016年7月:STIスポーツを設定

走行性能を高める専用サスペンションに加えて、内外装をグレードアップした最上級グレードとして「STIスポーツ」が設定された。
2017年7月:マイナーチェンジ

「STIスポーツ」以外はフロントデザインを刷新。インテリアは仕立てを変更し上質感を高め、後席分割は6対4から4対2対4に変更。アイサイトの機能や操縦性、乗り心地も進化。
2018年4月:一部改良
歩行者や自転車に早く反応する制御へ変更するなどアイサイトの衝突被害軽減ブレーキ性能を向上。アクセル踏み間違い対策も搭載。
2019年5月:一部改良
ハイビームアシストの作動開始車速を従来よりも10km/h低い30km/hへ変更。「STIスポーツ」の特別仕様車も設定している。
次世代モデルは今年後半にデビュー

2019年秋の東京モーターショーでスタイルが公開された次期レヴォーグ。新型プラットフォームに新開発の1.8Lターボを搭載し、次世代アイサイトを採用することも発表されている。高速道路での手放し運転も実現予定。
[インテリア]スポーティな運転環境と快適な室内

ハンドルは下部をフラットにした、いわゆる「フラットボトム」と呼ばれる形状。スポーティな雰囲気を盛り上げる。そこには追従型クルーズコントロールや走行制御切り替えのスイッチが備わる。
インパネは走行状況などを表示するディスプレイを中央最上部へ内蔵するのが特徴。パーキングブレーキは電動式で、後期型には信号待ちなどでブレーキから足を離しても停止状態を保持するホールド機能が追加されている。室内は後席にも広いスペースが用意されているので、ファミリーユーザーも安心だ。上級仕様には標準もしくはオプションで本革シートを設定。

フロントシートは2タイプ。「GT-S」や「STI Sport」には左右の張り出しを大きくして身体保持性能を高めたスポーツシート(写真)を備える。後席リクライニングも採用。

荷室容量は522Lで、4代目レガシィツーリングワゴン(2014年まで新車販売)より63Lも広い。46インチシャフトを入れた9インチゴルフバッグなら4個、大型スーツケースも4個積める。
[メカニズム]スバル独自のこだわりを凝縮
エンジンは一般的なエンジン(ピストンが上下方向に動く)と異なりピストンが水平方向に動く水平対向式。現在の市販車ではスバルとポルシェだけが採用する独自哲学に基づいた設計だ。さらに駆動方式は全車AWDとするなど、こだわりが貫かれている。しっかりと路面をとらえ、どんな状況でも安定した走りを実現することが、安全につながるというポリシーに従った選択だ。
AWD

1.6L車と2L車ではシステムが異なり、前者は前輪を中心に駆動。後者は前輪よりも後輪へのトルク配分を多めにして、舗装路でのハンドリングを向上させる。
ENGINE

水平対向エンジンは、爆発に伴うピストンの動きが向かい合ったボクサーが手を動かしているように見えるので「ボクサーエンジン」とも呼ばれる。
EYESIGHT

2つのカメラで前方を監視する先進安全支援システム。衝突が避けられないと判断すると自らブレーキを作動して減速する緊急自動ブレーキのほか、高速道路で前方のクルマに合わせて速度を自動調整する機能も採用。
2017年7月の改良以降ツーリングアシストを設定
後期モデルに搭載する「アイサイトツーリングアシスト」。ポイントは、車線の中央を維持するようにハンドルをアシストする仕掛けを、渋滞時まで含めてすべての車速で作動させてドライバーの負担を軽減すること。クルーズコントロールにより車両の自動停止も行う。
[レヴォーグ STI SPORT]スポーティに加え上質な室内の最高峰グレード

2016年に加わった「STIスポーツ」は、シリーズのなかで最高価格帯となるグレード。ひときわスポーティなデザインのバンパーなどを採用するほか、専用サスペンションで走行性能を向上。さらに室内はボルドーのレザーシートをコーディネートするなど、単にスポーティというだけではなく上質な仕立てのプレミアムなグレードという位置付けだ。
中古車参考価格帯:190万円~360万円(16年~19年 ※STIスポーツ)

[市場データ]ターゲットは安くて物件豊富な「1.6GT-Sアイサイト」

モデル末期ということもあり、全体の相場はここ1~2年で下降傾向にある。およそ100万円台半ばの予算があれば、広く探せる状態。特に「1.6GT-S アイサイト」がねらい目だ。3万km以下の状態のよい物件も豊富に存在する。
年式
最も多い年式はデビュー翌年の2015年式で、全体の28%を占める。逆に2018年式以降の新しい物件の割合は少なめとなっている。グレード
エンジン別に見ると中古車のおよそ8割が1.6Lターボ車。なかでも装備が充実した上級グレード「1.6GT-S」の割合が半数を占める。走行距離
実用性の高いステーションワゴンゆえ、走行距離が伸びている個体も少なくない。それでも3万km未満は4割以上も流通している。
自動車ジャーナリスト工藤貴宏の「スバル レヴォーグ GOODとBAD」
【GOOD】素晴らしいのはオールマイティ性
後席でも快適な室内、積載性の高い荷室、先進安全装備、運転しやすい車両サイズ、そして時にはスポーティさを楽しめる走行感覚。どれをとってもレベルが高く、高い次元でバランスよくまとめられた商品力がレヴォーグの魅力だ。国産車では少数派のワゴンというのも意味がある。個人的には、峠道などを走ったときの運転の楽しさを最大の長所としたい。
【BAD】運転好きにとってはCVTが気になる
広いラゲッジルームをはじめとする実用性、そして走り、さらには安全性の水準も高いレヴォーグだけに、大きなウイークポイントはほぼ見当たらない。強いて言えば、運転好きにとって気になるのがトランスミッションのフィーリング。従来のCVTに比べるとダイレクト感が増しているが、とはいえATに比べると加速フィーリングに違和感が拭えない。
編集部イチオシ!

1.6GT-S アイサイト
上質感の高い室内の仕立てなど、装備の充実度を考えると標準タイプよりも「GT-S」のほうが魅力的。エンジンは、一般的なユーザーにとってはベーシックな1.6Lでも十分にパワフルだ。